遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠 桑原水菜

●遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠 桑原水菜

(ネット紹介記事より抜粋)

 永倉萌絵が転職した亀石発掘派遣事務所には、ひとりの天才がいた。西原無量、21歳。笑う鬼の顔に似た熱傷痕のある右手“鬼の手”を持ち、次々と国宝級の遺物を掘り当てる、若き発掘師だ。大学の発掘チームに請われ、萌絵を伴い奈良の上秦古墳へ赴いた無量は、緑色琥珀“蓬莱の海翡翠”を発見。これを機に幼なじみの文化庁職員・相良忍とも再会する。ところが時を同じくして、現場責任者だった三村教授が何者かに殺害され…。

 

 個人的な都合でシリーズ第9作「縄文のニケ」から読み始めたので、改めて第1作を読んでみた。

 あぁ萌絵は転職してカメケンで働き始めたのね。で凄腕発掘師の無量と出会う。一昔前のトレンディドラマにあるような男女のファーストコンタクト(笑 

 無量は呼ばれた発掘現場に行くのだが、なぜか素人萌絵もマネージャとして同行することに。萌絵の質問に答える形で、「発掘」という普通の人には縁もゆかりもない世界が説明されるのは見事。著者のことは全く知らなかったが、この辺りは上手い。その現場で、無量は幼馴染でありある因縁もある忍と再会。これで主役の3人が揃うわけだ。

 無量はその能力で早速お宝を発見。しかしそのお宝を巡って大学教授が殺されてしまい事件はスタート。教授から呼び出されていた無量と萌絵が大学に行き、殺人現場を発見するのだが、その際萌絵が忍と思われる人物を目撃。無量と萌絵は忍が殺人犯ではないかと疑い始めるのだが…

 龍禅寺文書、蓬莱の海翡翠、鬼の手、龍の子供たち、天皇家の出自、沖縄海底遺跡、など真偽織り混ざった話題が次々と出てきてワクワクさせてくれる。「アマテラスの暗号」でも書いたが、この手の歴史を題材にしたフィクションミステリーは鯨統一郎さんの影響もあり、非常に面白く感じる。

 一方で、物語の展開にはちょっと不満も。中盤以降、殺人事件と並行して謎の組織の暗躍が描かれ主人公の2人、無量と萌絵がピンチに陥るのだが、その結末はあまりに漫画的でガッカリ。まぁ話をデカくし過ぎた感は否めないので、この後これらの主人公たちのシリーズ化を狙うなら、この結末は仕方のないところではあるのだが。

 9作「縄文のニケ」にしても本作にしても、無量がお宝を発掘することで、謎の組織に狙われてしまう展開は同じなのもなんだかなぁという感じ。それでも歴史フィクションとしては面白い。2作目も読んでみたいと思わせるが、展開が同じだとちょっとツラいかも。