鬼平犯科帳 第7シリーズ #11 毒

第7シリーズ #11 毒

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 鬼平は五鉄で飲んでいるときに陰陽師山口天竜を見かける。傲慢な態度をとる男だった。後日鬼平は彦十と町を歩いているときに天竜を見かけるが、掏摸が天竜の懐から袱紗包みを盗む。鬼平は掏摸を、彦十は天竜の跡をつける。掏摸伊太郎から包みを奪い返した鬼平はその中に30両の金と縫い付けがあるのを見つける。中を見ると白い粉だった。彦十は天竜に声をかけ鬼平が掏摸の跡をつけていると話すが、天竜は彦十の前から姿を消す。

 役宅に戻った鬼平は同心たちに話をする。酒井は30両を見捨てて逃げた天竜に不信を持つ。小林は白い薬を立泉先生に見てもらった結果、南蛮渡りの毒薬だと判明したと報告する。鬼平は袱紗の笹竜胆の定紋の家を小林に調べさせる。

 盗賊改方は三河町の天竜の屋敷を調べる。五郎蔵が三河町の医師が匙を投げた病人を天竜が祈祷で治したこと、半年前までは易者をしていたこと、最近では旗本土屋左京家にも出入りしていること、を調べて来る。土屋左京は上様のお側用人だった。

 小林、酒井は鬼平に報告をする。鬼平はこの件は土屋左京も絡んでおり、命懸けの捜索となると話す。

 天竜が出かけたのを五郎蔵が跡をつける。天竜は町医者井坂宗源の家に立ち寄った。小林は彦十に宗源のことを調べさせる。小林は土屋左京のことも調べるが、評判は悪くなかった。鬼平は掏摸の伊太郎を呼び寄せる。伊太郎を沢田に同行させ、天竜の跡をつける。天竜は土屋家の武家と密会する。鬼平はその武家の駕籠を襲い、伊太郎に掏摸をさせる。その中には薬包が入っていたことを武家に告げる。盗賊改方は天竜を捕まえる。

 この件は解決を見ないまま時が過ぎる。翌年正月、鬼平宅に土屋家の家老が訪問し鬼平に金を渡そうとするが、鬼平は突っぱねる。盗賊改方では天竜と宗源の調べを進め、天竜に毒の調達を依頼したのは土屋家の側用人万右衛門だと判明、万右衛門は100両を天竜に渡したが30両をくすね、残りの70両で宗源から毒を調達していた。

 半年後、土屋左京は急死、土屋は取り潰しになった。1年後、鬼平はこの件について久栄と話す。伊太郎は役宅の小者になっていた。

 

 鬼平にはとても珍しい城内まで及ぶ話。当然のことながら気持ちの良い結末とはならない。それでも最後に鬼平が久栄と話すことで話は終わる。鬼平らしくない展開がここまでドラマ化されなかった大きな要因だろう。

 綿引勝彦が亡くなった後、初めて五郎蔵が出て来る話を見ることができた。やっぱり他の密偵とは一味違い重みのある役。今回は珍しく天竜捕縛の現場でも活躍をしていた。綿引勝彦が亡くなったとの報道を受けて、ネットで「あちらで彦十さんや粂八さんと一杯やってください」という文章を目にし、ちょっとうるっと来てしまった。五郎蔵親分、どうか安らかに。

 

本所おけら長屋 八 畠山健二

●本所おけら長屋 八 畠山健二

 「すけっと」

 おけら長屋の島田の家に少女が訪ねてくる。彼女は森田小次郎の娘美乃。

 森田は3日前、島田の道場にやって来て稽古を申し込んで来たが、稽古の最中に倒れ、島田は彼を聖庵堂へ運んでいた。彼の願いで印判屋和泉屋を呼び、和泉屋から事情を聞く。4年前森田は西張藩の藩士で父から家督を譲られる際に父の部下だった石川孫蔵に父親を殺されていた。そのため父の仇討ちとして石川を追っており、江戸で石川を見かけたとの話から江戸に来ていた。

 美乃は小次郎の体の調子が思わしくないことから、自分も島田に剣術を習い仇討ちの手助けをしたいと申し出る。島田は道場へ通うように美乃に話す。万松たちは石川を探し始める。しばらくして万松は柳島の天狗長屋に髪結いの女と住む石川を見つけるが、それを聞いたお染はその髪結いお冴を知っていると話し出す。お冴はお染の友人の妹で、亭主に死に別れたがその後所帯を持ち身ごもっているとのことだった。

