●あきない世傳 金と銀 源流篇 高田郁
津門村で学者の父を持つ幸は、兄や父を亡くし大阪の呉服商に奉公に出ることに。商いは詐りと教えられていた幸だったが、だんだんと商売に興味を持ち始める。
以下の12章からなる。
1章 幸 1731年
津門村私塾凌雲堂主宰者重辰(53)、妻房(34)、長男雅由(17)、長女幸(7)、次女結(4)
房は幸が学ぶことを嫌い、重辰は商人を嫌っていた
2章 試練の一年 1732年
津門村を稲虫が襲い飢饉になる
雅由病死
3章 別離 1733年
幸、学問を辞め機織りを習いに
重辰病死
8月 幸 文次郎に連れられ、大阪天満呉服商へ奉公に
4章 五鈴屋
幸 五鈴屋へ 四代目徳兵衛の祖母富久、番頭治兵衛による半襟試験
女衆 お竹、お梅 長男徳兵衛、次男惣次、三男智蔵
5章 丁稚と女衆
幸 女衆と丁稚との違いを知る
智蔵 幸に商売往来の書名を教える
6章 商売往来
智蔵が治兵衛に幸に商売往来を学ばせるよう頼むが断られる
しかし治兵衛は幸が話を聞ける環境を作ってくれる
幸 治兵衛に饂飩を食べに連れて行ってもらい、商いの心得を教えてもらう
7章 火種 1734年
徳兵衛の女遊びがひどくなり、富久が徳兵衛の縁組を考える
幸は富久に付き添いで出かけた際、富久の弱音を聞く
8章 初めての銀貨 1735年
徳兵衛(22)が結婚、相手は船場の小間物商紅屋多聞の末娘菊栄(17)
嫁入り道具が多かったが持参金が5両
8月に婚礼 翌日菊栄からご祝儀の銀貨
9章 ご寮さん
幸 菊栄と会話するようになり、気に入られる
菊栄 花帰りをきっかけにご飯のおかずに魚を出すことを提案
幸 富久から彦太夫の文で母と妹が元気だと知らされる
10章 軋轢
惣次、3年後の暖簾分けを聞かされ、徳兵衛と大ゲンカ
菊栄、智蔵に本を書くことを勧める
幸、智蔵に饂飩を食べに連れて行ってもらう、智蔵の本音を聞く
11章 決別 1736年
富久 思い出 18年前息子夫婦死去、その時長男5歳、次男4歳、三男乳飲み子
富久の結婚15歳の時
幸 治兵衛の他行の供 両替商、手形のことを教えてもらう
智蔵 草子を書いていたことが惣次にバレ、家を出る 幸へ別れの言葉
12章 事の顛末 1737年
徳兵衛 廓遊び再開
菊栄 実家紅屋へ帰ることを決意、徳兵衛との離縁 敷銀35両返却
富久 徳兵衛に新たな嫁を探す 治兵衛それを聞き幸のことを考える
「みをつくし料理帖」シリーズの著者の新シリーズ。「みをつくし」シリーズを半年前に読み終え、新しいシリーズに手を出すことに。
「みをつくし」が1冊目から波乱万丈な主人公澪の人生を描いていたのに対し、本作は主人公幸の幼少7歳の時から13歳までを時系列で描いている。「みをつくし」では途中で澪と野江の幼少期の思い出やご寮さんとの出会いなどを回想として描いており、少しずつ澪の謎?が解かれていく感じだったが、本作では時系列で話が進んでいく。
かと言って展開が平凡なわけではなく、第1章こそ幸の平和で幸せような生活が描かれるが、第2章からいきなり不幸の連続。相変わらず著者は主人公をひどい目に合わせることに抵抗はないようだ(笑
さらに「みをつくし」が1冊4章構成だったのに対し、本作は12章構成。「みをつくし」が1話30分か45分のドラマとするなら、本作は朝の連ドラのごとく1話15分ドラマのようで展開が早くサクサク進むイメージ。そのためか第1作である本作で小説内の時間は6年が経過している。シリーズのメインは幸が商人として奮闘していく様を描くことなのだろうから、幼少期については本作で軽く紹介する感じなのだろう。
それでも本作後半、奉公先である「五鈴屋」の経営が思わしくないこと、四代目徳兵衛が廓狂いであること、徳兵衛の結婚と離縁、などが描かれ、最後には徳兵衛の後妻に幸がなりそうな予感をさせるところまで話は進む。
登場人物は「みをつくし」と同様、主人公の周りに良い人が多く安心できるが、それでも主人公や優しくしてくれた人々が早くもいなくなっていく展開にもなっている。
主人公幸が徳兵衛の後妻となるのか、商人として成功できるのか、早くも見どころ満載の状態であり、2作目が気になってしまう。またしばらく楽しめる作品に出会えたようだ。