がんばれ!ベアーズ

●309 がんばれ!ベアーズ 1976

 バターメーカーは議員であるホワイトウッドから少年野球チームベアーズの監督をするよう頼まれる。ホワイトウッドはチームを一つ増やし、強豪ぞろいのリーグに入れたのだった。バターメーカーは集まった少年たちと練習を始めるが、誰も下手くそで口ばかりうるさい少年たちだった。バターメーカーはユニホームのスポンサー探しまでしなくてはいけなかった。バターメーカーは元マイナーリーグの投手だったが、今はアル中で練習中にもビールを飲み、倒れてしまう始末だった。

 リーグ戦が始まる。初戦の相手はヤンキースだったが、1回表の相手の攻撃で26点も取られ、バターメーカーは試合を放棄する。少年たちは彼の言葉を聞かず皆帰ってしまう。一人黒人少年のアマフドが木に登ってしまったと連絡が入る。彼のそばまで木を登ったバターメーカーは、試合でエラーをして気落ちするアマフドに、足が速いからスイッチヒッターになってもらうつもりだったと話す。

 初戦を大差で負けたことを知ったホワイトウッドは、試合に出た息子がショックを受けていると話し、チームは解散させるとバターメーカーに話す。

 バターメーカーは別れた恋人の娘アマンダに会いに行く。彼女は女の子にもかかわらず良いピッチャーだった。しかし彼女は野球などするつもりはないと話す。

 グラウンドに戻ったバターメーカーは、少年たちから学校でバカにされたからもう野球は辞めると皆で投票で決めたと言われる。彼は少年たちに監督として失格だったと謝った後、練習に強制参加させる。そこで彼は少年たちに野球の基本を教え始める。

 初戦の相手ヤンキースの監督ロイが、ベアーズがまだ練習をしているのを見て止めに入る。議員も辞めさせると言っていると話す。しかしバターメーカーはリーグ戦で2位までに入り、決勝戦に出るつもりだと答える。

 2戦目アスレチックス戦。最終回まで試合は出来たが、18対0で負ける。ヒットは1本もなく24個のエラーがあった。気落ちする少年たちをバターメーカーは励ます。そしてまたアマンダに会いに行く。そして彼女を挑発し、野球をやらせることに成功する。

 3戦目メッツ戦。アマンダが登板し0対0のまま最終回相手の攻撃を迎える。しかしルーパスのエラーで負けてしまう。ルーパスを責める少年たちに、勝ちも負けもチームの責任だと話す。

 練習をしている時に不良少年ケリーがグラウンドの外に出たボールを遠投して返してよこす。それを見たアマンダはケリーをチームに入れようと提案、彼がいるゲームセンターに遊びに行き、エアホッケーで勝負するが負けてしまい、一緒にコンサートに行くことに。

 しかしケリーはベアーズの練習に顔を出しチームに参加し、アマンダの投げた球を打ち返す。エースと強打者が入ったことによりベアーズは勝ち始める。

 そしてベアーズは最終戦で勝てば決勝に行けるところまで来る。何としても勝ちたいバターメーカーはセンターを守るケリーに取れるフライは全部取れと命じる。そしてケリーは他の少年の守備範囲まで行きフライを取ってしまう。試合には勝つことができたが、少年たちはケリーのやり方に不満を持ってしまう。

 試合後肘を冷やすアマンダはバターメーカーに明日の決勝戦に母が来ること、そして明日以降のことを話そうとする。しかし彼は明日の決勝戦のことしか話さず、アマンダの母とは2年前うまくいかなかったと言ってキレてしまう。アマンダはその場を去って行く。

 そして決勝戦当日。試合前の練習でもケリーは皆から相手にされなかったため喧嘩となる。喧嘩を止めたバターメーカーは理由を聞き、命じたのは自分だ、皆勝ちたいだろと話す。試合が始まる。相手チーム、ヤンキースの監督も選手に厳しい指示を出していた。乱闘があったり、微妙な審判の判定もあり、両監督ともエキサイトする。

