暗くなるまで待って

●410 暗くなるまで待って 1967

 若い女性リサは麻薬を仕込んだ人形を持ってケネディ空港へ降り立つ。しかしロートが待ち伏せしているのに気づき、人形を偶然知り合った男サムに渡す。

 詐欺師コンビのマイクとかカリーノは詐欺仲間であるリサからの連絡で受け取った住所の家を訪ねる。ドアに留守にしているので中に入ってというリサからのメモがあり、二人は家の中へ。家の中に人はおらず二人は家の中を調べて回る。タイプライターを打った痕跡があり、リサはタイプできないはずだと気付いた二人は家から逃げようとするが、その時家に男が一人入ってくる。男はロートだと名乗り、二人のことや二人とリサが詐欺を働いていた仲間であること、カリーノは元刑事であること、二人が警察に捕まり刑務所暮らしをして出所したところであること、などを知っていた。

 ロートは二人に人形を探して欲しいと話す。マイクはそれが麻薬がらみであることに気づく。ロートはリサが麻薬を隠した人形をサム・ヘンドリックスに預けたこと、この家がヘンドリックスの家であること、この家の中を探したが人形が見つからないこと、を告げる。マイクは部屋の奥のクローゼットが開かないことを不審に思い、ロートが鍵を持っているはずだと主張し、鍵を奪いクローゼットを開ける。そこにはリサの死体があった。マイクとカリーノは逃げようとするが、ロートは家の中に指紋が多く残っているから逃げられないことを告げる。そして協力すれば問題ないと話し、リサの死体を他の場所に移そうとする。

 その時この家の住人でサムの妻スージーが帰ってくる。3人は驚き隠れるが、スージーは盲目のため3人の存在に気づかなかった。スージーは夫で写真家のサムに電話し、彼の仕事が遅れると聞き、コーヒーショップで待っていると告げ、家から出て行く。3人はリサの死体を片付ける。

 翌日スージーはサムに近所で見つかった女性(リサ)の死体の話をする。サムはその日夜遅くまで仕事だった。二人はサムが預かった人形がなくなったことを話す。サムはアパートの2階に住む少女グロリアに探すのを手伝ってもらえと話すが、スージーはグロリアがサムに惚れていることを理由にそれを断る。サムは仕事に出かけて行く。

 家をマイクが訪ねる。その時家の中ではサムが消したタバコの火が燃え上がりスージーがパニックを起こしていた。マイクはサムの友人だと話し家の中に入り、タバコの火を消す。マイクはスージーが盲目になった理由を聞く。そしてまた来ると言い残し去って行く。その際、マイクはグロリアと出会う。グロリアが家に来る。グロリアはスージーの代わりに買い物をする約束だったが、二人は些細なことでケンカをしてしまうが、仲直りする。グロリアが買い物に行こうと家を出た時に、サム・ハントを探して男がやって来る。彼は息子の嫁がサムと不倫をしていると騒ぎ家の中を探し回る。そしてサムとスージーの写真を持ち出し家彼出て行く。その直後マイクが忘れ物をしたと言って戻って来る。スージーがマイクに事情を説明すると、マイクは警察を呼んだ方が良いと言って外の公衆電話に電話する。カリーノが刑事としてやって来る。操作をしたふりをしながら家の中の指紋を消す。そこへ警察(ロート)から電話が入り、カリーノは近所で女性の死体が見つかったことなどを話し、スージーの夫サムを疑うような口調でスージーを詰問するが、マイクが庇いカリーノは去って行く。スージーはカリーノが家の中を拭いていたことに気付いていたことをマイクに話す。そこへハリー・ロートと名乗る男(ロート)がやって来る。先ほど来た老人は自分の父で、自分の妻がサム・ハントという写真家と不倫していると疑っている理由と、先日ロート夫人は父とケンカして家出をしたがその際音楽のなる人形を持って出て行ったこと、そして昨夜妻リシアナは外泊をしたことを話す。リシアナという名前は、昨日スージーがサムから聞いた仕事で待っている女性の名前だった。そこへ警察から電話がロートにかかりリシアナが死んだと告げられる。

 全ての話を信じてしまったスージーは、サムが人形を持ち帰って来た経緯をマイクに話す。マイクは話を整理し、ロートの父が家に入って来て何か持って行かなかったかを尋ね、スージーは結婚写真がなくなったことを話す。マイクは警察に電話しようとするが、話を信じているスージーはサムが警察に捕まることを恐れ、警察への通報は見合す。マイクは家の外にパトカーがいるとスージーに話す。

