スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 友井羊

●スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫 友井羊

 女子高生の沢村菓奈は吃音があり人と話すのを苦手としていた。クラスの人気者であり、スイーツ作りが上手い天野真雪に憧れていたが、話すことはできなかった。ある日、真雪が作ったチョコレートが紛失する事件が起こり、菓奈は真雪と話すことができるようになる。そしてクラスで起こった謎が次々と菓奈に持ち込まれることになる。

 7+1作からなる短編集。

 

 「スープ屋しずく」シリーズが面白く、友井羊の別の作品を読んでみることに。

 主人公は吃音がある女子高生。憧れの彼と仲良くなるために、彼が得意なスイーツ作りをし始めるが、そのスイーツに関係した事件が次々と起こり、彼女がその謎を解くことになる。

 謎そのものは、各章で登場するスイーツに関係するもののため、男である自分にはちょっと縁遠い話で、ミステリとしての面白さは「スープ屋」に比べると低いと言わざるを得ない。

 しかし主人公が「吃音」であるため、そちらがこの小説の面白さを増加させている。いじめにもつながる「吃音」であり、本人はそれをとても気にしているのだが、「スープ屋」シリーズでも弱者に対する優しい目を持っていた著者が、本作でも主人公に対しては優しく見守っている感じがして大変好感が持てる。主人公も真雪や友人たちと仲良くなっていく中で、自分の吃音に対するコンプレックスを徐々に克服していく様が読んでいて気持ち良い。

 解説でも触れられているが「青春ミステリ」とされる本作ではあるが、「スープ屋」でその実力を見せた著者は、最終章にとんでもない大掛かりなトリックを用意している。「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 心をつなぐスープカレー」での大トリックを彷彿とさせる見事なものだった。

 本作は続編?もあるようだが、また異なる主人公が主役のようなのでちょっとお預けか。やはり「スープ屋」シリーズの続編が待ち遠しい。