レベッカ

●341 レベッカ 1940

 冒頭マンダレー屋敷への道への回想から始まる。

 回想の主は海岸沿いの崖で下を見ていた男を見て心配になり声をかけるが、男からはなんでもないと言われてしまう。彼女はホッパー夫人の付添人としてホテルに滞在、崖に立っていたウィンター氏と知り合う。ホッパー夫人が病気で休んでいる間に彼女はウィンターとデートを重ねる。彼はマキシムと呼んでくれと話す。

 数日後、ホッパー夫人の娘が婚約したとの知らせが入り急遽ニューヨークへ帰ることに。彼女がマキシムにそれを伝えるとマキシムは彼女に結婚を申し込む。そして二人はマンダレー屋敷へ。

 屋敷では使用人が大勢で二人を出迎える。その中でもダンバース夫人はマキシムの前妻とともに屋敷にやってきた古株のハウスキーパーだった。ダンバースはマキシム夫人に屋敷の西館は今は使っていないと話す。

 マキシムが財産管理人のフランクと出かける。残されたマキシム夫人は前妻がそうしていたという居間で時間で過ごす。その際机の上にあった置き物を壊してしまう。ダンバース夫人に見つからないようにそれを机の引き出しに隠す。

 昼になりマキシムの姉夫婦がやって来る。マキシム夫人は義姉と話し少しホッとする。彼女たちが帰ったのち、夫人はマキシムと海岸を散歩する。その際連れていた犬ジャスパーが駆け出して行き、それを追った彼女は小屋を発見する。そこで怪しい男と遭遇、小屋の中には前妻の名前の入ったものがあった。マキシムは彼女に怒るが、彼女は謝り仲直りする。

 夫人はフランクに前妻のことを色々と尋ねる。彼女は綺麗な人だったとフランクは答える。夫人がマキシムと一緒に新婚旅行のフィルムを見ている時に、居間の置き物が亡くなったことで騒ぎになる。夫人はマキシムに正直に告白する。その後夫人は自分に自信がないことを打ち明けるが、マキシムはまた怒ってしまう。

 マキシムは仕事でロンドンへ行く。夫人は使われていないはずの西館に誰かがいるのを見かけ見に行く。そこで会ったのは前妻の従兄弟ジャックだった。彼が帰った後、ダンバースに前妻の部屋を見せてもらうことに。そこで前妻とジャックがやり取りをした仮装舞踏会の招待状を見つける。

 夫人は帰ってきたマキシムに仮装舞踏会を開くことを提案する。夫人は舞踏会での自分の衣装を考えていた。ダンバースが壁に掲げられた肖像画を参考にするといいと話し、夫人はその案に乗ることに。

 舞踏会当日、肖像画の姿になった夫人がマキシムの前に現れるとマキシムは怒りをあらわにする。不思議に思った夫人はダンバースの元へ。彼女はそれが前妻の格好だったことを暴露し、夫人に対し、前妻のことを話し、あなたは邪魔、窓から落ちて死になさいと話す。その時海から爆発音が聞こえる。難破船の救助信号だった。家の者は皆海岸に救助に向かう。

 夫人も海岸へ行くが、マキシムが見つからなかった。難破船の探索時に前妻の乗っていた船も見つかったとの知らせが入る。マキシムは海岸の小屋にいた。そこでマキシムは夫人に驚くべきことを告白する。前妻はマキシムが殴り殺した、前妻はジャックと出来ており、妊娠したがそれもジャックの子供だということ、マキシムは前妻の遺体を船に乗せ海岸で沈めたのだった。1年前に見つかったという前妻の死体は別人のものだったが、マキシムは嘘の証言をしていたのだった。

 審問会が開かれる。そこで船大工が船の海水弁が開いていたこと、壁に内側から開けられた穴が空いていたことを証言する。マキシムは前妻が自殺する可能性があったかを審問されるがその時夫人が倒れ審問は昼食休憩に入る。二人の元へジャックがやってきて、当日の手紙を証拠に前妻が自殺するはずがないと言い出す。警察官も呼び話し合いを始める。ジャックはダンバースも呼ぶ。前妻が自殺したかどうかが焦点になる。事故当日前妻が診察を受けた医師の名前をダンバースが証言する。皆でその医師の元へ行く。医師は前妻は妊娠しておらず、ガンで余命いくばくもなかったと話す。