 マイクとスージーは家の中で人形を探し始めるが見つからない。スージーはおかしいことがあると言い出す。ロートの父と息子が同じ靴の足音がしたこと、ロートもカリーノ刑事も夕暮れなのにブラインドに触ったことをマイクに告げる。さらに電話がタイミング良くかかって来たこともおかしいと話す。マイクは飛行機の時間だと話し家から出て行こうとするが、スージーから連絡先を教えて欲しいと頼まれ外の公衆電話の番号を告げる。

 グロリアがそっとスージーの家へ入って来て、人形をソファの下に隠す。スージーはグロリアに家の外にパトカーが止まっているか尋ねるが、グロリアはワゴンしか止まっていないと答える。そしてカリーノ刑事が窓から覗く。その際グロリアは人形の音楽を鳴らしてしまう。人形はグロリアがちょっと借りていたのだった。スージーは人形を洗濯機の中に隠し、グロリアに家に戻って外の公衆電話からワゴンの男が電話をしたら、家の電話を2回鳴らすよう頼む。グロリアは助けが必要な時は水道管を鳴らしてと答え家に戻る。

 家にカリーノ刑事がやって来る。彼はサムとロート夫人のことを話し、人形のありかをスージーに尋ねるが彼女はとぼける。スージーは警察に電話をしようするが、カリーノが止め自分が公衆電話にかける。スージーはロートにこれ以上夫のことを侮辱すると訴えると話す。電話を切るとベルが2回鳴る。カリーノは令状を持って来ると家を出る。

 スージーはマイクに教えられた番号に連絡し、人形が見つかったと話す。しかしまた電話のベルが2回鳴る。全てに気づくスージー。警察に電話をしようとするが、マイクが家に来る。スージーは人形はサムのスタジオにあると嘘をつき、マイクを外へ。スージーはグロリアを呼ぶために水道管を叩く。そしてサムの乗るバスを待って事情を説明して欲しいと話す。グロリアは外へ。カリーノが見張っていたが難なく外出に成功する。

 スージーは警察に電話をしようとするが、電話線がロートにより切られていた。絶望した彼女だったが、家中の電灯の電球を外すか壊すかして暗闇に。暗室の照明だけをつけ、花瓶に定着液を仕込む。

 カリーノとロートは駐車場へ。マイクが一人家にやって来て、人形はなかったと話す。マイクは人形を出すようにスージーに言うが彼女は答えなかった。マイクは諦め、女性殺しにサムもスージーも関係ないし、我々3人とも無関係だと話すが、スージーはロートだけは違うことを考えていると恐れる。その頃駐車場ではロートがカリーノを車で轢き殺していた。マイクは何もなかったことにして家から去ろうとするが、玄関のドアでロートに刺し殺されてしまう。ロートはガソリンを巻きスージーを脅して人形のありかを聞き出そうとする。スージーは一瞬の隙をついて花瓶の定着液をロートにかけ、唯一の灯だった暗室の照明も壊す。真っ暗闇になるが、ロートは持っていたマッチをつけ反撃に出る。しかしスージーはガソリンのタンクを持ち、ガソリンをロートに向かって撒き散らし反撃、ロートからマッチとナイフを奪う。真っ暗闇の中、スージーは家から逃げようとするがドアはロートがチェーンで開かないように固定していた。ロートは冷蔵庫のドアを開け、その照明で視界を得る。そして人形を渡すように指示、スージーは人形を渡す。ロートが人形から麻薬を取り出している隙に台所の包丁を隠し持ったスージーはロートをそれで刺す。それでも家からは出られず叫んでいると怪我を負ったロートがスージーを襲おうとする。冷蔵庫のそばに逃げたスージーは扉でガードしつつ、冷蔵庫のコンセント抜いて暗闇を取り戻す。

 サムがパトカーで家に急行、そこで見たのは冷蔵庫のドアに隠れたスージーだった。

 

 子供の頃に観た記憶があるが、暗闇の中で悪いヤツと戦うオードリーの印象しかなかった。改めて観ると、舞台劇が原作であることがよくわかる。ほぼスージーの家の中だけで話が進むが、冒頭での説明不足でちょっと最初はストーリーに追いつけなかった。

 まず冒頭、2人組の詐欺師がロートに手玉に取られ、女性の死体の片付けから人形探しまで手伝わされるハメになるが、なぜ女性リサ=麻薬の運び屋であり、麻薬をガメようとした女性、の死体があの家にあったのかの説明がない。ただでさえ、謎めいた冒頭の3人の会話だったので、最初あの家がリサの家なのかと思ってしまっていた。なので、そこへオードリーが現れて、頭の中はハテナとなってしまった。飾ってある写真がリサではなく、オードリーのものなので余計に不思議に思った。

