ペーパー・ムーン

●722 ペーパー・ムーン 1973

 墓地で葬儀が行われている。参列者の中には幼い少女もいる。そこへ車で駆けつけて来た男がいた。彼は亡くなった女性の知り合いであったため参列したのだが、母親が死んだことで叔母の家へ行かなくてはいけなくなった少女を叔母の住むミズーリまで送って欲しいと参列者に頼まれる。男モーゼは断ろうとするが、彼がこれから行こうとする場所に近いこともあり断れなくなってしまい、少女アディをミズーリまで連れて行くことを引き受ける。

 しかしモーゼはとある家を訪ね、その男性の弟が事故を起こし、アディの母親が死亡したと嘘をつき、200ドルを男性からせしめる。その後、モーゼは駅へアディを連れて行き、ミズーリ行きの列車にアディを乗せようとする。列車到着まで時間があったため、モーゼはアディを食事に連れて行く。そこでアディから私の200ドルを返してと言われてしまう。自分の父親ならば良いけど、そうでないなら200ドルを返して、でなければ警察に訴えるとまで。

 200ドルを使いすでに車を買い替えていたため、仕方なくモーゼはミズーリ行きの切符を払い戻し、アディを連れて旅を続ける。彼は聖書販売詐欺を生業をしていた。アディを連れて詐欺を行い、200ドルを作ろうとする。ある家でいつも通り聖書を売りつけようとしたが、その家には保安官がおりモーゼは怪しまれてしまう。その時アディが機転を利かせモーゼは危機を逃れる。その後もアディはモーゼの詐欺を助け、二人は少しずつ金を稼げるようになる。

 ある街で二人は祭りに出かける。アディはモーゼと一緒に写真を撮ろうとするが、モーゼは自分のことに夢中で彼女を無視してしまう。さらにモーゼはショーに出ていた踊り子トリクシーとそのメイドであるイモジンを旅に同行させることに。トリクシーを助手席に乗せ旅を続けるモーゼにアディは怒りを爆発させ、ある時もう一緒には行かないと言い出す。困ったモーゼがトリクシーにそれを伝えると、彼女はアディに本音を語り出す。トリクシーは男好きだが、すぐに飽きてしまうと話すとアディは一緒に旅をすることに。

 4人で宿泊したホテルでアディは一計を案じる。ホテルのフロントマンがトリクシーに見とれていたのを見ていたアディは、イモジンと共謀してトリクシーがホテルのフロントマンと浮気するように仕向け、見事に成功させ、モーゼで二人だけで旅を続けることに成功する。

 二人はある街のホテルで時間を潰していた。その時アディがホテルを頻繁に出入りしながら手帳を見ている男がいることに気づく。それをモーゼに告げると、モーゼは男が闇屋で密売酒を売っていると思い、それで儲けようと考える。そしてアディに闇屋をつけさせ密売酒のかくし場所を突き止めさせる。モーゼはその密売酒を持ち出し、闇屋に売りつけることに成功し675ドルを手に入れる。

 直後急いでホテルから逃げる二人だったが、闇屋の弟の保安官が追いかけてきて捕まってしまう。事務所で取り調べを受ける二人だったが、証拠となる675ドルをアディが帽子に隠したことで、保安官の追求を逃れる。それでも保安官はしつこく取り調べを続けようとするが、アディが保安官の目を盗んで車の鍵を手に入れ、事務所から逃げ出すことに成功する。

 二人は車で逃亡するが、保安官たちに追われる。途中農場でトラックを見つけた二人は車を変えるためにそのトラックとの交換をし逃亡、川を越えて隣のミズーリ州へ入ることに成功する。ホテルに泊まった二人、モーゼは新たな詐欺を働くためにアディを打ち合わせをして全財産を持って騙す相手に会うことに。しかしホテルを出たところを保安官たちが待ち伏せしており、捕まってボコボコにされた上、全財産を奪われてしまう。待ち合わせ場所に現れなかったモーゼをアディは見つける。

 モーゼはほぼ文無しをなり、ミズーリにいることから、アディを叔母の家に送り届けることに。最後に本当の父親ではないのかとアディに尋ねられたモーゼはそれを否定し、アディを見送ることもなく冷たく去って行く。アディは叔母に温かく迎え入れられる。

 一人でトラックを運転していたモーゼ、休憩のために車を止めたときに、アディが残していった封筒を見つける。中には、祭りでアディが一人で撮影してもらった写真が入っており、アディからモーゼへのメッセージが書かれていた。そこへアディが荷物を抱えて走ってくる。それに気づいたモーゼは関わり合いになることを拒否しようとするが、アディはまだ200ドルの貸しがあると主張、その時トラックが勝手に動き出したため、モーゼはアディの荷物を持ってトラックを追いかける。二人はトラックに追いつき乗り込む。トラックの前には長く続く道が待っていた。

 

 子供の頃に来て以来、見た記憶がなく、今回何十年ぶりかで鑑賞。ずいぶん楽しい映画だったという記憶があったが、その通りの映画だった。

 

 母親に死なれ天涯孤独となった少女を、父親かもしれない詐欺師が、少女の叔母の住む場所まで連れて行くロードムービー。少女がいつの間にか詐欺師の手伝いをするようになり、大金も手に入れるがそれがバレて一文無しに。さぁ詐欺師である男は少女をどうするのか、というストーリー。

 

 それまで無口だった少女が、列車を待つために入ったレストランで突如喋りまくるのが可笑しい。それも妙な理屈で詐欺師である主人公を言い負かしてしまうのだから。さらにピンチに陥った詐欺師を助けたり、相手によって詐欺の道具である聖書の値段を上げたり下げたり。

 さらには、詐欺師が気に入って旅を共にしようとする若い女性を見事に追い出してしまうくだりは見事。このまま二人の詐欺生活が続くと思いきや、最後に密造酒がらみで下手を打ってしまい、一文無しに。そしてラスト。

 

 とにかくラストが良い。一文無しとなり居場所が少女の叔母のいる土地だった、というここまでの展開も上手い。となれば、詐欺師が少女を叔母の家に連れて行くのは必然であり、しかも叔母が少女を受け入れないだろうという予想も見事に外れ、叔母は少女を温かく迎え入れてくれる。一方、詐欺師も別れ際に悲しいそぶりも見せず、逆に父親ではないという念押しの会話を挟んで、冷たく少女の叔母の家から去って行ってしまう。

 このまま映画が終わるのかと思ったところで、詐欺師が少女が残した写真に気づく。そこで詐欺師が車を止めている間に少女が走って追いかけてくる。これでハッピーエンドかと思うがそうはいかず、詐欺師は少女を受け付けようとはしない。とここで最後の伏線回収。保安官から逃亡するために手に入れたボロトラック。これが二人が言い合いをしている最中に動き出してしまう。この動きのために、交換した車がボロトラックだったのだろう。主人公が詐欺師だけに、見事に観客を騙すようなエンディング。

 

 70年代なのにわざとモノクロで撮影されたのも良いし、何よりテーマ曲が映画の雰囲気にピッタリとあっている。OPの字幕のフォントもなんだかカッコ良かったし。

 

 テータムオニールはこの作品で最年少のオスカー。この映画の次の作品の「がんばれ!ベアーズ」も良かったなぁ。何気に子供の頃、良い映画を観ていたんだなぁ。