奈良まちはじまり朝ごはん いぬじゅん

●奈良まちはじまり朝ごはん いぬじゅん

 主人公詩織は就職した会社が初出勤日に倒産するというひどい目にあい、「ならまち」を彷徨う。そこで出会った雄也の店主の朝ごはん専門店で働くことに。店の常連などと仲良くなりながら、彼らの抱える問題に詩織がお節介を焼くが…。シリーズ第1作。以下の5編からなる短編集。

 

「はじまりは、西洋卵焼き」

 詩織は初出勤日に就職した会社が倒産しており、路頭に迷う。ならまちをさまよっていた詩織は街はずれで雄也に声をかけられ、朝ごはんを食べることに。これがきっかけとなり、雄也の店〜朝ごはん専門店〜で働くことに。

 

「思い出おにぎり」

 店の常連である中学2年生の夏芽。親が離婚しており、父との思い出は一緒に父が作ったおにぎりを食べたこと。詩織は彼女との会話から、夏芽が親から暴力を受けているのではと推測するが、それは全くの勘違いだった。雄也は夏芽の両親を店に誘い、おにぎりを提供する。そして夏芽の記憶に関する事実が明らかになる。

 

「茶粥が見ていた永い恋」

 詩織は街で雨の中に佇む友季子と出会い店に誘う。彼女が男の人を待ち続けていることを知った詩織は、相手の男性に会いに行き、男性を非難する。店に戻った詩織はそこに友季子がいることに気づく。そして雄也から友季子に関する驚くべきことを聞かされることに。

 

「魚と野菜と結婚が苦手です」

 詩織は店の常連林竜太から彼女についての相談を受ける。林は結婚を考えていないが、彼女がどう考えているか聞き出して欲しいとのことだった。店に林の彼女千鶴がやってくる。詩織は彼女と話をするが、その日以降、千鶴は行方不明になってしまう。慌てる林は千鶴を探し始め、詩織も手伝う。千鶴が見つからず店に帰った二人に雄也がある料理を出す。

 

「さよなら、ならまちはずれの朝ごはん屋」

 店の移転話を常連であり店の土地の所有者である和豆から詩織。自分に何も相談してくれない雄也に怒る詩織は雄也に想いをぶつける。そんな時和豆の寺で火の玉騒動が持ち上がる。雄也は詩織に本音をぶつける。

 

 いろいろと読んできたシリーズ物が最新作にたどり着いてしまったため、Amazonのオススメの一冊を読んでみた。

 しかしこれが…。ツッコミどころ満載というか、違和感が半端ないというか。

 最近読んできたシリーズが、食べ物屋(弁当屋だったり、料理店だったり)が多かったため、Amazonのオススメにこの一冊が上がったのだろうが、パターンがこれまで読んだもののデジャブ。仕事で困った主人公の若い女性が、店の主人と出会うというパターンは、まさに「弁当屋さんのおもてなし」と全く同じ。同時期に発行されているのでパクリではないだろうが、あまりに似すぎていてツマラナイ。

 さらに主人公詩織の言葉遣いに違和感。出会ったばかりで、一緒に働くことになった雄也に対するタメ口はどうして何だろう?若い女性だから当たり前?しかし2話目では、常連客とはいえ、中学生に敬語を使うアンバランス。「弁当屋さんの〜」でも最初違和感があったが、あちらの主人公は誰に対しても敬語だったのに対し、本作の主人公が相手によって敬語とタメ口を使い分ける姿は違和感しかない。

 とどめは、3話目。2話目が少しミステリー染みていて面白かったのに対し、3話目もミステリ染みていたのではどう解決を見せてくれるのだろうと思って読み進めていたら、まさかの幽霊オチ。しかも雄也は相手が幽霊でも驚きもしない。別に幽霊話を全否定するわけではないし、幽霊モノでも傑作の映画はあるし。と思っていたら、最終5話で火の玉騒動が起きた寺に駆けつけた雄也の言葉が、「幽霊なんているわけないだろ」。何だこれは(笑 

 これまでAmazonオススメのシリーズは読んできたつもりだが、この作品についてはここで打ち止め、だな。