 ネットでの説明を読むと、人形を預けた男性サムをリサとロートが探し出し、あの家に行き、そこでロートがリサを殺したということのようなのだが。

 

 ただ、ここからの3人組の芝居〜オードリーに人形を渡させるための筋書き、は見事なもの。ロートの2役(父と息子)も見事だし、自分たちが殺した女性の名前と夫サムに待ちぼうけを食らわせる客の名前が一緒なのも見事。

 もちろん、盲目でありながら、3人組(オードリーからは、父、息子とマイク、刑事の4人組と思えていた?)を怪しいと睨むオードリーの観察力も見事。足音、ブラインドの音、グロリアに頼む公衆電話の件など。もちろん、盲目の女性を演じたオードリーも見事であることは間違いない。

 

 先日観た「麗しのサブリナ」や名作「ローマの休日」が、今風に言う「アイドル」としてのオードリーならば、本作はこれまた今風に言う「演技派」としてのオードリーといったところなのだろう。残念なのは、本作を最後に第一線からオードリーが去ってしまったことか。

 

刑事スタスキー&ハッチ 第1シリーズ #01 血ぬられたダイナマイトカー

●刑事スタスキー&ハッチ 第1シリーズ #01 血ぬられたダイナマイトカー

 

あらすじ

 老夫婦が老人ホームの待遇改善を求めるために車のトランクにダイナマイトを積み込み裁判所へ行こうとするが、コーヒーショップでその車を2人組に盗まれる。2人組は強盗を犯し、スタハチの捜査で老夫婦が持ち主と判明する。老夫婦と会ったスタハチはダイナマイトの件を告白される。爆破まで数時間と迫る中、スタハチの捜査は続く。

 

ストーリー

 日曜出勤しているスタハチ。コーヒーショップで2人組が老夫婦が運転してきたポンコツ車を盗む。しかし老夫婦へニー夫妻は入居する施設への不満を示すためにトランクにダイナマイトを積み、裁判所で爆発させる計画をしていた。車を盗まれた老夫婦は警察へ。2人組は酒屋で強盗を働く。

 その頃スタハチはミルティを捕まえていたが、無線で強盗事件が発生したことを聞き、強盗の車を目撃、追跡をする取り逃がしてしまう。2人組は知り合いのテッドの車工場へ行き車の塗装とナンバープレートを交換させる。

 スタハチは強盗された店で聞き込みをし、逃亡者の色、ナンバーを知る。車の持ち主を調べ、老夫婦のいる老人ホームへ。老夫婦は、盗まれた車にはダイナマイトは50本仕掛けており、5時に爆発すること、動機は老人ホームの待遇の酷さだったことを話す。ハッチはドビー主任に事情を説明、緊急手配をすることに。しかし車は見つからなかった。

 その頃、車工場では緑色に変わった車で2人組が街へ出かけていた。スタハチはヒョロ松に会いに行き、事件のことを話す。2人組は会社の事務所へ強盗に入り発泡事件を起こす。スタハチにヒョロ松からジャクソン高校へ行けと指示が入る。そこでバスケをしていた二人に話を聞こうとしてバスケの勝負をする。バスケで買ったスタハチは強盗をした2人組の情報を聞く。バー・モンティの馬券売り場の周りにいて、黒人はグレッグ、白人はウイルバー。二人は店に行き、奥の違法馬券売り場へ入る。責任者エドに店のことを見逃す代わりに、サリーというゴーゴーダンサーがウイルバーと同棲していたことを聞き出し、サリーが踊っている店も教えてもらう。2人組の復讐を恐れたエドはテッドにサリーの店へ刑事が行くことを伝える。

 店に行きサリーに会ったスタハチは、2人組の情報を聞く。居場所はこの店か馬券売り場か従兄弟のテッドの工場かと教えてもらう。その間に2人組はスタハチの車をパンクさせる。店を出たスタハチを2人組が待っていたが、パンクしていた車では追いかけられなかった。スタハチはドビー主任に連絡、2人の名前とデンバーに写真があるはずだと告げる。ドビー主任は老夫婦を保釈する。

 スタハチはデッドの工場へ。そこで車が塗り替えられたことに気づき、事情を説明しテッドから緑色とナンバーを聞き出す。スタハチはドビー主任に公開捜査にすることを提案する。