 これでマキシムの殺しの疑いは晴れる。ジャックはダンバースに事実を電話で告げる。マキシムはフランクとともに家路を急ぐ。マンダレー屋敷はダンバースが放火していた。燃え盛る屋敷の中、西館にダンバースがいた。

 

 有名な作品だが初見。1940年の古い映画だが、いやぁ面白かった。

 冒頭からの急な結婚、豪華な屋敷に不慣れな新妻、という前半。不気味なハウスキーパー、怪しげな西館に突然現れる従兄弟、という中盤。主役の夫人がピンチに陥るが、難破船の登場で話が急展開する終盤、と完璧なストーリー展開。

 ヒッチコックの映画の「怖さ」はやはり「人間の持つ怖さ」にある。このダンバースというハウスキーパーの怖いこと怖いこと。難破船登場直前の夫人に対する囁きが本当に怖い。

 画面には一度も登場することがなかったタイトルの前妻「レベッカ」も、マキシムの告白を聞く限り、かなり怖い。ヒッチコックは女性の怖さをよく知っていたのか(笑

 今ではこの程度のどんでん返しは、映画や小説では当たり前になっているが、今から80年前ならば、この映画のどんでん返しは相当驚かれただろうと想像できる。それはアカデミー賞取るでしょう、って感じ。

 海岸の小屋でマキシムが告白する際のカメラワーク、まるでそこにレベッカがいるかのようなカメラの移動がスゴい。古さを感じさせない。

 このブログを始めてヒッチコックの映画は何本か観ているが、これが間違いなくベストだな。

 

勝利への脱出

●340 勝利への脱出 1981

 ドイツの捕虜収容所にシュタイナー少佐が赤十字の視察とともにやってくる。捕虜たちがサッカーに興じているんを見たシュタイナーはサッカーの指導をしていたコルビーに声をかけ、ドイツ軍対捕虜チームでのサッカーの試合をしないかと提案する。コルビーは断ろうとするが、用具を揃えることや食事を改善することなどを交換条件として試合を受けることに。

 一方捕虜の中の幹部たちは脱走計画を立てていた。ハッチはドイツ軍の監視役の中に注意力が足りないものがいることを見抜き、脱走を計画する。

 コルビーはチームの主力となる捕虜を選抜して行く。ハッチもチームに加わろうとするが、コルビーは拒否する。

 サッカーの試合はシュタイナーの思惑を越え、ドイツ軍のプロパガンダに利用されることになり、ドイツ軍対たの収容所の捕虜も含めた連合軍チームとして、パリのスタジアムで開催されることに。コルビーは東欧の名選手たちも収容所に呼び寄せチームを作る。

 ハッチは自分が見つけた甘い監視役のドイツ兵がサッカーチームの監視役となったため脱走がしにくくなったことから、チームへの参加をコルビーに訴え認められる。彼はトレーナーとしてチームに参加することに。

 捕虜の幹部たちはサッカーの試合を利用しチーム全員を脱走させる計画を思いつく。そのためにはパリのレジスタンスと連絡を取る必要が出て来たため、ハッチに以前思いついた脱走計画を実行させる。ハッチは脱走に成功、レジスタンスたちに計画を伝える。スタジアムの地下の下水道を使えば脱走が可能だと彼らは答え、そのことを告げるためにハッチに収容所へ戻ることを要望する。ハッチはわざと捕まり収容所へ。

 ハッチは独房に入れられたため連絡が取れなかった。コルビーはハッチをキーパーとして試合に連れていきたいと要望、キーパー役が骨折したためと嘘をつく。

 そしてパリでの試合。審判も味方につけたドイツ軍は前半4点を入れる。連合軍は前半終了間際に1点を返し4-1に。その代償にペレは負傷、10人での戦いとなる。そしてハーフタイム。レジスタンスたちの協力で選手控え室の浴槽に脱出口が開けられる。しかし選手たちは試合に勝てると言い出し、ハーフタイムでの脱走を取りやめ、後半に臨む。そして連合軍の猛攻。スコアは4-3に。その後同点ゴールを決めたように見えたが