 仇討ちと身ごもっている妻のいる仇相手を知り、おけら長屋の連中は悩む。島田は南町の同心伊勢平五郎に事情を説明し協力を仰ぐ。

 奉行所に関係者が集められ、桑原肥前守の裁きが始まる。実は石川は森田の父を殺しておらず、一緒にいるところを鉄砲と横流しをしていた他の藩士に襲われた、と話す。真偽を確かめるため、桑原は西張藩江戸家老酒井を呼び出していた。そして全てが丸く収まることに。

 「うらしま」

 万松の行きつけの居酒屋「三祐」で万松は店でたまに見かけるようになった男に目をつける。三祐で働くお栄に話を聞くとここ2ヶ月ぐらいたまに来るようになった客だが、酒も料理もあまり頼まないとのこと。万松は店で働く若いお冬目当てだと騒ぎ出す。そこへ八五郎がやって来る。話を聞いた八五郎は男の顔を見て見覚えがあると話す。

 翌日八五郎は男がさくら湯の下働き亀次郎だと思い出し万松に話をする。しかし亀次郎は本当は鼈甲問屋浦島屋の跡取りで、店のしきたりで18歳の時から3年間外で修行をしているところだった。話を聞いた万松は三祐に行き、事情を説明、お冬を応援する。

 しかし街中で亀次郎が声をかけたのはお栄の方だった。亀次郎はお栄が店の前にいた物乞いにかけた言葉からお栄に惚れていたのだった。しかしお栄は亀次郎に店の主人になることの責任を話し、亀次郎の申し出を断る。

 三祐でお栄が万松に事情を説明しているところに、亀次郎の父で浦島屋の主人勘右衛門がやって来てお栄に一度店を見に来てくれと話す。後日店を見に行ったお栄だったが、やはり話を断ることに。

 「ふところ」

 清水寿門が三祐にやって来て島田たちと再会する。清水は二本松藩蕎麦屋を営んでいたが、蕎麦の勉強も兼ねて久しぶりに江戸にやって来ていた。その時店に大巌という力士がやって来る。体はデカイが弱い相撲取りだった。

 街で大巌にあった清水は自らの経験を彼に話し、相撲取りだけが人生ではないと諭す。万松は勧進相撲での大巌の勝負に大金を賭けることで大巌を奮起させようとする。万松は島田に大巌が勝つ秘策を授けてもらおうとする。大巌は島田の道場へ行くが、その時飛脚が書状を持って道場に飛び込んで来る。死に物狂いで書状を届けた飛脚は皆に心配されるが、これが自分の仕事だと話す。

 勧進相撲当日、大巌は見事に勝負に勝つ。しかし賭博がばれ賭金は没収され万松はがっかりすることに。清水はまたおけら長屋に勉強させてもらったと話し、帰って行く。

 「さしこみ」

 黒石藩の藩主のお付きの田村真之介は書状を届ける仕事を終え、回向院そばを通った際におけい婆さんの屋台でおけら長屋の女連中に捕まる。その時相生町蕎麦屋に男が子供を人質に立てこもったとの話が舞い込み、皆で蕎麦屋へ。立てこもったのは柳原町の大工銀平、人質となったのはお花という6歳の娘。彼は妻お利を連れてこいと要求する。銀平はお利が男を作って出て行ったと話す。おけら長屋の女連中は手分けしてお利を探し、長屋の連中を呼びに行く。

 酔っ払った万松も蕎麦屋にやって来る。おけい婆さんは人質の交換を要求、銀平はお花の代わりに真之介を人質にすることに。その時話を聞きつけた八五郎蕎麦屋にやって来る。事情を勘違いしている八五郎蕎麦屋に入って行き、銀平を叩きのめす。そこへお利もやって来て…

 「こしまき」

 南六軒堀町の北橋長屋に住む郷田豪右衛門という浪人は富士という名の犬と暮らしている。5年前娘の鈴音が出て行った夜、豪右衛門が拾って来た仔犬だった。

 ある日聖庵堂にその富士がやって来る。お満は異変に気付き豪右衛門の家へ行く。途中偶然会った万造を連れて。すると豪右衛門が家の中で倒れていた。すぐに聖庵堂へ連れて帰り治療をするが、豪右衛門の余命はあと少しだった。お満は万造に豪右衛門の娘鈴音を探すように頼む。万造が長屋の住民に相談すると、犬富士の嗅覚を使うと良いと教えられる。長屋の住民も鈴音探しに協力する。