 2人組は駐車場に車を入れるが、係の人間がそれに気づき連絡を入れる。スタハチが現場に向かう。駐車場で車を見つけトランクを開けようとするが開かず、スタスキーが車を運転し駐車場を出て空き地へ車を乗り捨て爆発させる。

 2人組が駐車場へ戻って来たところをハッチが追いかけ銃撃戦となる。そこへ白バイに乗り戻ってきたスタスキーが援護し犯人を捕まえる。

 老人ホームにブラウン議員を招き、スタハチは食事をさせる。ヒョロ末も協力。議員は食事を食べその酷さに驚き、改善を約束する。スタハチは自腹で食事を老人たちに奢るが、老夫婦は自分の罪を考え食欲がなかった。しかしスタスキーが執行猶予ですみそうだと話すとヘニー夫人は食欲を取り戻す。

 

今回の登場人物

車にダイナマイトを積み込んだへニー夫妻

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老夫婦の車を盗んだ2人組の強盗 ウィルバーとグレッグ

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サリーの従兄弟で強盗2人組とも知り合いの自動車工のテッド

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強盗が入った酒屋で車のナンバーを覚えていた証言者

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メインの事件とは無関係だがスタハチに捕まるミルティ

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バー・モンティの馬券売り場の責任者エド(左)

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2人組の居場所を教えてくれた踊り子サリー

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今回のスタハチの会話

 老夫婦からダイナマイトの件を聞いた二人。ハッチは老夫婦を連行しようとして…

ハ「手錠かけろ」

ス「バカ言え」

ハ「それが規則だ」

ス「オラ知らね。規則には詳しくないんだ。お前がかけろ」

ハ「あのへニーさん、途中で逃げ出さないって約束しますか?そしたらかけませんから」

 規則を守ろうとするハッチ、老夫婦に酷いことはできないスタスキー。でもハッチも結局は手錠をかけない。二人の性格がわかる。

 

 ちなみにドラマ冒頭のスタハチの会話 =シリーズ最初の会話、は日曜なのに仕事をしなくてはいけなくてクサっているスタさんにハッチが仕方ないと声をかける。今回のタイトル原題は「Savage Sunday(野蛮な日曜日)」であることを受けてのセリフだと思う。


 今回のお笑いシーン

 捜査の途中、ホットドッグショップに寄りハッチが2人分を買うが、スタスキーから仕事だと声をかけられ、スタスキーの分をゴミ箱に捨ててしまう。車に戻ったハッチは話を聞きながらホットドッグをかじり始める。

ス「俺のは?」

ハ「ポイした」

ス「ポイした?」

ハ「食いながら運転したらあぶねぇよ」

ス「腹ペコなのによ。ひでぇことしやがる」

 このシーンだけでもちょっと面白いが、このシーンは後で警察に戻った二人がドビー主任に報告をした際、ドビー主任がハンバーガーを食べていてスタスキーがそれを欲しがり、主任が電話をしている隙にハンバーガーを盗んで行くシーンへと繋がる。

 

今回のヒョロ松

店に入った新しい女の子(ダイアン・シルズ)を紹介するヒョロ松

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 車を盗み、酒屋で強盗をした犯人を一刻も早く捕まえたいスタハチがヒョロ松の店へ。話を聞いたヒョロ松はあっという間に強盗犯につながる情報〜ジャクソン高校〜を二人へ連絡する。すごく頼りになるところが発揮されている。

 ラストでの老人ホームへの議員訪問の場でも、「その道に詳しいハギーベア先生」としてスタスキーから紹介を受ける。

 

今回のスタスキー

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 強盗犯の元嫁サリーから、sexに貪欲である話を聞いて目が点になるスタさん(笑

 

 

今回のまとめ

 これがこの後第4シリーズまで続く1stシリーズの第1話とは、とても思えないほど自然な作りの話と展開。主人公二人はもとより、上司であるドビー主任や情報屋ヒョロ松のことも詳しく説明はしていない。ただこの話を見ただけで、この4人の関係性は十分に理解できる作りになっている。

 ヒョロ松は最初から「ヒョロ松」と呼ばれ、最後の老人ホームのシーンでやっと「ハギー・ベア」という名前が明かされるほど。ドビー主任は途中の無線での会話で、スタスキーが「チョーさん」と呼んでいる。この二人に対する愛称は、日本語訳でのオリジナルだろうが、その当時の雰囲気も踏まえとても感じが出ている。