ゴールは無効と判定される。ここでペレが試合に復帰。見事なオーバーヘッドシュートで同点に。しかしその後ペナルティを取られ、ドイツ軍のPKに。これをキーパーのハッチが止めたことで観客の興奮は最高潮に達し、グランドに観客がなだれ込む。そしてその騒ぎに乗じて選手たちは観客に混じり、堂々と脱走をして行く。

 

 昔見た記憶が残っていた。ラストを覚えていたのとスタローンとサッカーという不思議な組み合わせという印象だった。しかし今回数十年ぶりに見返してみると意外に面白かった。

 有名な「大脱走」を思わせる収容所内での会話や行動も面白かったが、やはり見せ場はラスト30分のサッカーの試合。昔見たときはまだJリーグのかけらもない頃だったので、映画内でのサッカーの試合の興奮ぶりがよくわからなかったが、今は当然違う。サッカーが国の威信をかけたスポーツになり得ることは十分理解できるので、観客がフランス国歌を歌い出すシーンはちょっとした感動モノだった。「カサブランカ」の酒場でのフランス国歌斉唱のシーンを思い出した。

 映画に本物のプロサッカー選手を使うこの方法は現在でも十分通用するのでは?と思う。残念ながらこの映画のサッカー選手はペレしか知らない(笑 今ならばそれなりにわかるので、現代版の「勝利への脱出」を作って欲しいなぁ。

 

白い恐怖

●339 白い恐怖 1945

 コンスタンス医師はグリーンマナー精神科医院で働いている。医院ではマーチソン院長は病気のため引退、新しい院長エドワーズが来ることに。

 コンスタンスはエドワーズと夕食の場で初対面を果たすが、その際テーブルクロスに描いた模様を見てエドワーズの表情が一変する。

 翌日コンスタンスの患者ガームズがエドワーズに話をしている所へコンスタンスは呼ばれる。そこに電話がかかるが、エドワーズは知らない女性からだと話す。エドワーズはコンスタンスをランチに誘う。その夜寝付けないコンスタンスは図書室へ行き、エドワーズの著書を探す。そして院長室の電気が灯っていることに気づき部屋に入る。そこで二人はお互いに愛し合っていることを告白するが、コンスタンスの着ていたローブの模様を見てエドワーズは発作を起こす。その時ガームズが喉を切ったと知らせが入り、二人は手術室へ。しかしそこでエドワーズはまたも発作を起こしてしまう。

 コンスタンスはエドワーズを看病する。しかし彼からもらったメモと著書にあったサインの筆跡が異なることに気づく。彼女はエドワーズにあなたは誰なのかと問い詰める。エドワーズは自分がエドワーズを殺したと話すが記憶喪失になっており自分の名前もこれまでのことも思い出せなかった。コンスタンスは彼に思い出すように話す。彼はホテルでコートにJBのイニシャルが入ったシガレットケースを見つけたと話す。そしてまた明日話をすることにし別れる。

 JBはコンスタンスにNYエンパイアステートホテルにいる、とメモを残し医院を去っていく。翌日エドワーズの助手が医院にやって来て男が本人ではないことが判明、警察も動き出す。コンスタンスはNYへ行くことに。

 彼女はホテルでJBと会うことに成功するが、新聞に彼女の写真が掲載されており、二人はホテルから逃げる。駅に行き、NYから列車に乗ったはずのJBに、切符売り場に立たせて行き先を思い出させる。そしてローマの地名がJBの口から発せられる。しかし警官に気づかれたため、ローマ行きを止め、ロチェスターのブルロフ医師のところへ行くことに。ブルロフはコンスタンスの恩師だった。

