鍋奉行犯科帳 道頓堀の大ダコ 田中啓文

鍋奉行犯科帳 道頓堀の大ダコ 田中啓文

 大邊久右衛門(おおなべくうえもん)大坂西町奉行大邊久右衛門(おおなべくうえもん)の大食漢に振り回されながら、村越勇太郎をはじめとする同心たちが事件を解決していく。4編からなる短編集。

 

 

風邪うどん

 勇太郎がなぜか命を狙われる事件が続く。江戸から勇太郎の父の友人笹岡鉄之進がやってきて勇太郎に蕎麦の食い方を指南する。それが勇太郎の命を救うことになる。

 

地獄で豆腐

 豆腐屋の為吉が妻に家から追い出され、奉行所で働くことに。その頃小粒の銀だけを盗む事件が多発していた。久右衛門は豆腐を使った料理ドジョウ地獄を作らせる。

 

蛸芝居

 道頓堀に大ダコが現れるという噂が持ち上がる。業突屋の老婆トキに気に入られた久右衛門。勇太郎は大ダコの噂の真相を確かめるために蛸嫌いの綾音と夜見回りをする。

 

長崎の敵を大坂で討つ

 オランダ商人たちが江戸へ行く途中大坂に立ち寄るが、なぜか長逗留をする。江戸からの催促でその理由を聞くと献上品である虎を逃してしまい、さらに筆者頭の息子も行方不明になっていたためだった。勇太郎は虎が水辺にいる習性を聞き道頓堀周辺を探すことに。

 

 前作に続くシリーズ第2作。前作と同じ短編4編なのだが、前作が1話70ページほどだったのに対し、本作は1話約100ページと長くなっている。そのためか、久右衛門の料理話だけではなく、事件周りの説明が丁寧になっていて、話が分かりやすくなった。さらに良い意味で話がパターン化し、展開も読めやすく、さらに気楽に読めるように。

 ただやはりなぁ。ネットでの評判は非常に高いし、解説の我孫子武丸氏も絶賛しているのだが、どうも自分の好みとは外れている。「風邪うどん」でなぜか命を狙われる勇太郎という展開は良かったし、「蛸芝居」の大ダコの真相も時代小説ならではのもので納得がいった。

 しかし「地獄で豆腐」の解決は例によって何の伏線らしきものもなく、いきなり解決してしまうし、「長崎の敵を〜」は時代劇とSFをミックスさせた話だし。西部劇とSFを組み合わせた「カウボーイ&エイリアン」が期待外れだったのと同様、この話もやはり無理筋だと感じてしまった。江戸時代にUFOがいたとしてもおかしくはないと思うし、田中啓文さんの小説なのでそこを上手く裁くことを期待して読み進めたが、やはり予想通りの展開にしかなっていないのが残念。

 シリーズはまだ続くようだが、ちょっとこの先を読むのはお休みかな。