 お染が鈴音が家出前に猿江町の武家屋敷に出入りしたことを突き止める。お満と万造は猿江町の片平宅へ行き事情を説明するが、応対した御新造は話を聞くだけで鈴音の居場所は教えてくれなかった。

 島田は家に戻った豪右衛門を訪ね事情を話す。豪右衛門は娘と会うのを拒むが、島田の説得で鈴音が家出をした事情を話し出す。上役の賄賂要求を拒んだ豪右衛門は不義密通をしているという嘘の噂話を立てられ、藩にいられなくなり江戸に出て来たのだった。鈴音もその噂話を聞いていたのだった。

 万造とお満は片平宅の御新造の漏らした黒門町という言葉から富士を連れ鈴音を探しに行く。そこで中瀬古家に嫁いだ鈴音を見つける。父と会うことを拒む鈴音だったが、お満から事情を聞き態度を変える。豪右衛門の病状が悪化する中、鈴音が豪右衛門に会いに来る。そして二人は和解するが、豪右衛門は亡くなってしまう。四十九日が終わり、豪右衛門の墓参りをしたお満と万造は墓の前で死んでいる富士を見つけ号泣する。

 

 「すけっと」は仇討ち話。しかし一筋縄では行かず、仇討ち相手の妻が身ごもっていることが判明、長屋の住民も島田も含め、どう決着をつければ良いかわからなくなる。そこへ南町奉行の登場、意外な展開で全てが丸く収まる。

 でもちょっと話が出来過ぎかな。おけら長屋がどう対応するか、どう話の決着が着くかと思っていたが…

 「うらしま」はいつもの居酒屋三祐にやって来る客の話。そしてこれまでも度々顔を見せていた三祐のお栄が主役の話。粋な結末となる。最後お栄にアドバイスする万松に見せたお栄の様子、ひょっとするとお栄は松吉に惚れているのか、と思わせるが、今後どうなっていくのか。

 「ふところ」は第1巻で登場した清水寿門が再登場。仇討ち話が再燃するか、と思いきや、力士大巌の登場で意外な方向に話が進む。一種の事件解決話かな。

 「さしこみ」は見事な事件解決話。しかも島田が登場せず、長屋の住民とおけい婆さんとで解決してしまう。解決の主役のメインは八五郎だが(笑 久しぶりの滑稽話か。でもラストは見事な人情話となっている。

 「こしまき」は見事な人情話。家出した娘と頑固な父、しかし余命幾ばくもない。そこへ聖庵堂のお満が絡んで来て、万造も加わる。第1話「すけっと」もそうだったが、「実は…」で話が解決する。ちょっと肩透かし感もあるが、仕方なしか。

 

 三祐のお栄の本当の気持ちはどこにあったのか。田村真之介の成長も頼もしく感じる。お満と万造の仲も少し進展したように思える。

 島田の活躍ばかりではなくなってきたおけら長屋。今後の展開も楽しみなのは間違いない。

 

踊る大紐育

●336 踊る大紐育 1949

 3人の水平ゲイビー、チップ、オジーが乗った船がニューヨークに寄港する。3人は24時間の休暇でニューヨークの観光、女性とのデートをしようと街に繰り出す。

 地下鉄に乗った際に6月のミス地下鉄のポスターを見たゲイビーはそのアイビーに一目惚れする。地下鉄を降りたところで偶然アイビーを見かけるが、彼女は地下鉄に乗って行ってしまう。タクシーを捕まえ次の駅へ行こうとするが、タクシーの運転手がチップのことを気にいる。タクシーで次の駅へ行くが、アイビーは見つからない。ヒルディも含め4人でアイビーが行きそうな美術館博物館巡りをする。博物館で人類学を学ぶクレアと知り合う。