 ブルロフの家に着くと先客として警官が来ていたが二人は難を逃れる。二人はブルロフの家に泊まることに。その夜洗面所で白いものを見たJBは発作を起こしカミソリを持って階下のブルロフの元へ。しかしブルロフの機転でJBに睡眠薬を飲ませ寝かしつける。翌日ブルロフはJBを警察に届けることを提案するが、コンスタンスは治療をしたいと望み、数日間だけ治療を行なってみることに。

 JBに夢の話をさせる。そこからJBは少しずつ記憶を取り戻し、ガブリエル・バレーの地名を思い出す。二人はそこへ行きスキーをする。そしてJBは子供の頃の事故を思い出し、それをきっかけに記憶が蘇る。エドワーズはスキーをしていて事故で死んだと警察にも話し警察が遺体確認をするが、遺体は拳銃で撃たれていた。JBは殺人容疑で逮捕されることに。

 コンスタンスは医院へ戻る。そして新院長が来ないため医院に残ることになったマーチソンと話すが、彼の一言から事件の全貌に気づく。そしてマーチソンと対峙する。

 

 子供の頃に観た記憶があったが、覚えていたのは、JBの夢のシーンだけだった。しかし今回映画冒頭の字幕に

  DREAM SEQUENCE BASED ON    DESIGNS BY SALVADOR DALI

とあってビックリ。ダリが協力していたのか。言われてみれば夢の中の犯人が持っていた車輪のゆがみ方はまさにダリの時計だもんなぁ。

 話は精神分析医がまだ世に知られていなかったと思われる時代、精神分析で人の悩みを解決する、というもの。そこに殺人事件と主役二人の恋物語が重なって行く。ヒッチコック精神障害によほど興味を持っていたんだろうなぁ。夢分析で全てが解決して行くのは現実的ではないけど、映画的にはアリ、だなと思わせる。普通に映画としてもヒッチコックならではのカメラワークやちょっとした笑いのシーンもあり、まずまずかな。ヒッチッコック晩年の作品のつまらなさに比べれば十分楽しめる。

 でも見所はやっぱり主役の二人。「カサブランカ」のバーグマンと「ローマの休日」のグレゴリーだもの。そりゃ恋に落ちるよね、開始20分で(笑

 

落語歳時記 畠山健二

●落語歳時記 畠山健二

 「本所おけら長屋」があまりに面白いので、その作者が「おけら長屋」を書く5年前に出版した本を読んでみた。

 落語の噺を題材に、それに出てくる江戸の歴史や文化や生活、言葉の説明などが丁寧にされていく。もちろんそこには畠山氏の意見や考えも反映されながら。

 落語全般に詳しいのもスゴいと思うが、江戸時代のことも本当によくご存知のようで。そりゃそうだよなぁ。でなくちゃおけら長屋の話が書けないもんなぁ。しかし「ここで会ったが百年目」の後に続く言葉があるのは知らなかった。

 

 

落語歳時記

落語歳時記

 

 

本所おけら長屋 九 畠山健二

●本所おけら長屋 九 畠山健二

 「まいわし」

 松吉がお店の連中と酒を飲んでいた居酒屋で黒石藩の藩士木下、大谷、高橋、赤岩の4人が酒を飲んでいた。そこへ延山藩の藩士たちが酒を飲みに来る。延山藩の藩士たちが黒石藩の藩士たちをからかい、喧嘩になる。斬り合いになろうとしたところ、赤岩が延山藩に対し頭を下げ、事は収まるが黒石藩の3人は気が収まらなかった。

 数日後、松吉は赤岩を見かけ、万造とともに酒に誘う。話を聞いた二人は赤岩の言葉に感心し、万造はいつもは喧嘩相手になる栄太郎に頭を下げる。

 話を聞いた島田は黒石藩の江戸藩邸に誘われ、その場で藩主高宗に全ての話をする。しかし高宗は延山藩藩主とつまらない事で言い合いになり、藩士同士の剣術勝負を受けたばかりだった。高宗は誰を勝負に出せば良いか島田に尋ねる。島田は赤岩の名を上げる。

