砦のガンベルト

●597 砦のガンベルト 1967

 1876年襲撃されたクレンデノン砦を騎兵隊が調査、大尉が報告書を作成している。既に捕らえていたアラパホ族のリーダー、ハヌーは何も証言せず、砦では拳銃1丁が発見されていた。

 チャカは一人旅をしていた。先住民たちと出会うが、彼らは仲間の埋葬をしていたため、チャカは自分の食料を彼らに渡し去っていく。チャカは激走する馬車が故障したのを目撃、馬車に近寄る。乗客は2人の女性。そこへ先住民たちが現れるが、チャカを見て何もしないで去っていく。チャカは馬車とともにグレンデノン砦へ。

 砦では脱走兵へのむち打ちの刑を与えていたところだった。砦のバロア大佐は女性たちを歓迎、宿を求めるチャカには馬小屋を与える。砦は先住民たちに狙われていた。女性のうちの一人ベロニカはチャカと昔知り合いだったと姪チャベスに話す。その夜チャカは大佐から夕食会に招待される。大佐は女性も招いたその場で、部下たちを過去の行動を暴露し非難する。反論しようとした部下が先住民たちの矢で殺されてしまう。

 翌日、偵察に出た男の馬だけが砦に戻ってくる。偵察員が先住民たちに殺されたに違いないと考えた大佐はチャカに偵察を命じるがチャカは拒否、砦から出て行こうとするが、大佐付きの軍曹はチャカを非難、2人は殴り合いを始める。互角に戦った2人はお互いを認め合う仲に。

 そこへベロニカがやってくる。チャカは早めに砦から逃げた方が良いと話すが、ベロニカは大佐の言葉を信じ砦から出ようとはしなかった。大佐がチャカに有償での偵察を依頼、チャカは受け入れる。チャカは砦近くで見張りをする先住民たちを殺害、彼らの村を偵察しにいく。そこには大勢の先住民がおり、砦攻略の訓練までしていた。チャカは捉えられていた偵察員を救い出し、砦に戻る。

 その頃砦では若い兵が中心となりクーデタを起こし砦から逃げようとしていた。そこへチャカたちが戻ってくる。兵たちはクーデタを起こし大佐に反抗するが、大佐は首謀者である若者を射殺、チャカの言葉により兵たちは協力して先住民たちの襲撃に備えることに。チャカは再度ベロニカに一緒に砦から逃げようと話すが、もう遅いと断られる。

 その夜、先住民たちは砦を取り巻く。チャカは大佐に全員を退去させるべきだと訴えるが、それは軍違反だと受け付けてもらえなかった。酒を飲んだチャカは軍曹になぜ無能な大佐の元についているのかと問うと、軍曹は昔大佐と一緒だった時、ヘマをやって先住民たちに捕らえられ、そのせいで大佐も捕まり去勢されたと話す。その夜、ベロニカとチャカは結ばれる。

 早朝先住民たちが砦を襲う。反撃する兵たちだったが、多勢に無勢で兵は皆倒れていく。ベロニカも殺され、チャカはチャベスとともに隠れていたが、最後に先住民のリーダー、ハヌーに見つかる。しかしハヌーは2人を見逃し去っていく。

 冒頭の大佐の報告書。メキシコ大使からベロニカとチャベスに関する問い合わせがあったこと、砦内に新しい墓が一つあったことが報告書に記される。

 

 一つの砦をめぐる白人と先住民の攻防を描いた作品。しかも白人側が全滅するという珍しい展開。その砦を守る兵たちも、いわく付きの兵ばかりというのも変わっており、砦の責任者である大佐は部下を非難するおかしなリーダーであり、兵たちもクーデタを考えるなど統率は全く取れていない。そこへ早打ちのガンマンが現れ、しかもそのガンマンの昔の恋人まで登場する。

 となれば、ガンマンが活躍して責任者をやり込め、美女を去って行くというのが、西部劇全盛の頃の展開だろうが、本作は西部劇も終焉に近い1960年代後半の作品のため、全くそのような展開にはならない。

 ガンマンは大佐付きの軍曹を殴り合いをし、昔の恋人には一緒に逃げることを拒否される。まぁ最後の夜に結ばれるが(笑 ある意味、何一つ救いのない映画だが、冒頭とラストに登場する大尉の報告書によれば、砦で唯一生き残った主人公と恋人の姪が生き延びてどこかへ行った、ということだけが救いだろう。

 軍曹役のアーネストボーグナイン。「ワイルドバンチ」でも書いたが、「ポセイドンアドベンチャー」で印象深い俳優さん。本作でも大佐より主人公よりも印象に残る役柄だった。