 博物館で5人は恐竜の模型を壊してしまい逃げる。そして5人は3手に分かれてアイビーを探すことに。ヒルディとチップ、クレアとオジー、ゲイビーに分かれる。

 ヒルディとチップは彼女の家に行くが、ヒルディの同居人ルーシーに邪魔をされる。なんとかルーシーを追い出し二人は部屋で楽しむことに。

 ゲイビーは音楽学校を探しアイビーを見つけ、夜のデートの約束を取り付ける。しかしアイビーはダンスのコーチから23時半にはショーに出ることを約束させられる。

 5人の待ち合わせ場所、エンパイアステートビルディングでヒルディとチップはデートをしていた。そこへ皆が集まってくるが、博物館の恐竜を壊した件で警察が彼らを追っていた。なんとか警察の追求を誤魔化したところへアイビーがやってくる。

 6人はナイトクラブでデートをするが、時間が来てアイビーは帰ってしまう。落ち込むゲイビーのためにヒルディは同居人ルーシーを呼ぶ。しかしゲイビーはアイビーに会いたがっていた。ゲイビーはバーで音楽学校で見かけたアイビーのコーチに会い、アイビーの居場所を聞き出す。そして5人はそこへ行き、アイビーと会うことができるが、警察も追って来て大騒ぎとなる。

 

 ミュージカル4連続。本作はジーンケリーとフランクシナトラという組み合わせ。しかし男性陣だけでなく、女性陣の歌と踊りも見事だった。邦画タイトルにもなっている「New York, New York」はこの映画の楽しさに見事にマッチしている曲。

 ストーリーはあってないようなものだが、コメディリリーフとして?登場したヒルディの同居人ルーシーがなかなか笑わせてくれた。

 これだけ立て続けに見たから、しばらくミュージカルはいいかな(笑

 

 

 

本所おけら長屋 七 畠山健二

●本所おけら長屋 七 畠山健二

 「ねずみや」

 江戸の街にねずみ小僧が現れ、万松は拍手喝采。しかし島田は火盗改などは面目を潰されていると心配する。

 おけら長屋に今助とお涼の兄妹がお吉婆さんの芋売りにやってくる。長屋の住民は二人を贔屓にするが、お涼が左足に怪我をしているのを目撃する。

 島田は火盗改の与力根本からねずみ小僧が足に怪我をしているという情報を仕入れて来て万松に話をする。万松はお涼が怪我をしていたことを思い出し島田に話をする。

 今助とお涼は大盗賊暁の滝右衛門の子供だったが、火盗改に捕まり獄門台へ送られた。その時二人は滝右衛門の子分丈八のいる江ノ島の旅籠に預けられていた。丈八の元から江戸へ帰った二人は滝右衛門の兄貴分兵助から、滝右衛門を売ったのは丈八だと聞かされ復讐を誓う。二人は丈八が盗んだ金を奪うために盗っ人としての腕を磨くため、ねずみ小僧となったのだった。

 島田は二人を見に行く。その時二人は与太者に絡まれるがお涼の機敏な動きで難を逃れる。一方お染はお涼の見舞いに二人が住む金時長屋に行った際にうなされていたお涼がねずみ小僧の名前を出したことを島田たちに伝える。

 島田は二人に事情を聞きに行くが、今助はしらを切る。そこへお吉婆さんがやって来て昔義賊からもらった一両が入った紙包みを見せる。そこには二人の父の名が書かれていた。今助は観念し全てを告白する。島田は後のことは任せろと話す。

 二人は根本の家に行き、全てを告白する。しかし根本はねずみ小僧は既に捕まえたと話し、二人に一筆書くことを依頼する。

 後日ねずみ小僧が店仕舞いをするという瓦版が街に流れる。二人はお吉婆さんから芋の煮方を教えてもらい、店の名をねずみ屋とすることに。

 「ひだまり」

 聖庵堂の医師聖庵は昔の夢を見る。

 彼の父は上州高根藩の藩医をしていたが、藩主の世継ぎが赤疱瘡になった際、それを治すことができず藩主に斬り殺された。家を追われた聖庵と母は江戸へ。父の友人の医師舟天が開いている舟楽堂に行き、聖庵は舟天の弟子となり働く。そこにはお歳という若い女性も働いていた。

 舟天は金持ち相手の治療しか行わず、お歳や聖庵には給金を払わなかった。ある日聖庵の母が病気になる。また舟楽堂近所に住むお采という娘が赤疱瘡にかかる。お采はお歳が可愛がっていて娘だったが、お采の家は貧しかったため、舟天はお采の治療をしようとはしなかった。聖庵は不眠不休でお采の治療をする。そしてお采は完治する。そんな中聖庵の母が亡くなってしまう。