 赤岩が島田を訪ねて来る。島田は赤岩が剣術勝負に乗り気でない理由を問う。赤岩の兄は藩内でのいざこざから同藩の仲間を斬り殺し切腹をしていた。その事を知った父から決して刀を抜いてはならぬ、と言われていたのだった。

 万松島田が飲む居酒屋に赤岩がやって来る。そこへ高宗もやってきて一緒に飲むことに。高宗が藩主と知らない万松は、黒石藩の藩主の悪口を言いまくる。そこへ黒石藩の3人がやって来る。3人は剣術勝負に出る赤岩を怪我させようと企んでいた。しかし高宗が3人に声をかけその場を収める。

 後日、島田は黒石藩家老工藤から高宗が延山藩藩主に謝りを入れ剣術勝負を取りやめたことを聞く。

 「おてだま」

 おけら長屋の卵之吉お千代夫婦が引越しをすることに。娘お梅は久蔵と暮らし始めており、卵之吉の兄と実家の両親の面倒をみることになったためだった。その空いた部屋にお浅という女が引っ越して来る。物静かで長屋の住人とあまり付き合いをしない女だった。しかしそのお浅がひと月ほどで長屋から姿を消してしまった。

 10日ほどしてお染がお浅の噂を仕事先で聞いて来る。別の長屋で男たちからお金を騙しとりやはり姿を消していたのだった。話を聞いた万松は大家徳兵衛や隠居の与兵衛が同じように騙されていたら面白いと騒ぎ出す。

 島田とお染は大谷の家に行く。そこには与兵衛もいた。島田たちはお染が聞いてきたお浅の噂話を二人にする。すると二人はお浅にお金を騙し取られていた。

 「すがたみ」

 三祐で飲んでいた万松の元へ薬種問屋木田屋の手代孝吉が現れる。そして柳橋の料理茶屋仲膳で大番頭勘兵衛の相談に乗ってくれないかと誘う。二人は茶屋へ。

 勘兵衛は木田屋の跡取り息子でお満の兄秀太郎に縁談話が持ち上がったが、秀太郎は乗り気ではなく、その理由が吉原の花魁、金華楼の紫月花魁に入れあげているためだと話す。そして万松に何とか秀太郎が紫月花魁を諦めるようにしてくれないかと頼む。

 万松は紫月のことを調べるが直接会える手段がなかった。そこで紫月の髪結い清吉に頼み、秀太郎の妹お満を弟子ということにして、紫月に会うことを画策する。

 お満は紫月に会い事情を説明するが、これまで厳しい人生を生きてきた紫月はお満の申し出を断る。一方、万造は大家徳兵衛の家に遊びに来ていた木田屋宗右衛門から頼み事をされる。宗右衛門は大番頭の様子がおかしく、店の金に手をつけているようだ、しかし大番頭は信頼できる男のため、息子秀太郎が遊びにお金を使っているのでは、と話し、そのあたりを調べて欲しいと万造に頼む。

 お満はもう一度紫月に会いに行く。そして紫月が髪結い清吉に惚れていることに気づく。紫月は店の女将から身売りの話を持ちかけられるが、断っていた。

 お満は全てを父親に白状したと万造に告げる。小遣い稼ぎが出来なくなった万造は嘆くが、父親の話を聞いて納得する。そして紫月花魁の顔が見たいと言い出す。花魁道中を二人は見に行く。その場で紫月に袖にされた客が紫月を刺そうとするが、清吉が紫月をかばい刺される。紫月と清吉は幼馴染だったのだった。

 後日、長屋の皆は三祐で酒を飲みながら紫月のことを話す。

 「かんざし」

  万松がいつも通り三祐で飲んでいるところへお染がやってくる。万松の話題は八五郎の妻お里が2両を拾いその礼をもらったという話だった。お染はそれを、お染の裁縫を手伝いに来ているお糸〜文七と一緒になった〜が身籠ったという話と勘違いする。身籠ったというのは元気のないお糸を見たお染の推測でだったが、万松は大騒ぎ。あっという間に長屋中に知れ渡り、お里にも話が行ってしまう。しかし全ては勘違い。万松お染は八五郎に謝る。だが島田はではお糸が元気がなかったのはなぜか、と訝しがる。

