抜き射ち二挺拳銃

●610 抜き射ち二挺拳銃 1952

 強盗団が金の採掘場を次々と狙う。主人を脅して権利書にサインさせ殺すという手口だった。シルバーキッドことリュークは父と採掘場で仕事をしており、砂金を見つけ町に売りに行くが、それを強盗団に狙われる。父は殺され、キッドも待ち伏せされるが、キッドは強盗団を倒し、採掘場に戻るが、父は殺された後だった。

 シルバーシティの町にはライトニングことタイロンという保安官がいた。強盗団の手がかりを得たライトニングは、民警団を率い強盗団を追う。ライトニングに恋するダスティは彼を見送るが、無法者ジョニーはその間にダスティに言いよるつもりだった。

 ライトニングたちは強盗団に追いつくが反撃され、彼は撃たれて怪我をしてしまい、別の町で治療を受ける。その町に強盗団の被害者の生き残りが運び込まれる。強盗団に関する証言が得られると町の皆は喜ぶが、町に偶然居合わせたオパルという女性が密かにその被害者を絞め殺してしまう。それを知らないライトニングはオパルに一目惚れする。治療を終えたライトニングはシルバーシティに戻るが、怪我の影響で拳銃が撃てなくなっていた。

 ライトニングの留守の間に、彼の友人ダンが射殺される。ライトニングはジョニーの仕業だと考えるが、ジョニーのアリバイをオパルの兄ロッドが証言する。しかしロッドは強盗団のボスだった。ライトニングはロッドから流れ者であるキッドが怪しいとの情報を得て酒場へ。酒場で賭けポーカーでの諍いを目撃、相手は流れ者であるキッドだった。彼の早撃ちを目にしたライトニングはキッドを保安官として雇い、自分を守るように話す。

 ライトニングはオパルから夕食に招待される。夕食後オパルの家から出た彼をジョニーの友人ブレイクが撃とうとするがキッドが助け、ブレイクを捕まえる。キッドはブレイクがしていたペンダントが強盗団がしていたものと同じであることをライトニングに伝えると、ライトニングはブレイクを留置場ではなく、町外れの洞窟に隠すことに。

 ロッドはジョニーや手下に命令し、ブレイクを助け出すために留置場を爆破させる。しかしそこにブレイクはいなかった。オパルはブレイクの居場所を探るために、兄ロッドが誘拐された芝居をし、ライトニングを家に呼び騙す。誘拐犯からの手紙でロッドとブレイクの交換を要求してくる。キッドがオパルの家に駆けつけるが、ライトニングはキッドがオパルを狙っていると勘違いしたライトニングは彼をクビにする。それを聞いたキッドはライトニングが怪我をしているのに一人で大丈夫なのかと話す。彼はライトニングが指のマッサージをしているのを目撃していた。オパルはそれを盗み聞きする。

 ライトニングのところへジョニーの使いがやって来て、彼が指の怪我をしていることを知り決闘を申し込んでいると話す。ライトニングはキッドがその情報をバラしたと勘違いする。ライトニングはジョニーとの決闘の場へ。キッドがライトニングを撃ち、代わりにジョニーとの決闘をし倒す。ジョニーは死の寸前、ダン殺害やライトニングの怪我の情報をオパルから得たことを話す。

 真相を知ったライトニングはオパルに詰め寄り、全てを白状させる。そこへキッドがやって来て、ダスティがブレイクを連れ強盗団のアジトへ向かったと話す。ライトニングはオパルに強盗団のアジトへ案内させる。ライトニングたちは民警団とともにアジトへ。そこで撃ち合いとなり、ライトニングはロッドを倒す。ダスティを助け出したキッドは彼女と結ばれる。

 

 最初にタイトルを見た時に西部劇のコメディシリーズのひとつかと思ったが、全く違った(笑 80分を切る短い作品だが、なかなか面白かった。

 一番のポイントは、主人公である保安官ライトニングが、終始惚れた女に騙され続けていること。それを観客は知っているという、倒叙トリックが用いられている。西部劇で、しかも1952年の作品で、この手法は相当斬新だったのではないだろうか。

 保安官目線で言えば、強盗団を追う一方で、友人ダンが何者か殺され、捕まえた強盗団の一人ブレイクと人質と交換を迫られる、と次々と事件が起きる。観客目線で言えば、テンポが良く、それでいて保安官が騙されていることになかなか気づかなく、いつ気づくのだろうという気持ち。

 結果的にラスト10分で保安官が騙されたいたことに気づき、西部劇らしくラストの銃撃戦となる。主人公、彼に恋する若い娘、その娘に恋する早撃ちの若者、という西部劇にありがちな三角関係の恋も描かれるが、倒叙トリックの方が面白く、恋の行方は脇に追いやられている感じだが、それで十分。

 

 短い尺にしてはなかなか面白い作品だと思ったら、監督がドンシーゲルだった。このブログでも書いた、「燃える平原児」「突撃隊」「真昼の死闘」など、ちょっとひねったストーリーが面白い作品を作った人で、何より「ダーティハリー」の監督。納得がいった。