 お歳は聖庵の母が亡くなる前に、聖庵のことを頼まれていた。母の願いは聖庵を長崎で勉強させることだったが、母の貯めたお金では足りなかった。お歳は覚悟を決め、身を売りお金を作ることに。その金を聖庵は裏の長屋のお重から受け取る。お歳のことを聞き出そうとする聖庵だったが、お重はお歳の願いを聞き入れ立派な医者になってほしいと話す。

 2年の長崎留学を終えた聖庵は江戸に戻ってくるが、お歳は病で死の床にいた。

 「しらさぎ

 お里が万松に話を持ってくる。以前お里の奉公する成戸屋に来た本家志摩屋の娘お静が白鷺一座の芝居にハマっているとのこと、その芝居にお静を出すことはできないか、という相談だった。

 万松は白鷺太夫に会いに行き事情を説明する。太夫は了解してくれるが、万松に頼みごとがあると話す。太夫は14年前の大火事で両親を失い、妹と離れ離れになってしまっていたが、半年前に知り合いが池之端で妹お浜に似た娘を見たと聞かされたとのこと。お浜を探してほしいという依頼だった。

 万松は不忍池に行き団子屋で話を聞く。するとお浜と思われる娘が悪ガキ2人と組んでこの界隈で悪さをしていることを聞き出す。万松は大夫に報告に行く。太夫は来月からの芝居をお浜に見せたいと話す。

 話を聞いた島田は南町奉行所の同心伊勢に事情を話す。

 万松は長屋の久蔵とお咲を囮にしてお浜たちを引っ掛ける芝居を打つ。そして賭けをして小浜を白鷺一座の芝居に連れて行くことに。

 太夫とお浜のことを描いた芝居を観たお浜は太夫と仲直りをする。そして一座とともに江戸を立つことに。その時そこへお静がやって来て、一緒に行きたいと話す。

 「おしろい」

 小間物問屋永美堂の主人円太郎には化粧をする悪癖があった。吉原の桃香楼の筑紫を贔屓にし、誰にも見られず彼女の元で化粧をするのが楽しみだった。しかし円太郎の望みは高まるばかりだった。

 居酒屋で酒を飲む万松、八五郎の元へ野幇間の一八が顔を見せる。そして金は持つので湯島の料亭足柄亭へいってほしいと頼む。ただし一人芸者を呼ぶので褒めちぎるという条件をつける。八五郎は嫌がるが、万松はタダ酒が飲めるということで大乗り気に。結局3人で足柄亭に行くことに。

 酒を飲んでいる3人の元に現れたのは芸者姿の円太郎。打ち合わせ通りに褒めようとするができず、3人は喧嘩になってしまう。それを見た円太郎は泣き始める。3人は円太郎に事情を聞く。それを聞いた万造は来月両国稲荷のお祭りの時に、永美堂主催で女形美人合戦をやることを提案する。円太郎は行司役として女形になることができる。

 美人合戦は沸きに沸き大成功をおさめる。

 「あまから」

 大家徳兵衛が娘お孝に会いに藤沢に行くことに。

 島田は道場で火盗改の根本と会う。彼は今助お涼の兄妹から聞いた丈八を捕らえに江ノ島の丈八の旅籠晴海屋を見張っていたが、丈八がなかなか尻尾を出さないということだった。島田は兄妹の家に行き事情を説明、二人に江ノ島晴海屋へ行って丈八の企みを掴んでほしいと頼む。父の仇でもある丈八を捕まえるためなら、と二人は快諾する。

 島田も江ノ島へ行き、そこで徳兵衛と遭遇、事情を説明し、徳兵衛にも協力を仰ぐ。

 お涼は丈八の部屋を天井から覗き見、次の盗みが明後日だと判明するが、狙い先がわからなかった。お涼は意を決して丈八の部屋へ忍び込むが、その時丈八が帰って来てしまい窮地に。しかし店の女中が声をかけ難を逃れることができた。

 兄妹が探った丈八の仲間の風貌から、狙い先が海鮮問屋三浦屋とわかる。根本が事情を説明、丈八たちが盗みに入るのを待つことに。そして捕り物が始まるが、丈八は逃げる。そこにいたのは兄妹だった。今助は丈八を裏山の神社に逃す。そこで全てを話すが、ちょっとした隙にお涼が捕まってしまう。絶体絶命のピンチに店の女中が丈八を刺し、兄妹は助かる。駆けつけた島田は、女中から話を聞く。彼女は兄妹の母お若だった。お若は滝右衛門の妻だったが、一度だけ不貞を働き、子供たちを置いて逃げた過去を持っていた。