 バターメーカーはルディにデッドボールになるように指示するが、彼はヒッティングをしてしまう。バターメーカーはベンチで怒りを爆発させ、少年たちを叱り飛ばす。しかし少年たちは黙って彼を見つめる。バターメーカーは冷静さを取り戻す。

 試合は敵が1点リードのまま最終回前のベアーズの攻撃。今日当たっているエンゲルバーグがバッターボックスに。ヤンキースの監督は息子であるピッチャーに投球の指示を出すが、息子は彼を三振に取りたがる。次球で息子は危険球を投げてしまう。それを見た監督は息子を殴る。試合は続行され、エンゲルバーグはピッチャーゴロを打つが、それを取った息子はどこにも送球せず同点となってしまう。息子はマウンドを降り、父親である監督にボールを渡しグラウンドから去って行く。

 そして同点で迎えた最終回ヤンキースの攻撃。バターメーカーはこれまでベンチで控えていた少年たちを試合に出す。ピッチャーも肘が悪いアマンダを降板させる。そして5点を取られてしまうが、最後にルーパスが外野フライを取り少年たちは歓喜する。

 最終回裏のベアーズの攻撃。簡単に2アウトとなった後、フォアボールなどがあり満塁となり、ケリーがバッターボックスに。そして外野へヒットを放ち、ケリーもホームに突っ込むがアウトになってしまう。

 試合には負けたがベアーズはベンチでビールで祝杯をあげる。そして試合後の挨拶に臨む。ヤンキースからシーズン中にバカにしたことへの謝罪の言葉や敗者への応援の言葉が送られるが、来年を見てろよと叫びビールファイトが始まる。

 

 これこそ子供の時に見て以来、何十年ぶりに見ただろう。非常に楽しく観た記憶、「カルメン」の音楽、一癖ありそうな監督の顔。本当に懐かしかった。ストーリーは覚えていなかったので、ラストまで楽しく観ることができた。

 良く出来たストーリー。大勢の子供が主役というだけでイケてるのに、音楽も良いし、定番通りの助っ人〜エースと四番〜の参加も良い。さらに終盤決勝戦でのエピソード。相手チームのピッチャーが最後に取る行動〜大人に対する反逆〜も良いし、ダメダメだったルーパスが最後に外野フライを取るのも最高。

 この歳になって観ると、既にアカデミー賞を取っているテータムオニールや、「サブウェイ・パニック」で観た顔じゃんというウォルターマッソーなど俳優陣のことも気になるが、やはり主役はその他大勢の少年たちだ。子供が大人にひと泡ふかせる映画は、やっぱり大好きだなぁ。

 

 

東雲ノ空 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●東雲ノ空 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第38作。季節は秋。磐音一行江戸へと小梅道場、小梅村での皆との再会と霧子重富家訪問、弥助と御庭番甲賀臑八、帰着後の挨拶回り、谷戸の淵と速水復職への策略。

 とうとう3年半ぶり?に磐音が江戸に帰って来た。江戸の仲間たちとの再会、初孫空也と会う金兵衛。感動的な場面が目白押し。

 一方で江戸に戻ったということで、磐音は正々堂々と今津屋の小梅村の寮に住むことで常時監視の目が光ることになる。そこには田沼からの刺客が次々と現れる。

 意外な見せ場は多摩川越えをする磐音一行が人の入れ替わりで田沼一派の目をごまかす場面か。この場面からこの1冊はスタートするが、読者もちょっと騙される。

 他にも利次郎が霧子を自分の家に連れていく場面での磐音からの恋の指導が入ったり、利次郎だけでなく辰平にも恋の話があったり、旧尚武館で絡んで来た田沼の配下におこんが啖呵を切ったり、弥助の苗字松浦を磐音が初めて知ったり、と見せ場も豊富。さすがに満を辞して江戸に戻って来ただけのことはある。

 速水についても磐音があちらこちらに手を廻して江戸に戻ることになりそう。そう言えば笹塚も何気に復職していたし。反撃体制が整ってきそうな感じ。江戸に戻った磐音の次の一手は何か。楽しみ。