 お染はお糸に事情を聞く。お糸が元気がなかったのは文七の仕事が原因だった。文七は御蔵前片町の金物問屋大和屋から仕事を引き受けたが、仕事が終わっても大和屋はその出来に難癖をつけ、代金を支払おうとはしなかった。文七が取って来た仕事のため、代金をもらえなければ関係する仲間たちに手間賃を払えない。さらに文七のところにいる若い二人の職人がこの件が元で姿を見せなくなっていたのだった。

 話を聞いた万松は姿を消した二人、長次と半吉を呼び出し、説教をし張り倒す。そこへ八五郎がやって来て万松を止め、長次と半吉には金を渡しその場を去らせる。

 文七の家へ長次と半吉がやって来て頭をさげる。文七は二人を許す。

 「うらかた」

 道場にいる島田をお染が訪ねてくる。一緒に来たのは長屋から姿を消したお浅だった。島田とお染はお浅から事情を聞く。お浅の実家は店をしていたが、母は早くに亡くなり、父は後添えにお康という若い女性を迎えた。3年前にその父も亡くなったが、お康は父が亡くなる前から二番番頭の源八と不義密通を重ねていて、父が亡くなった後二人で店を乗っ取り、お浅は一番番頭の仙蔵と店を追い出されたのだった。しかも二人ともに悪い噂を流されており、二人は誰の助けも得られないままなんとか暮らしていたが、1年前に仙蔵が倒れ養生所に入ることに。その金を稼ぐために、お浅は長屋の年寄りを騙しお金を稼いでいたのだった。しかしその仙蔵も亡くなったため、これまで騙した人たちにお金を返し謝りたい、というのがお浅の話だった。

 島田は実家の店の名前を聞く。それは 御蔵前片町の金物問屋大和屋だった。島田は万松にも事情を説明し、お浅に騙された徳兵衛と与兵衛には自分が話をすることに。

 万松が大和屋の様子を見に行くと、そこには長次と半吉がいた。二人は代金支払いの催促をするが、お康は全く相手にしなかった。万松は二人を連れ出す。そしてその場にいた手代正蔵のことを気に留める。島田とお染は正蔵を仲間に引き入れる。

 島田は火付盗賊改方与力根本とともに大和屋へ。お浅の父親殺しからこれまでの悪事を暴きお康を脅す。そこへ島田が、このままだと店が潰れ奉公人が路頭に迷うことになるので、店の身代はお浅に譲り、支払いが滞っているものは全て払い、お康と源八は江戸払いで、ということを提案し、お康たちも了承する。

 文七はお糸が欲しがっていた簪を買ってくる。そしておけら長屋の住人たちが今回のことで動いてくれたことを話す。

 

 シリーズ第9作目。正直前作第8作は、少し肩透かしを食った感のある話もあったが、今回は新しい試みもあり、十分満足できるものだった。

 「まいわし」はおなじみ黒石藩がらみの話。黒石藩藩士のいざこざ話かと思いきや、藩主高宗が主人公と言える話に展開。長屋でもおなじみの高宗が男をあげる。

 「すがたみ」は落語によくある大店の放蕩息子話と思いきや…。万造とお満も巻き込んでの騒動となる。しかし見せ場は、紫月花魁の言葉。「居眠り磐音」シリーズで磐音の幼馴染であり婚約者だった奈緒も花魁になるが、花魁の奈緒はあまり登場せず、気持ちを語ることもほぼなかった。しかしこの紫月花魁はお満に本音をぶちまける。身売りされた娘の気持ちはこれが本当なんだろうと思わせる激しい言葉。しかも紫月花魁の話はあまりに悲しい結末。「すがたみ」というタイトルが泣かせる。

 「おてだま」「かんざし」「うらかた」は見事な3部作。「おてだま」と「かんざし」のラストは、第8作で島田以外のメンバーで事件解決をしたのに続き、おけら長屋も全ての事件を解決して話が終わるわけではない、という新しい展開をみせるのか、と思ったが、本作のラストの「うらかた」で2つの事件が一気に解決する。いやぁこの3部作には見事にやられた!という感じがする。