 

 前作が傑作揃いでどうなるかと思った第7作。

 「ねずみや」は時代劇ではお馴染みのねずみ小僧が現れる話。その正体がおけら長屋に芋売りに来る兄妹とわかり…。ここから先は人情話。犯罪者の兄妹を島田が救う。火盗改の根本も良い味を出す。そして見事なオチ。

 「ひだまり」は少し短い話で、思い出話だが、やっぱり泣かせる。聖庵の若い頃の恋物語

 「しらさぎ」はシリーズ第1作の「はこいり」で登場したお静が再登場。今度はお嬢様が芝居にハマる。そして芝居に出たいと言いだし、万松が動くが、話は意外な方向へ展開。これまた見事な人情話となる。ここでも見事なオチがつく。

 「おしろい」は久しぶりの滑稽話、と言って良いだろう。現代では問題視もされないが江戸時代は人には言えなかったであろう、男性がお化粧に魅了される話。男性芸者にいつもの3人が大騒動を引き起こす。しかしそこは万松、見事なケリをつける。

 「あまから」は第1話からの連続ものと言えるちょっと珍しい作品。今助お涼兄妹の父の仇である丈八を捕らえようとする火盗改の根本、そして久しぶりに娘お孝に会いに行く徳兵衛が藤沢の街で遭遇する。島田も兄妹も皆が集合して、いよいよ丈八を捕まえることに。と、一筋縄で行くわけもなく、そこへ兄妹の母親までが登場する。しかし、大谷徳兵衛と娘お孝の話や兄妹の代わりに芋売りをする長屋連中の話、最後に登場する母親など、ちょっと話があちこち行き過ぎた感がある。もう少しシンプルで良かったかな。

 そうは言っても第7作も泣かされる話が多かった。個人的には「ひだまり」がベストかな。短いながらもしっかりと泣かされました(笑

 1作品に5つの短編であるスタイルは変わっていないが、1つ1つの短編の長さが異なるのね。これまで気がつかなかった。磐音シリーズも1作品に5短編だったけど、見事なまでに全ての短編の長さが一緒だったから。でもこのスタイルもあり、だな。話によっては無駄に長くする必要もないし。

 当然次作にも期待。

 

バンド・ワゴン

●335 バンド・ワゴン 1953

 映画界のスター、トニーはニューヨークにお忍びで遊びに行く。しかし彼は世間では過去の人だと考えられていた。そんなトニーをマートン夫妻が迎え、彼のために脚本を書いたからと舞台への出演を願う。そして演出家コルドバに会わせることに。

 コルドバは脚本の内容を聞き、現代のファウストとして舞台化することで了承する。相手役はバレリーナのジェラルドが選ばれる。トニーとジェラルドは顔合わせするが、口喧嘩をしてしまう。しかし出資者の前でコルドバは二人を紹介する。

 舞台の準備が進むが、トニーはコルドバの演出や相手役ジェラルドのことで不満を爆発させ、降りると言い出す。ジェラルドが謝りに行き、二人は和解。

 そして舞台は初日を迎えるが、惨憺たる結果だった。トニーやジェラルドは若い出演者たちと打ち上げをする。その場でトニーはコルドバに元の脚本に戻すことを宣言、コルドバも了承する。

 舞台は地方公演を重ね、次第に成功して行く。そしてニューヨーク公演。舞台は大成功するが、舞台後、トニーは一人で成功を祝うことに。しかし舞台では皆がトニーを待っており、ジェラルドがトニーに愛の告白をする。

 

 三日続けてのミュージカル。「イースター・パレード」でアステアとジュディ・ガーランド。「若草の頃」でジュディ・ガーランド。なので3日目はアステア。

 「イースター」のように冒頭街角でのアステアが圧巻。歌と踊り、靴磨きとの共演が楽しい。

 ミュージカルなのでストーリーはあまり期待していなかったが、それでも舞台が出来上がって行く様を描いており、後年の同じテーマの作品の元になっている感じがする。

 そしてこの映画の見所は何と言っても、「That's Entertainment」 後の同タイトルの映画にもなった有名な一曲。これを聞けただけで十分。しかしこの曲の歌詞がこんな意味だったなんて。初めて意味がわかり納得。やはり英語ができないということは悲しい(笑