 

死の追跡

●308 死の追跡 1973

 サンタローザの街で銀行強盗が発生する。この街の住民は協力し強盗たちを追い詰める。この街の保安官キルパトリックは銃を持たず、皆にも撃たせないことで有名だった。強盗たちを捕まえ、最後の一人も追い詰めるが、その一人ブランドは学校に立てこもり、キルパトリックの息子ケビンを人質に、仲間の解放を求める。キルパトリックは仕方なく住民たちに銃を放棄させ、ブランドたちを逃す。ブランドは、ケビンを人質として街を出るまで連れて行くと宣言、馬で逃げて行く。それをキルパトリックの妻キャサリンが追いかけるが、ブランドに射殺される。ケビンも放り出され、馬に踏み殺されてしまう。

 キルパトリックは妻と子の仇を取るために強盗たちを追いかけ、メキシコに入って行く。キルパトリックは、強盗たちに追いつく。1人逃げ遅れたスクールボーイを捕らえナイフで刺し殺す。残りの3人は逃げて行く。

 キルパトリックは丘に登り、3人の姿を見つける。ライフルで撃とうとした際に、メキシコの判事グティエレスに止められる。そして自分たちの仕事は逮捕することであり、処刑ではないと言われる。彼にブランドを捕まえたら手紙で知らせると言われ、キルパトリックは引こうとするが、隙を見せたグティエレスを殴り、3人の跡を追う。

 3人は老夫婦の住居に侵入して食べ物を漁っていた。その時キルパトリックが追いかけて来るのを見つける。

 キルパトリックは街に着くが、水辺で顔を洗っている時に住民たちに取り押さえられる。そこにブランドが現れ、老夫婦を殺したのはこの男だと話す。3人が侵入した家の老夫婦が殺されていた。キルパトリックは住民の手により、絞首刑にされそうになる。

 そこへグティエレスが助けに入り、キルパトリックを牢に入れる。

 3人組は別の街にたどり着いていた。馬の蹄鉄を修理してもらっていたが、そこでグティエレスがやって来るのを見つける。彼らは住民たちを脅し、グティエレスを追い返そうとするが、一人の住民が犯人たちに目潰しをし、撃ち合いになる。そして強盗の一人チューチューを捕まえるが、残りの2人は逃げてしまう。

 牢に入れられていたキルパトリックは別の牢に来ていた神父を人質にし牢から脱獄、強盗たちを追い始める。

 グティエレスはチューチューを住民に護送させ、自分はブランドたちを追うが、待ち伏せされ銃撃され、崖から転落してしまう。

 キルパトリックはチューチューが護送していた住民を殺し逃亡する現場に追いつく。廃墟で撃ち合いとなり、チューチューは底なし沼にはまってしまう。キルパトリックはチューチューからブランドはサンホセにいる女に会いに行くと聞く。チューチューは沼に飲み込まれて行く。

 サンホセに向かうキルパトリックはグティエレスを見つけ助ける。そして2人でサンホセに行く。キルパトリックは酒場で強盗の一人ジェイコブを見つけ射殺する。そしてブランドの女から、彼が娘に会いに修道院に行ったことを聞き出す。キルパトリックは酒場を出ようとするが、客の一人が彼に銃を撃つ。ケガこそしなかったが、それが原因でキルパトリックは目が見えなくなってしまう。

 キルパトリック、グティエレス、ブランドの女マリアの3人は修道院に向かう。修道院のそばまで来た時、キルパトリックは目が見えるようになる。彼は銃を奪い、グティエレスを殴り気絶させ、一人修道院に向かう。

 修道院の中で、キルパトリックとブランドは撃ち合いになる。キルパトリックはブランドの娘を人質にし、彼をおびき出す。しかし彼を射殺せず、街へ連れ帰って来る。キルパトリックはグティエレスにブランドを引き渡そうとするが、グティエレスは証人が死んでしまったため、ブランドは無罪となると話す。ブランドは喜び、酒を飲みたいと話し始める。キルパトリックはブランドを撃ち殺し、そして去っていこうとする。グティエレスは止まらなければ撃つ、と宣言するが、彼は止まらない。グティエレスは彼に向けて銃を放つ。