 1つだけ残念なのは、今回も居酒屋三祐がよく出てくるが、お栄と松吉の仲はなんでもなかったようで…。これだけがちょっと残念。

 

汚名

●338 汚名 1946

 1946年4月マイアミの地方裁判所でヒューバーマンが国家反逆罪で有罪判決を受ける。彼の娘アリシアは友人たちと自宅でパーティを開く。酒を飲みすぎた彼女はパーティに来ていたデブリンとドライブに出かける。彼女は飲酒運転をし警官に捕まりそうになるが、デブリンが警官を追い払う。

 家に戻ったアリシアデブリンは父の汚名を晴らすため、父が仕事をしていた相手の仕事内容を探る仕事を持ちかける。最初は断るアリシアだったが、結局依頼を受託、二人は一緒にブラジルへ。二人は恋に落ちていた。

 デブリンの上司はアリシアにセバスチャンに近づく任務を与えようとする。セバスチャンは昔アリシアに惚れていたためだった。デブリンは断ろうとするが、上司にごり押しされる。デブリンはアリシアに任務内容を話す。アリシアデブリンに止めてもらいたがったが、デブリンは自分で決めろと話し、あり氏は任務を引き受けることに。

 アリシアはセバスチャンに接触、彼の家に招待されることに。アリシアは得た情報をデブリンに伝えるが、二人の接触を快く思わないセバスチャンは、アリシアに結婚を申し込む。アリシアデブリンとその上司に相談するが、デブリンは何も言わなかったためアリシアはセバスチャンと結婚することに。

 アリシアはセバスチャンの家の中を探る。唯一セバスチャンが鍵を管理するワインセラーを怪しいと睨んだアリシアデブリンにその報告をする。デブリンは結婚お披露目のパーティを開くようにアリシアに提案、パーティに招待してもらえば自分がワインセラーを探ると話す。アリシアはセバスチャンが持つ鍵束からワインセラーの鍵を盗む。

 パーティに来たデブリンはアリシアから鍵を受け取りワインセラーへ。調査中誤ってワインボトルを割ってしまうが、中から砂が出て来たためその砂を回収、調査に出すことに。パーティの最中にワインセラーに行こうとしたセバスチャンは鍵束からワインセラーの鍵がなくなっていることに気づく。パーティの夜、セバスチャンは鍵束を机に置いて眠る。翌朝ワインセラーの鍵が鍵束に戻っていることを見たセバスチャンは、ワインセラーで割れたボトルを発見、アリシアの本当の目的に気づく。

 セバスチャンは仲間にバレたら自分が殺されると母親に相談、母親は時間をかけてアリシアを毒殺することを提案する。コーヒーに毒を入れられアリシアは体調を崩していく。デブリンとの定期報告の時も様子がおかしかったがアリシアは二日酔いだとごまかす。アリシアは客がいるときに自分のコーヒーを間違えて客が飲もうとした際の母親とセバスチャンの慌てぶりを見て、自分が毒を飲まされていることに気づくが、倒れて寝込んでしまう。

 定期報告にアリシアが姿を見せなかったため、デブリンは心配し、セバスチャンの家に乗り込む。そして隙を見てアリシアの部屋へ行き、全てを聞く。仲間と話し込んでいたセバスチャンの弱みを知ったデブリンは強引にアリシアを家から連れ出す。

 

 久しぶりにヒッチコック作品。しかもバーグマン。高校生の時にカサブランカを見て以来、バーグマンのファンになり彼女の作品はだいたい観たつもりでいたが、こんな有名な作品を見逃していた。今回が初見。過去にもし観ていたら、カサブランカの警察署長がセバスチャンであることに気づかないはずがない(笑

 ヒッチコック作品は心理的な怖さがウリで、「こんなことしてたら見つかっちゃうのに」とか「それ持ってたらバレちゃう」とかで、ドキドキすることが多いが、この映画はそんなドキドキよりもバーグマンとグラントのロマンスの方が気になって仕方がなかった(笑 というか左手に握った鍵をごまかすキスシーンやワインセラーのシーンは、他の作品に比べるとドキドキ感はあまりなく、上手いこと魅せるなぁと感心してしまった感じ。