 

若草の頃

●334 若草の頃 1944

 1903年夏。

 1男4女の子供達のいるセントルイスに住むスミス一家。翌年に控えた万博を心待ちにしている。

 長女ローズの恋人ウォーレンからの長距離電話が結婚の申し込みだと思っている次女エスターは夕食を早くするように頼む。そんなエスターは隣に引っ越して来たジョンのことが気になっているが話すきっかけを得られないでいた。

 夕食は帰って来た父親の一言でいつも通りの時間に取ることに。食事中電話がかかって来るが、ウォーレンは電話で何も大切なことを喋らず、ローズは怒ってしまう。

 一家は長男の卒業パーティを開き、隣のジョンも招待する。パーティが終わり帰ろうとするジョンをエスターは引き止め、話をすることに成功、万博予定地へのデートに誘う。

 翌日エスターは友達たちと万博予定地へ出かけるがジョンは来なかった。しかし電車を追いかけてジョンがやって来る。

 1903年秋。

 ハロウィン。四女トゥーティーが騒ぎを起こす。怪我をして帰って来た彼女は隣のジョンにやられたと話したため、エスターは怒ってジョンの家に行き、彼に暴力を振るう。家に戻ったエスターはトゥーティーと一緒にいた三女アグネスから真相を聞く。ジョンはいたずらをしたトゥーティーを庇っていたのだった。エスターはジョンに謝りに行く。ジョンは別れ際にキスをする。

 その時父が帰って来る。父はニューヨークへ栄転することになったと話す。家族は皆今の家にいたいと反対し、部屋に入ってしまう。しかし父と母が歌い出すと皆リビングに戻って来て、一緒にケーキを食べる。

 1903年冬。

 クリスマス。街ではパーティが開かれるが、長男ロンはダンスを申し込んだルシルに振られてしまっていた。相手はローズの恋人ウォーレン。仕方なくロンとローズは一緒に踊ることに。エスターはジョンと参加するつもりだったが、ジョンはタキシードをないため参加できないと話す。エスターは悲しむが、祖父がダンスの相手として参加してくれることに。

 パーティ会場で、ルシルがウォーレンはローズと踊るように話し、自分はロンと踊ると言い出す。一人エスターだけが残され、彼女は多くの男性と踊ることに。最後に祖父が助け舟を出してくれ、やっと普通に踊ることができたが、セントルイスでの最後のダンス…と悲しむ。その時祖父がクリスマスツリーの影にエスターを連れて行く。ダンスの相手はジョンに変わる。そしてジョンはエスターにプロポーズをする。

 家に戻ったエスターはトゥーティーがまだ起きているのに気づき声をかける。サンタを待っていると話すトゥーティーエスターが歌を歌い出すと、トゥーティーはニューヨークに持っていけないにわの雪だるまを壊し始める。それを見ていた父親が家族を起こしリビングに集める。そしてニューヨークに行くことは中止すると宣言。そこへウォーレンがやって来てローズにプロポーズをする。

 1904年春。

 スミス一家は皆で万博会場へ出かける。そして生まれ育った街で万博を見ることができたことを喜ぶ。

 

 昨日に引き続き、ジュディ・ガーランドのミュージカル。昨日観た「イースター・パレード」の4年前の作品ということで、典型的なミュージカルになっている。ミュージカルとしては「イースター」の方が良かったかな、さすがに。

 いつも思うが、このころのアメリカ映画は「家族と一緒にいること」と「生まれ育った街への愛」がとても重要なものとして描かれる。日本でも戦後すぐの映画は同じか。

 タイトルの「若草の頃」は「若草物語」をイメージしてつけられたんだろうなぁ。「若草物語」はこの4年後の作品だけど、日本公開が逆になったんだろう。ただ共通点は4姉妹のいる家族の物語ということだけだけど(笑

 120年前のアメリカの文化や暮らし、ハロウィンの様子などが観れたのもちょっとした収穫。

 

 

若草の頃(字幕版)

若草の頃(字幕版)