 

 色々な面で変わった作品だった。

 映画冒頭は静止画のつなぎで話が進む。まるで紙芝居(笑 映画途中でも静止画が何度か使われたような。また主人公キルパトリックが途中で目が見えなくなるが、その際の彼から見た視点のシーンもちょっと独特な感じ。さらに、主人公は銃を撃たないことで街を守って来た保安官という設定も斬新だった。

 映画のテーマは、仇を討つために犯人を追う主人公と、法を守ろうとするもう一人の保安官。もともと銃を持たない主義だった主人公が、復讐のため銃を手にしてしまうが、それを法で犯人を裁こうとする保安官が止める、まさにここにあるのだろう。

 主人公の主義が一貫してないじゃないか、とも思うが、愛するものを殺された人間ならば当然だとも思える。しかし法律との兼ね合いはどうするのさ、ということなんだろう。

 映画ではラスト、犯人を追いつめた主人公が犯人を殺さず、もう一人の保安官の前まで連れて来る。しかし法律で裁くことができないとわかり、主人公は法を犯し犯人を射殺する。一度は信念を取り戻したように見えるが、犯人が裁かれないとわかり、法を犯してでも犯人を殺す主人公の気持ちは十分にわかる。そして法を守るために、もう一人の保安官が主人公を射殺するのも…。

 この時期の西部劇は一筋縄ではいかないストーリーが多い。ニューシネマ全盛の時代の1本だから、このラストなんだろうなぁ。

 

居眠り磐音江戸双紙 帰着準備号 橋の上 佐伯泰英

●居眠り磐音江戸双紙 帰着準備号 橋の上 佐伯泰英

 磐音シリーズの特別編。以前同じようなものとして「読本」があったが、内容的にはシリーズがさらに進んだ後のもののため、それに合わせたものとなっている。

 巻頭カラー口絵、青春編「橋の上」、江戸案内〜季節ごと、著者佐伯泰英氏インタビュー、年表など。

 今回も小説 青春編「橋の上」が掲載されているので記録として残す。

 「橋の上」は、シリーズの前の話。磐音が初めて江戸に出てきた時の話。父の知り合い稲生を訪ねたり、佐々木道場に通い始めたり。途中、両国橋の上で助けた少女が巻き込まれた事件を解決する、という展開に。

 前の「読本」に掲載された「跡継ぎ」が、シリーズ直前の由蔵とおこんの会話とリンクしたまさにタイムリーな話だったのに対し、今回の「橋の上」は、シリーズ上江戸から3年近く離れている磐音が、初めて江戸に来た時の話で、もちろんいつもの通り人助けのために大活躍する話。さらに、磐音と絡むわけではないが、若い奈緒も何度か登場し、これまでほとんど出番のなかった奈緒が普通に会話しているのが嬉しい(笑

 小説終盤、玲圓非常に厳しい稽古をつけられ失神する磐音が描かれる。玲圓が厳しい稽古をした理由は前述した人助けをしている場合か、ということのようだが、このシリーズでこの後磐音が何度人助けをしたことか(笑 まぁしょうがないか。

 佐伯泰英さんのインタビューもあるが、今回はシリーズについての言及は特になかった。しかし佐伯さんが磐音シリーズを60歳の時に書き始めた、というのを知り驚いた。この時点で、現実の10年で、小説にも10年が経過している、というのもスゴいし。

 シリーズは残り3分の1程度。いよいよ磐音も江戸に帰って来るし。楽しみ。

 

 

愛情物語

●307 愛情物語 1965

 エディはニューヨークのセントラルパークカジノの楽団のライスマンを訪ねる。以前彼のピアノ演奏を見たライスマンが誘ってくれたため、楽団に雇ってもらうつもりだったが、あっさりと断られる。しかし店にいたマージョリーの計らいで楽団に採用されることに。最初は控えのピアニストだったが、だんだんと彼も認められてくる。