 二人の乗る車グラン・トリノのコードネームは「ゼブラ6」だったと記憶していたが、この話では「ゼブラ3」となっている。どこかで変更されるのか、ちょっと楽しみ。

 この話での捜査途中のシーンが、番組のオープニングで多く使われている。裏の馬券屋に乗り込む際の用心棒との殴り合いのシーンや、最後の車爆発シーン。その車に乗ったスタさんを誘導する白バイにハッチが早く行けと叫ぶシーンは、ハッチの紹介シーンとして使われている。

(左が今回のシーン、右がOPのシーン〜デビッドソウルの字幕入り)

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 ちなみにこの右の写真、OPでのハッチを紹介するナレーションが、「ダビッド

・ソウル」と言っているのが、昭和らしい(笑
 

本所おけら長屋 十六 畠山健二

●本所おけら長屋 十六 畠山健二

 「くらやみ」

 同心伊勢平五郎はお美弥を密偵として夜鷹殺しの囮捜査をしていた。お里は出先で足を怪我しお美弥に助けられおけら長屋に送ってもらう。怪我が治り、お里はお染とお美弥の住む長屋にお礼に行く。そこでお染はお美弥が平五郎と話しているのを目撃する。お染から話を聞いた島田は平五郎にお美弥のことを尋ねる。お美弥は命をかけて夜鷹殺しの手伝いをしていたのだった。

 霊巌寺の境内で松吉とお栄が一緒にいるところへ万造とお満がやってくる。そこへ寺男がやってきて三宝を持った人を見かけなかったかと聞く。三宝には7つの髪の毛が添えられていた。その話を酒を飲んでいた島田と平五郎にすると平五郎の様子が変わる。10年前に髪切り魔と呼ばれる犯人が7人の女を殺し髪の毛を切る事件があったが未解決で、その7人の中にお美弥の妹お桃もいたのだった。当時お美弥は大工の雁助に惚れていたが、雁助は妹お桃に惚れているのを知ったお美弥はやけ酒を飲む。店を出たお美弥はお桃が自分を探しているのを知るが隠れてしまう。その夜お桃は髪切り魔に殺されたのだった。さらに最近蛤町で若い女が殺される事件が起きたと平五郎は話す。

 お満が夜道で襲われる。命に別状はなかったが万三は心配する。

 そんな時お茂登という女性が蛤町の事件の下手人だと名乗り出てくる。お茂登は霊巌寺の髪の毛を納めたのは自分で、それを蛤町の女に見られ脅されたので殺したと白状する。お茂登は、10年前人形師泉屋永仙の店に勤めていたが、二代目の様子がおかしくなり酔って帰ってきた二代目に髪切り魔は二代目なのではないかと問い詰め白状させたこと、酔って吐いた二代目を放置しそのまま死なせたことを話す。しかし平五郎はお茂登が犯人ではないことを見抜く。お染は話を聞き、お美弥の家へ。お美弥は妹を殺したのは自分だと思い、髪切り魔と刺し違えるつもりでいた。お染はお茂登のことを話し、妹お桃が望んでいるのはお美弥が幸せになることだと諭す。

 三日後回向院で女が殺されているのが見つかる。お茂登の疑いは晴れるが、お美弥が髪切り魔を捕まえるために夜の街へ出て行くようになる。おけら長屋の皆はお美弥の後をつける。お美弥は男に襲われるが島田が助けに入る。お美弥は犯人に怪我を負わせていた。

 平五郎は牢にいるお茂登に会いに行く。そしてお茂登が二代目の息子藤十郎をかばっているのだろうと話す。藤十郎は父親が髪切り魔であることを知っており、自分も同じようなことをするのではないかと怯えていた。それを知ったお茂登は自分が名乗り出て藤十郎を助けようと思ったのだった。平五郎は藤十郎を呼び出し怪我をしていないことを確認し、彼が犯人ではないと話す。

 「ねんりん」

 飯田屋の放蕩息子弥太郎が真面目で地味な格好をして三祐に現れる。彼は飯田屋の馴染み客であり、元博徒の元締めの三津五郎の男としての生き方に感銘を受け三津五郎の真似をし始めたのだった。三津五郎が茶碗を語った話に共感した弥太郎は骨董屋竹林堂に行き、おけら長屋の隠居与兵衛と出会う。二人は意気投合するが、骨董屋からはカモ扱いされる。その話を聞いた万松が猫のエサ皿に使っていた古ぼけた皿を持って与兵衛の家へ行くと、そこへ骨董屋竹林堂が訪ねてきて、その皿を一両で買い取る。