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イースター・パレード

●333 イースター・パレード 1948

 有名なダンサーであるドンは、イースターのプレゼントをいっぱい買って恋人でダンスのパートナーのナディーンの元へ行く。しかしそこでナディーンから、コンビの解消とナディーン個人で新たな契約をしたことを告げられる。ナディーンを拾い育てたという自負のあるドンはショックを受け、酒場でやけ酒を飲む。そこへ友人のジョニーがやって来て、仲直りのためナディーンの家へ戻るように言うが、ドンはまた誰でも育て上げることができる、と言い出し、店で踊っていたハンナに声をかけ、翌日から練習に来るように話す。最初相手にしなかったハンナだったが、相手が有名なドンだと知り、店を辞める。

 翌日練習場に現れたハンナをドンはレッスンする。しかしハンナはダンスの経験がなかった。二人は昼食休憩で街を歩く。そこでスターとして写真を撮られるナディーンを見かける。ハンナはナディーンに憧れるが、ドンは来年のイースターでは君がスターになっていると話す。

 ドンはハンナに服を買い与え、初めての舞台に立つ。しかし結果は成功とは言えなかった。

 ドンはナディーンと食事をするが、その時ハンナとのダンスが上手く行かない理由に気づく。ジョーは街で偶然ハンナと出会い一目惚れする。しかしハンナに逃げられてしまう。ドンはハンナにナディーンの真似をするのではなく、ハンナ自身として売り出すことを決める。このアイデアが当たり、二人は成功して行く。

 二人は新たな舞台に立つためのオーディションを受ける。しかしその舞台はナディーンのショーだった。ナディーンとドンが知り合いだったことを初めて知ったハンナは怒って飛び出すが、劇場の外でジョーと再会し夕食を一緒にする約束をする。

 ホテルに帰ったハンナをドンが訪ねる。ドンはナディーンのショーに出ることを断って来ていた。そこへジョーが訪ねて来る。二人が食事の約束をしていることを知ったドンは一人帰る。ジョーとハンナは食事に行く。ジョーは告白するが、ハンナはドンを愛していることを告げる。

 ドンは一人でナディーンのショーを見に行く。ショーは大成功だった。翌日ハンナはドンがいなくなったことを心配しジョーに連絡する。するとホテルの部屋にドンがやって来て、新たな契約をして来たと告げる。喜ぶ二人は夕食の約束をする。

 夜ハンナはドンの家に行く。ドンは家での食事の用意をしていた。しかし仕事の話をし始め、ハンナは怒ってしまう。ドンはハンナにキスをし、ハンナは機嫌を直す。そして「君と踊る時だけ」の楽譜を見つけピアノを弾き歌い始める。その曲はドンとナディーンの曲だった。

 そして二人の舞台の初日がやって来る。舞台は大成功。二人はナディーンのショーを見に行く。ナディーンは歌い終わった後、客席に降りて来てドンをダンスに誘う。客の前で断れなくなったドンは一緒に踊るが、席に戻るとハンナは帰ってしまっていた。

 ハンナはドンと初めて出会った店で酒を飲み、ホテルに戻る。ホテルの部屋の前にドンが待っていたが、ハンナは怒って部屋に入ってしまう。粘るドンだったが、警備員に連れられホテルを出ることに。

 翌日ジョーがハンナの部屋を訪れ、ドンの状況を伝える。ハンナはあることを思いつく。ドンの家にイースターのプレゼントが届く。不審に思っていたドンだったが、そこへハンナがやって来てイースターのデートに誘う。

 

 傑作と誉れ高いミュージカル。アステアとジュディ・ガーランドだもんなぁ。

 冒頭のおもちゃ屋でのアステアの小道具のドラムを使った歌と踊りは最高。最初から圧倒される。後半の舞台の場面でのあえてスローモーションを使った場面もビックリ。スローモーションに耐えられる踊り、というのもスゴいが、この当時でこの合成は見事。圧巻のシーン。

 ジュディ・ガーランドの歌もスゴいが、ナディーン役のアン・ミラーのタップもスゴい。本物の芸がここにある、といった感じ。

 歌と踊り以外でも、脇役のコメディシーンもある。レストランのボーイのサラダの説明シーン、二人が出会う酒場のマスターのちょっとお節介な格言、など。マスターの格言は華丸大吉の漫才を思い出した(笑

 正直このころのミュージカルは、後半ちょっと間延びするものが多いように感じていたが、この作品はコメディあり、二人の恋の物語あり、なので、間延びもなく楽しく観ることができた。観ておいて損のない一本。