 エディはお礼のためマージョリーの家を訪ねる。彼はマージョリーにピアニストとして大金持ちになる夢を話す。エディは正式に楽団に採用される。そして彼のピアノは人気を得ていく。彼はある時パーティに招待される。喜んで出かけていくが、招待主は彼にピアノを弾いてくれと頼む。客としてではなくピアニストとして招待されたことに落ち込むが、マージョリーが彼を励ます。2人はその後デートを重ねる。彼のピアノはさらに有名になる。

 エディは両親を店に呼び、両親の前でマージョリーにプロポーズをする。2人は結婚し、新居を構える。新婚初夜嵐となるが、マージョリーは風の音を恐れる。

 エディは彼の名のついた楽団を率いることになる。

 クリスマス、マージョリーは子供ピーターを産むが、それが原因で死んでしまう。

 エディはピーターを置いて南米ツアーに出かける。マネジャーのルーもそれでエディが元気になると考えてのことだった。その後もエディはピーターに合わないまま5年がすぎる。ルーはピーターに会うようにエディを説得する。

 エディはピーターに会いに行くが、2人ともぎこちない再会となる。その後エディは徴兵され戦場へ行く。彼は戦場でも活躍したが、有名ピアニストの彼に来る慰問の依頼を受けなかった。戦場で演奏したくない、というのが理由だった。

 ある時戦地の廃墟でピアノを見つけたエディは演奏を始める。すると現地の少年が近づいて来る。彼はガムをあげ、一緒にピアノを演奏する。周りにいた人たちが演奏に聞き入る。エディは考えを変える。ピーターに話し合いたいという手紙を書こうとしていたが、その時に終戦の知らせを受ける。

 エディは国に帰り、新しい楽団の契約も済ませ、ピーターに会いに行く。そこにはチキータがおり、ピーターの面倒を見ていた。ピーターはエディの前でピアノを演奏してみせる。エディはピーターがチキータとばかり時間を過ごすのを快く思えなかった。そしてチキータと衝突するが、チキータがピーターのことを思っていることに気づいたエディはチキータに教えを乞う。

 エディはピーターとチキータを仕事場に連れて来る。休憩時間にピーターが友人たちと楽器で演奏を始める。楽団員もそれに加わり演奏する。

 エディは店にピーターたちを客として呼び演奏をするが、その途中に左手の痛みを覚え、演奏を代わってもらう。その夜、ピーターは嵐を怖がり、エディのベッドに入って来る。翌日ピーターはルーとともに医者に行く。家に戻ったエディはチキータに難病に侵され寿命が1年だと告げる。チキータはエディに愛の告白をし、エディも受け入れる。2人は結婚する。チキータはピーターに本当のことを話すべきだと語り、エディも受け入れる。エディはピーターと公園に行き、自分がもうじき死ぬことを告げる。2人は家に帰り、ピアノの連弾をする。

 

 昔からタイトルだけは知っていたが、今回が初見。最初の30分ほどを観た時に、どれだけ幸せな主人公の映画なんだ、と思って観ていたが、映画が後半に差し掛かると話が急展開を見せる。

 後半は、妻を失ったエディが息子との愛情を取り戻して行く話なんだ、と気がついた時に、今度はエディ自身に不幸が襲って来る。そして映画冒頭原題が「The Eddy Duchin Story」だが、邦題が「愛情物語」の理由はここにあったのかと気づく。

 エディやピーターの演奏シーンが何度も映し出され、タイロンパワーや子役は本当にピアノが弾けるんだと感心したが、ネットで色々調べるとそうではなく吹き替えらしい。それにしても「その感じ」で見えるのはスゴい。

 他にもピアノ越しの映像が何度か使われるなど、音楽に特化した映画のように思えるが、映像も凝った部分がある。実話を基にしている割には、脚本もよくできている。

 やはりこの時代の名作と言われる映画は間違いがない。

 

