鬼平犯科帳 第1シリーズ #17 女掏摸お富

第1シリーズ #17 女掏摸お富

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 寺の門前で主人風の男に女がぶつかりその瞬間に掏摸を働く。女のアゴには特徴的なホクロがあった。

 役宅に彦十が訪ねてくる。彦十は知り合いの大店の旦那が昨日掏摸にあい、その旦那の知り合いも同じ手口で掏摸にあった、掏摸は女掏摸でアゴにホクロがあるむしもころさないような良い女だったと話す。鬼平はその話を聞き流し、彦十に巣鴨村へ行かないかと誘う。巣鴨村には鬼平の母の実家があり、今は三沢仙右衛門が家を守っていた。

 二人は巣鴨村へ行き、三沢にのっぺい汁をご馳走になる。昔話に花が咲き、鬼平は三沢とともに王子権現を参ることに。そこで三沢はすれ違った女が笠屋の女将お富だがホクロはないはずだと話す。鬼平は笠屋を訪ねお富の顔を見るがやはりホクロはなかった。彦十に店のことを聞き込みさせるが特に怪しむところはなかった。

 その頃笠屋ではお富が夫卯吉に権現に子供を授かるようお参りに行ってくると話す。卯吉は最近お富が頻繁に出かけることを不審に思い、小僧太一に後をつけさせる。お富は小僧がつけているのに気づき、普通にお参りをし小僧を安心させる。しかし小僧が店に戻ったのを確認して、ホクロをつけ掏摸を働く。それを見ていた鬼平と彦十、彦十はお富をどうするのかと尋ねるが、鬼平はお富の裏に大物が繋がっているのかもしれないともう少し様子を見ることに。

 その夜、卯吉はお富を疑ったことを謝る。お富は気にしないと答えるが、一人になりもう掏摸はしないと誓い、昔のことを思い出す。

 

 回想シーン

 お富は掏摸の元締め、霞の定五郎の娘だった。定五郎は30人の配下を持つ元締めで表向きには丸定という質屋をやっていた。お富は100人に一人の指を持つと言われていたが、定五郎はお富は堅気になるように育てていた。一味には狐火の虎七という子分がおり定五郎のやり方に不満を持っていた。ある時お富は自分も掏摸になりたいと父親に訴え、定五郎の右腕だった七五三蔵もそれに賛同し、お富は七五三蔵につけボクロをすることを教えてもらい、掏摸の仕事を覚えていった。

 その後定五郎が倒れ亡くなってしまう。間も無くお富は虎七に呼び出され、後目は自分が継ぐと言われる。お富は娘である自分が跡継ぎだと話すが、虎七はお富は定五郎の本当の娘ではなく、捨て子だったと話す。お富は父の昔からの友人である市兵衛を訪ね荒物屋をしていた市兵衛の近所の笠屋みのやで働いていた卯吉と知り合う。お富は市兵衛から自分が捨て子であったことを知らされ、市兵衛の店を手伝うことに。そのうちお富は卯吉と良い仲になり、卯吉から簪を贈られたお富は卯吉と夫婦となる。

 その頃定五郎の後を虎七が継ぐ。しかし七五三蔵は虎七のやり方に不満があり一味から抜ける。一人となった七五三蔵は武士相手に掏摸をしようとし失敗、右腕を斬り落とされてしまう。その七五三蔵がお富の前に現れる。仕事ができなくなった自分に餞別として100両を用立てて欲しいと頼まれ、断れば昔のことを夫にバラすと脅される。

 回想シーン終わり

 

 役宅では鬼平が同心たちと最近江戸の町が平和であると話していた。久栄は皆に貰い物の兎饅頭を出す。

 お富は夫卯吉と小僧が出かけたのを見送り、100両を持って七五三蔵に会いに行き100両を渡し別れる。それを見張っていた彦十が七五三蔵に声をかけ沢田が捕まえる。七五三蔵から一味が質屋丸定にいることを聞いた鬼平たちは店に行き一味を捕まえる。

 その頃お富は平和に暮らしていた。鬼平はそんなお富を見張っていた。お富は幸せな暮らしを取り戻したはずだったが、落ち着かなくなり、また掏摸をしてしまう。しかしすぐに悔やみ、擦った金を捨てる。それを見ていた鬼平はお富に声を掛ける。お富は素直にお縄を受けようとするが、鬼平はお富の右腕の指を斬る。そして指は斬り落としてはいないが二度と悪事はできないと話し、頭の簪に悲しい思いをさせるなと言い残し去って行く。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 女掏摸お富が主人公の話。掏摸が主役となる話には「第5シリーズ 市松小僧始末」という強烈なラストを持つ話もあるが、こちらは穏やかなラストであり、鬼平の真骨頂とも言える結末となっている。

 平和に暮らしているように見える店の女将が掏摸をするのを鬼平が目撃、すぐには捕まえず様子を見る。その間に女掏摸お富の長い回想シーンが挟まれ、お富が昔の仲間に脅され仕方なく掏摸で金を作っていることが明らかになる。そして鬼平たちによる掏摸一味の捕縛、掏摸をもうしなくても済むようになったはずのお富がまた掏摸をしてしまい…という展開。

 先にあげた「市松小僧始末」でも本作でも、池波正太郎氏は掏摸という犯罪は一度その面白さに取り憑かれたら辞めることができない、と考えていたようだ。実際江戸の処罰として、三度目の掏摸で死罪だったらしいし。三度の掏摸で人殺しと同じ死罪とは重いようにも感じるが、それだけ常習性が強い犯罪だということだろう。

 

 ゲストキャラの坂口良子さん、石坂金田一シリーズや池中玄太80キロなどでよく見ていた女優さん。懐かしい。

 

 蛇足。2話前からコメディリリーフとしての役割を発揮している忠吾、本作ではとうとう久栄にも饅頭のことでからかわれるほどに。こうして少しずつシリーズの形が出来上がっていったんだなぁと感じる。

 

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