 骨董で儲ける味をしめた万松は骨董屋佐嶋屋へ。ここは以前お里の根付を安く買い叩き万造に弱みを握られていた(おけら長屋 六)。そこで万松は生糸の大和屋定五郎と知り合う。彼は店が立ちいかなくなったため、皿や茶碗を持ち込んでおり、お金が必要だということだった。話を聞いた万造は弥太郎に定五郎を引き合わせ、彼の品を買い取る金持ちを紹介するように言う。弥太郎は竹林堂で客を集め競売にかける提案する。

 万松は定五郎が必要な150両以上に売り上げた場合、その一部を貰う約束をし、サクラを競売に紛れ込ませる。サクラにより順調に値を釣り上げて競売が進むが、間違ってサクラが高い品を競り落としてしまう。そこへ三津五郎が入ってきて全てを150両で買い取ると宣言する。

 三津五郎は昔金に困って商家に盗みに入ったが見つかってしまった。しかしその店の主人は三津五郎に必要な7両の金を渡し助けてくれたのだった。三津五郎は大和屋の質品を買い取り、大和屋の商売が立ち直り150両が出来たら品を返すつもりだった。それを知った弥太郎はますます三津五郎に惚れるのだった。

 「せいひん」

 三祐で飲んでいた万松と八五郎は金がないことを嘆き、貧乏神と福の神のことが本当にいるのではと話す。その頃巷では商家に嫌がらせをして金を脅し取ることが流行っていた。店の前に座り込み貧乏神だと書いた紙を置いておくだけで店から金を脅し取る手口だった。その話を聞いていた万松の元へ八五郎がやってきて、裏の金閣長屋に貧乏神のような老人がいるを話す。貧乏神で一儲けしようと考えた万松はその老人を長屋へ連れてくる。

 老人の正体は材木問屋の大店林屋の隠居省吾郎だった。彼は川で船遊びをしていて海に出た際に嵐にあって船は転覆してしまい、死んだと思われていた。しかし万松は老人が先月の馬喰町の家事で焼け出された老人だと思っていた。万松は回向院境内で見世物小屋をしている田五郎と話をつけ、老人を貧乏神として見世物にすることを思いつく。そして見世物が始まると、老人の風貌もあり客が集まり大繁盛となる。しかし興行7日目、老人は突然辞めると言い出す。

 その頃島田の道場へ林屋の手代勇吉が訪ねてきて、貧乏神は隠居の省吾郎であることを話す。島田は三祐で飲んでいる万松省吾郎の元へ行き、省吾郎の息子喜太郎を引きあわせる。省吾郎は船が沈んだのち、下総にたどり着き貧しい家の幼い女の子に握り飯をもらったことを話し、人の情けについて語る。そして店へ帰って行く。

 万松は島田に頼み事をし、島田は二人が立派な清貧だと話す。見世物小屋では金太が大黒天として登場するが、相変わらず金太は事情がわかっておらず大黒天は大失敗に終わる。その頃島田は下総に行き、省吾郎に握り飯と服を与えてくれた家を訪ね、6両の金を渡すのだった。

 「あいぞめ」

 下村屋の娘お佐和と松下屋の手代宗助は両想いの仲だったが、町で評判の色男で藍美屋の若旦那春之助がお佐和を見初め結婚を申し込んでくる。これが原因でお佐和は生花の稽古仲間の女たちから嫌われてしまう。お佐和はそんなに器量良しでもなくなぜ春之助がお佐和に惚れたのか不思議だった。さらに下村屋も松下屋も藍尾屋が大きな取引先であり、お佐和は簡単にこの話を断るわけにはいかなかった。

 母親お萩の薬を聖庵堂に取りに来たお佐和はお満に事情を説明する。それを聞いたお満は皆に内緒で春之助を呼び出し、事情を説明する。しかしその後藍美屋は下村屋と松下屋との取引を取りやめると通告してくる。それを知ったお満は三祐へ駆け込み、おけら長屋の皆に相談をする。

 松下屋の主人幸右衛門と番頭至三郎は藍美屋と取引中止となった理由がわからずにいた。そこへ宗助がきて事情を説明する。怒られると思っていた宗助だったが、二人は藍美屋なしでも大丈夫となるよう松下屋の意地を見せると宣言する。

 三祐では松吉が藍美屋の主人が今回の件で怒っていることを突き止めてくる。そして読売の春助に今回の件で手伝ってもらうことを思いつく。春助が藍美屋のことを書いた読売の下書きが藍美屋の主人富七郎と番頭常蔵の元に届けられる。翌日島田とお染が藍美屋へ。そこで二人は取引を元に戻さないと春助が読売を売り出すと言っていると話し、藍美屋は取引を元通りにすることになる。

