封印作品の憂鬱 安藤健二

封印作品の憂鬱 安藤健二

 安藤健二氏による封印作品シリーズ3作目。

 扱っている作品は「日テレ版ドラえもん」「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」「みずの版涼宮ハルヒの憂鬱」の3作品。第1作が5作品、第2作が4作品を扱っていたのに対し、本作は3作品で、しかも「ハルヒ」はページ数が少ないため、実質2作品を重点的に扱っていることになる。

 その分この2作品についてはボリュームが過去最大級で読み応えも十分。ネットレビューでも書かれているが、「日テレ版ドラえもん」に至っては、あの田中角栄の名前まで出てくるのには正直驚いた。

 ただ読み終えて見るとちょっと違和感も感じることに。3作品に共通している、この3作目の特徴は、いずれも「封印された理由」についてある程度これが本当の理由だろうというところまで迫っている点は見事だが、関連する=封印とは直接関係ないであろう事柄に割いたページも多いということ。

 上記した「日テレ版ドラえもん」と田中角栄については、封印については正直全く関係がないと言って良い。ただ「日テレ版ドラえもん」の封印理由を探って行く中で、当時田中角栄氏がTV放送に関する利権を握っていたという事実が判明した、ということ。

 同じように「ウルトラ〜」についても、封印されたであろう理由は結構はっきりしているが、この映画の関係者であるタイ人に関してページ数が割かれており、封印されたこととは関係ないであろうその彼の人となり、ビジネスとしてのウルトラマンとの関わりについて類推しており、ちょっとピントがボケている感じを受けてしまった。

 

 前2作で取り上げられた作品が馴染みのある作品だったのに対し、本作の3作品については正直全く馴染みもない。そこがこの作品に対しての違和感と関係しているのかもしれないけれど。

 3冊を読んで感じたのは、70年代あたりは著作権というものが随分と曖昧な扱いを受けていたということだったが、この作品のラストの「ハルヒ」に至って、製作する側の意識は現在でも低いんだということが意外だった。