一矢ノ秋 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●一矢ノ秋 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第37作。季節は前作から1年後の約1年間。江戸の仲間へ磐音の近況知らせと尚武館取り壊し、姥捨の郷入口での敵撃退、お有岩田帯祝いと辰平利次郎江戸尾張へ、雹一派との戦いの準備、おすな女人禁制の高野山へと雹田平との戦い。

 この磐音シリーズ最大の特徴の一つでもあるが、1冊で一つの季節が進む。ところが本作ではいきなり前作終了から1年後の場面からスタート。しかも1章ごとに一つの季節が進んでいき、結果的に本作巻末時では前作終わりから約2年が経過していることになる。

 これは磐音とおこんの息子空也の成長を待ったことが大きいのだろう。前々作から姥捨の郷での暮らしが続いているが、田沼一派の追っ手は相変わらず。生まれたばかりの赤ちゃんを連れ田沼一派との戦いはできないために、空也を成長させる必要があったのだろう。さらに、いつまでも隠れ里にいたのでは話が進まないし(笑

 最終章で隠れ里の雑賀衆と雹一派の全面対決となる。江戸へ手紙を持って一旦戻った辰平が平助を連れて隠れ里に帰ってくる。平助も全面対決に手を貸すことになる。このために辰平、利次郎が隠れ里に来たのかとも思わせる。

 隠れ里以外では、尚武館の取り壊し現場に行った品川柳次郎が田沼一派に襲われそうになるが、そこへ現れる平助。またまたカッコ良い。

 蛇足。前作でも登場していたが、山中で雹一派と戦う霧子がブーメランのような武器を用いて活躍する。磐音シリーズとは全く関係ないが、先日観た「おしゃれ泥棒」でもブーメランを使っていた。こんな短期間にブーメランを用いた作品を2つも見ることになるなんて。ブーメランなんて「俺たちは天使だ」の沖雅也ぶり(笑

 

ホワイト・ラブ

●306 ホワイト・ラブ 1979

 忍はスペイン語学校に通う。授業料支払いの件で窓口にいた時に健のマッチが原因で服を焦がしてしまう。二人は翌日夕方会うことを約束する。忍は母が美容院を経営する実家に帰る。姉が夫婦喧嘩をし家に戻ってきていた。

 翌日スタイリストの仕事をしていた忍は健との約束の時間を気にしていたが、父の友人山下からの電話があり、山下と夕食を共にする。山下は忍の父が日本に帰りたい、家族と一緒に暮らしたいと書いた手紙が来たことを知らせる。忍の父は20年前家族を捨て女と共にスペインに行っていた。忍は一人でスペインに行き父と会うつもりだった。健は待ちぼうけを食らう。

 2日後、学校で忍を見かけた健は声をかける。二人は健が行きつけのバーに行く。そこで忍は健が学校の臨時講師であること、スペインで暮らしていたことがあることを知る。忍は酒に酔い、健はタクシーで家まで送る。別れ際健は忍にキスをする。それを忍の母が見ていた。

 健はミッキーという外国人女性のポン引きをしている男の手伝いをしていた。彼の車を預かり車を走らせている時に、街中で忍を見かけそばに車を止める。車に驚いた忍は持っていた壺を落として割ってしまう。壺はCMの撮影で使う予定のもので、忍は代わりの壺を持って撮影現場に行く。しかしディレクターはツボが異なることに怒ってしまい、撮影は中止になる。

 その夜忍と健はバーでやけ酒を飲む。忍はスペインに行くことを健に告げる。二人は健のアパートに帰り、一夜を共にする。健は車をミッキーに返しに行き、壺の弁償金をミッキーに借りる。

 忍は撮影現場にいた。そこへ山下が訪れる。忍は山下に金を借り、壺の弁償金を払いに行くが、健が既に支払っていた。忍は学校で健にお礼を言うが、そこにはミッキーがおり話ができなかった。健は夜バーで待つように言い、忍は了解する。忍はバーのマスターから健のことを聞く。忍は健がなかなかやってこないので帰ろうとするが、そこへ健が女を連れてミッキーとやってくる。忍は一人帰る。

