源氏物語 桐壺~賢木 大塚ひかり

源氏物語 桐壺~賢木 大塚ひかり

 大塚ひかりの「カラダで感じる源氏物語」を読んで、彼女の訳本ならば、と本作を読んでみた。桐壺から賢木までの10帖分。

 読んでみてわかったのは、当時の習慣、風習などをまず理解しておかないと状況がさっぱりわからないということ。例えば結婚。男が女の家に通い毎日手紙を出して3日それが続いて結婚が初めて成立する、だとか。他にも驚きの習慣が多かったが、妻と死別すると、二人の子供が家にいてもその家との繋がりが基本的には無くなるというもの。現在では考えられない話。源氏が様々な女性と性愛を繰り広げることを事前に「カラダで〜」で知っていたが、それすらも当時は当たり前であることが一番の驚きであることに変わりはないが(笑

 途中に「ひかりナビ」として訳文の中で不明な点を丁寧に解説しているのは、初心者である私には非常にわかりやすかった。というのも、当時の知識人が知っていて当たり前のことを前提に源氏物語は書かれているため。現在の落語も、江戸時代のことがわかっていないと笑えない場面があるのと同じことなのだろうが、それにしても知識量がスゴい。もちろん訳者である大塚ひかりの知識量にも圧倒されたが。日本の古典だけではなく、中国の古典にも精通しており、様々な解説がされているのが本当にスゴい。

 ただ難点は10帖分のこの本を読むのに1ヶ月かかってしまったこと。年末年始が挟まっていたとは言え、普段1冊の本を1週間弱で読む私にとっては、少し苦痛でもあった。この人の訳本ならば54帖分読めそうな気もするが、この本を読んでいる間は他の本が読めなくなるのが問題かも。