准教授・高槻彰良の推察 怪異は狭間に宿る 澤村御影

●准教授・高槻彰良の推察 怪異は狭間に宿る 澤村御影

 青和大学文学部の深町尚哉は少年の頃不思議な体験をし、それが基で他人の嘘を聞き分ける能力を持ってしまう。大学で民俗学Ⅱを受講した彼は、准教授高槻彰良からレポートの件で呼び出され、高槻の調査に同行するようになり、一緒に事件を解決して行くことに。シリーズ第2作。

 以下の3編からなる短編集。

 

学校には何かがいる

 前作最終話「神隠しの家」の現地調査で知り合った小学生、大河原智樹くんから調査依頼が来る。彼が通う学校で『五年二組のロッカー』という新しい怪談が生まれたということだった。高槻と尚哉は小学校へ行き、五年二組の担任平原まりかから話を聞く。平原が担任のクラスの女子児童3人が放課後彼女立会いのもとでコックリさんを行ったが、最後にある少女の名前をコックリさんが示し、それと同時に教室後ろのロッカーの扉が開いたことで、3人が驚き騒ぎになったということだった。少女の名前はなつみといい、夏前に病気が原因で転校してしまった少女だった。

 後日、高槻は小学校を訪れ、3人の少女とコックリさんを始める。

 


スタジオの幽霊

 尚哉が体調を崩す。心配した高槻が尚哉の家まで来て看病をし病院へ連れて行く。中耳炎と診断され鼓膜に穴を開ける治療を受ける。回復した尚哉は学校の学園祭に顔を出しに行く。高槻が人気女優藤谷更紗とトークショーを行なっていた。しかし尚哉は自分の耳が人の嘘を見抜けなくなっていることに気づき愕然とする。

 高槻の研究室に行った尚哉は藤谷が高槻に相談しに来ているのを目撃、藤谷は主演映画の撮影現場で幽霊騒ぎが起きていると話す。尚哉は耳の状態を高槻に話すことができないまま、撮影現場に調査に向かう。その場でも幽霊騒ぎが起き高槻が調べるが原因はよくわからなかった。スタジオを出た際、高槻と藤谷はカメラマンに写真を撮られてしまう。

 後日、大学を出たところで尚哉はカメラマン飯沼に待ち伏せされる。彼は先日撮った写真でゴシップ記事を出そうとしたが上から止められたと話し、高槻のプライベートにまつわることを調べ上げた結果、ネタになりそうだから協力してくれないかと尚哉に相談を持ちかける。尚哉は断るが、別れ際に飯沼が喋ったことが嘘として聞くことができた。安心した尚哉はそのことを報告しに高槻に研究室に行くと、そこには藤谷が来ていた。高槻は撮影現場での真相を彼女に語り出す。


奇跡の子供

 川上由紀也というサラリーマンから高槻に相談が入る。彼の両親が奇跡の少女と言われる女の子に入れあげていて心配なので、新興宗教などではないか調べて欲しいというものだった。奇跡の少女と言われるのは、刈谷愛菜という小学生で、遠足で乗ったバスが転落事故を起こしたが、愛菜一人だけが奇跡的に助かったということだった。

 高槻と尚哉は愛菜が住んでいた家で聞き込みをするが、事故に遭い助かった少女を周りが騒いで持ち上げているだけのように思えた。奥多摩に引っ越したという少女の家に佐々倉と一緒に二人は向かう。そこで愛菜の母親と話した高槻だったが、普段の様子と異なり彼は真剣そのものの表情をしていた。事故現場やその周辺も調べた高槻は、再度愛菜に会いに行くことに。

 

 前作が意外に面白かったので早速続編を読む。前作同様、本作で取り上げられる怪異現象はよく耳にするものばかり。「学校の怪談」「撮影現場での幽霊騒ぎ」「奇跡の少女」。そしてこれも前作同様、怪異現象など存在せず、どれも人間がその原因となっているというオチ。

 話の展開はシリーズ2作目にして完全にパターン化されて来ているが、飽きは来ない。その理由はおそらく2つ。一つは高槻の講義内容や怪異現象について話す内容が面白いこと。非科学的と思える現象にどうして人々は魅せられてしまうのか。前作でも語られていたが、現象と解釈についての話は、どれも納得いくものばかり。そしてもう一つは、やはり主人公を中心とするキャラクターだろう。前作で主人公尚哉の過去の特殊な経験が明かされたが、本作では高槻の過去や家族関係についても明かされる。そして同じような経験を持つ高槻の尚哉に対する想いも。脇を締める佐々倉のキャラも面白いが、本作では各話に登場するゲストキャラもしっかりと立っている。「学校には何かがいる」の担任、「スタジオの幽霊」の人気女優、「奇跡の子供」の少女の母親。あぁ3話とも女性なんだなぁ。今気がついた。

 話も面白く、主人公たち最大の謎もある。まだまだシリーズは続くようなので、楽しみに読むとしよう。