 健からの電話に忍は出なかった。困った健は忍の家に行く。忍の母が健を見かけ家に招き入れる。そこへ忍が帰って来て二人は話をする。そこで忍はスペインには父がいることを告白する。二人はラーメンを食べながら、明日から旅に行くことを決める。

 翌日船の乗り場で忍は健を待っていたが、健は来ず代わりにミッキーが現れる。ミッキーは健は香港に出張しに行ったと話し、忍を車で送ることに。その途中ミッキーは忍に襲いかかるが、忍はスプレーで健を撃退し逃げる。

 忍の仕事場に健がやってくる。忍は健にミッキーに襲われそうになったことを話すと健は飛び出して行く。健はミッキーと殴り合う。忍は健のアパートで待っていたが、そこへ怪我をした健が帰ってくる。治療をしようとした忍は机の引き出しの中から健が女性と映った写真を見つける。健は女性は多恵子、しかし終わった話だと答える。

 山下から忍に父が危篤だと知らせが入る。忍は山下とスペインに行くことに。しかし山下はスペインに着くなり病気になってしまう。忍は一人マドリードの街を出歩く。そこで多恵子を見かけ声をかける。彼女の息子は健という名前だった。

 健もスペインにやってくる。そして忍の父のいる家を訪ねるが忍がまだ来ていないことを知り帰って行く。遅れて忍と山下は忍の父の家にやってくる。父が不倫した相手は山下の妹だった。そこへ健もやってくる。3人は忍の父の家で一泊する。翌日山下は妹の墓参りに行くと言い、忍は健と車で街へ帰る。車中で忍は多恵子と会ったことを話す。健は多恵子がどこにいたのかを聞く。二人は多恵子に会いに行く。しかしアパートに多恵子はおらず、隣の住人の話でパンプローナの祭りに行っていると知らされる。二人は祭りに行く。その車中で健は多恵子との出会いを話す。健はサラリーマンとしてスペインにいた時に多恵子と出会い恋に落ちていたが、当時の上司に多恵子が犯され妊娠してしまった。スペインで堕胎できないために二人はフランスに向かったが、その途中多恵子は姿を消してしまっていた。

 二人は多恵子を見つけ話をする。多恵子は息子が健との子ではなく上司との子だったため健と名付けたことを告白する。それを聞いた忍はそこから飛び出してしまう。多恵子は健に忍を追いかけるように言う。街は牛追い祭りの最中で忍は危険な状態に。多恵子も2階から健たちの様子を見て危ないと叫ぶがその最中に落下して死んでしまう。

 健と忍を多恵子の息子を連れ、健の昔の上司に会いに行き、事情を話す。上司は自分の子供とは限らないと言い出す。忍は愛想を尽かし、その子を二人で育てようと提案する。上司が養育費を出そうとするが、二人はそれを受け取らず、多恵子の葬式をし、日本へ帰国する。

 

 百恵友和シリーズの10作目だそうで、原案は一般公募されたらしい。ここまで「伊豆の踊り子」「潮騒」「絶唱」「風立ちぬ」と見て来た。どれも原作が日本の文芸作品であったのでストーリーはしっかりしていたのに対し、この作品はちょっと残念な感じ。

 百恵ちゃんの「赤いシリーズ」が一つも見たことがないが、ひょっとすると回シリーズはこんなストーリー展開が多かったのだろうか。なんか安っぽい展開でがっかり。父の行き着いた場所、住む場所がスペインである必然性は全くないし、不倫相手が父の友人山下の妹だという話もとってつけたように思える。

 「絶唱」「風立ちぬ」で薄幸の少女が似合うとされた百恵ちゃんが、現代劇で、しかもそんなに薄幸でもない役をやったのが間違いなのか(笑

 でもまぁ、10作記念作品さすがに脇役陣は豪華だった。田中邦衛小林桂樹岸田森岩城滉一北村和夫范文雀。この人たちが見れたから良いとするか(笑

 

 

ホワイト・ラブ

ホワイト・ラブ

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video