 その頃街中で春之助と会ったお満は彼に拉致されてしまう。一件落着だと三祐で飲んでいた長屋の皆の前に平五郎とお美弥が現れ、お美弥を襲った下手人を見かけ跡をつけ藍美屋の春之助だと判明したと話し、皆は絶句する。そしてお満に危険が迫っていることに気づき、皆でお満を探し始める。その頃、お満は春之助から事件を起こした理由を聞く。春之助は継母に折檻され続け女嫌いになっていた。お佐和を嫁にしようとしたのも世の中の女性たちを悔しがらせるためだった。お満は藍染の話を春之助にするが彼は聞く耳を持たなかった。危機一髪のところで万造が乗り込み、島田も駆けつける。観念した春之助は自害する。

 

 本作も4話構成、前作同様、人情話3話に滑稽話1話といったところ。

 「くらやみ」は同心伊勢平五郎と密偵となっているお美弥の話。最近発生した女殺しと10年前の髪切り魔の話が繋がって行く。お美弥は10年前の事件で妹を亡くしていた。おけら長屋のカップル、お満と万造、松吉とお栄の仲が進展しているのがわかる。平五郎とお美弥も良い仲になって行きそう。さらにお染が島田に大胆な告白をする場面もあり、おけら長屋ファンにはたまらない。女殺しの事件は未解決のままで終わるが…

 「ねんりん」は久々に弥太郎が登場する滑稽話。今回は真面目になったと思わせるが、すぐに化けの皮は剥がれてしまう(笑 新たに三津五郎というキャラが登場、弥太郎の気持ちを持って行くが、ラストで弥太郎に困っている顔が浮かび笑ってしまう。

 「せいひん」は貧乏神の風貌をした老人を万松が担ぎ出す話で、滑稽話の色合いも強いが、ラストで泣かせる。ただ話が淡々と進むため、ラストの単調に感じてしまうのが難点か。金太も登場するが前作ほどの笑いにはなっていなくて残念。

 「あいぞめ」は意外な展開でスタートする。よく出来た若旦那と思いきや、お満は自分のしたことに参ってしまいおけら長屋に助けを求める。万松が動きあっという間に事件は解決したかに思えたが、冒頭の「くらやみ」の事件が後を引いていた。

 

 前作までレベルが上がり続けていたように感じたが、この16作はちょっとペースダウンか。

 「くらやみ」が一番長い話になっているが、泣かせる場面も少なく、解決をせず話を終える。「ねんりん」も笑える話だがパワーは少ないように感じるし、「せいひん」もラストにつながる力が弱い。「あいぞめ」も二つの話が入り混じり、どっちつかずのような感触。

 唯一の救いは、長屋のカップルたちの仲が進んでいる点か。ひょっとしてシリーズ完結に向けての動きなのだろうか。もう少し楽しませて欲しいと思うが、本作の出来を見るとそれも難しいのかなぁ。

 

ななつのこ 加納朋子

ななつのこ 加納朋子

 加納朋子の駒子シリーズの第1作であり、7編からなる短編集。 

 短大に通う入江駒子は「ななつのこ」という小説のファン。この小説は主人公の少年はやてが体験する謎を知り合いの女性あやめが解くという話の短編集。駒子は彼女の身の回りで起きた不思議な事柄を「ななつのこ」の作者へ手紙で知らせると、作者である佐伯綾乃が見事にその謎を解いた返信をくれる。小説と同じように7つの謎が駒子の周りに起き、どれも作者である綾乃が解いてくれるが、最終話で驚きの事実が明かされる。

 

 各話ごとに駒子が読んだ「ななつのこ」の1編のあらすじが紹介され、その話にリンクした駒子の体験した謎が提示される、という「入れこ構造」になっている凝った仕掛け。さらに最終話で小説全体を巻き込んだ事実が明かされるというパターン。この本も倉知淳の「日曜の夜は出たくない」と同様、新本格派が動き出した頃の一冊であり、やはりこのような大仕掛けが流行り出した頃なんだろう。

 それでも「日常の謎」系のシリーズであり、肩の力を入れずに読むことができた。女性の著者でもあり、主人公が短大生ということも関係するのか、向田邦子さんのやんちゃ版のような文章も心地良い。ラストで明かされる謎のこともあるので、この本で完結しているのかと思ったら、シリーズ化されているらしい。続編でこの辺りをどう扱っているのか、気になるので読んでみたいと思う。