 全てがバレた後も、問い詰められるのではなく、じわじわと毒殺されていく、というのもあまり怖さを感じなかった理由かも。

 しかしこの映画のバーグマンもキレイ。冒頭の酔っ払いのシーンも良く、お腹を出したファッションにもちょっとビックリ。やっぱりバーグマンは良いなぁ。

 

 

汚名(字幕版)

汚名(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 
汚名 [DVD]

汚名 [DVD]

  • 発売日: 2011/02/14
  • メディア: DVD
 

 

八十日間世界一周

●337 八十日間世界一周 1956

 冒頭ベルヌが書いた「月世界旅行」の映画が紹介される。そして1872年へ。

 パスパルトゥはフォッグの執事として採用される。そのフォッグは改革クラブで友人の銀行家が強盗に入られたことを話していた際、世界一周を80日間でできると話し、友人たちと成功するか否かで賭けをすることに。フォッグはパスパルトゥを連れ、早速世界一周の旅に出る。

 乗ろうとした鉄道が雪のため動かないため、気球に乗る。そしてスペインに着く。そこから金持ちの高速艇を譲り受けるため交渉するが、そのためには執事パスパルトゥが闘牛をすることに。パスパルトゥは無事闘牛を終え、二人はスエズへ。そこで現地の刑事がフォッグをイギリスの銀行強盗だと考え、あとをつけることに。

 ボンベイで鉄道に乗るが、途中の線路が未完成のためジャングルを横断することに。途中宗教上の理由で生贄にされるアウダ姫を助ける。彼女の知り合いがいる香港に行くが、知り合いは外国へ行っていたため、アウダ姫も旅に同行することに。刑事はパスパルトゥを騙し酒を飲ませ酔い潰す。しかし旅券を持っていたパスパルトゥは横浜行きの船に乗ることができた。フォッグと姫は別便で横浜へ。フォッグは曲芸の見世物小屋でパスパルトゥを見つけ合流する。

 3人はアメリカへ。鉄道に乗っていると先住民に襲われる。パスパルトゥは客車から出て応戦するが、鉄道から落ち先住民に捕まってしまう。フォッグは予定を変更しパスパルトゥを助けに行く。鉄道に乗り遅れたフォッグたちだが、トロッコに乗り遅れを取り戻す。最後は船でイギリスへ向かう。

 しかしイギリスについたところで刑事に銀行強盗の容疑で逮捕され監禁されてしまう。真犯人が捕まったことで容疑は晴れるが、賭けの時刻には間に合わないことに。翌日落ち込むフォッグだったが、アウダ姫と結婚をすることに。牧師を呼びに行ったパスパルトゥが今日が賭けの期限当日だと気づく。彼らは日付変更線を跨いだため、一日勘違いをしていた。フォッグはクラブへ行く。

 

 八十日間世界一周と言えば、私にとっては子供の頃から圧倒的にこちら「長靴をはいた猫 80日間世界一周」なのだが。オリジナルは初めて観た。

 約3時間の映画だったが、場面転換が多くあまり飽きずに見ることができた。世界各地の生活、文化、美しい風景を見ることができたからだろう。日本も出てくるが、日本人としたら首をかしげることが多く、世界の他の国のことも話半分に見ておいた方が良いのだろうが(笑

 日付変更線をまたぐ、というのはなかなか気づかない上手いトリックだと思う。

 映画のラストの字幕で、豪華な俳優陣がカメオ出演しているのを知った。wikiで見てビックリ。確かに映画の途中途中で、意味ありげに画面に俳優が映るシーンが多かったことには気づいていたが。主演?のシャーリー・マクレーンも実にキレイだった。今まで観た彼女の映画の中で一番キレイだったように思う。

 最後に疑問を1つ。映画冒頭でベルヌのことを説明していたあの人は誰だったんだろう?