 

家康(五) 本能寺の変 安部龍太郎

●家康(五) 本能寺の変 安部龍太郎

 前作に続き5巻目。章立ては、信忠の予感、安土城、信長死す、伊賀越え、正信帰参、甲斐と信濃

 家康を始めとする信長配下の武将たちは信長に安土城へ呼ばれる。家康は周りから安土城へ行くのは危険だと言われながらも安土城へ向かう。その道中、家康は信長の息子信忠に会い、信長の野望を止めるようお願いされるが丁重に断る。安土城で家康は信長、光秀、近衛前久と会う。その後堺へ行くがそこで本能寺の変のことを聞かされる。配下の者の数が少ない家康は、秀吉軍へ合流することも検討するが、信澄の裏切りの噂が流れたため、三河へ戻ることを決断する。

 

 とうとう本能寺の変が起き、信長は自害してしまう。どこまで真実か不明だが、この小説ではその前に家康は、信忠、光秀、前久など重要人物たちと会話しており、当然のことながらそれが大変興味深い。しかし本能寺の変、光秀の思惑については特に語られることはなく、ここでは秀吉の行動がクローズアップされている。家康が本能寺の変の後の秀吉の行動を疑問視するのである。

 本作の見所は、最終章で大樹寺において家康が重臣たちに語る場面だろう。信長の考えや野望を重臣たちに語り、それに彼らが意見する。信長が目指した律令制、公地公民制と武士の存在の矛盾。現代は我々から見ればそんなものなのかと思うことも、当時の武士にとっては大いなる疑問となることが理解できる。そして帝の存在の大きさ。正直、武士たちにとっても帝の存在は絶対的なものだったのがわかる。

 

 このシリーズは次が現時点での最終巻となるそうで、今後の家康vs秀吉の戦いの序盤が舞台となりそうだが、どこでシリーズの幕を閉じるのか楽しみだ。

 

 

麗しのサブリナ

●409 麗しのサブリナ 1954

 大富豪ララビー家の運転手フェアチャイルドの娘サブリナは、ララビー家の次男デビッドに恋をしている。しかしデビッドは離婚歴が3回あるほどの女好きで今も他の女に夢中だった。サブリナは次の日からパリに料理の勉強に行くことになっていたが、デビッドのことが忘れられず、父に遺書を残しガレージで一酸化炭素中毒による自殺を図る。しかしララビー家の長男ライナスに発見され助かる。

 サブリナはパリへ行き料理学校に通うことに。そこで知り合った男爵と仲良くなり社交界での振る舞いを教えてもらう。

 デビッドは会社にいるライナスの部屋に乗り込む。新聞に自分の婚約が発表されたためだ。相手はエリザベスで彼女の家はライナスが取り組んでいるプラスチックの原料となるさとうきび農場を所有しており、ライナスが仕組んだいわば政略結婚だった。

 サブリナはパリでの2年の勉強を終え、美しい女性になって帰ってくる。駅でサブリナを見かけたデビッドがサブリナだとわからないほどに。デビッドはサブリナを夜のパーティに誘う。サブリナの父は身分違いの恋を心配するが、サブリナは自信を持っていた。パーティでデビッドはサブリナをパーティ会場から抜け出しテニスコートで会う約束をする。しかし婚約相手をほっておくデビッドを見かねた父親に呼び出され、その場で怪我をしてしまう。テニスコートに現れたのは兄のライナスだった。ライナスはサブリナとダンスを踊り、デビッドの代わりにとキスをする。

 怪我をして動けないデビッドの代わりにライナスはサブリナとデートをする。そこでライナスの昔の女性問題の話を聞いたサブリナはライナスにパリに行くことを勧める。二人はデートを繰り返し、ライナスはパリへ行くとサブリナに告げる。サブリナはパリでの生活についてアドバイスをする。二人が家に戻ると怪我が完治したデビッドが待っていた。サブリナは自分がライナスに惹かれ始めていることに気づく。

 デビッドの結婚話が進む。ライナスはサブリナをパリ行きの船に誘って、デビッドとサブリナを引き離そうとする。もちろん自分は船に乗るつもりはなく、金銭面での補償を考えていた。

 サブリナはライナスの会社へ行き、夕食を一緒にできないと電話をするが、ライナスが電話ボックスの前まで来ており、一緒にライナスの部屋へ行く。そこで話をしている最中にサブリナは二人のパリ行きの船のチケットを見つけ喜ぶ。しかしライナスは、サブリナをデビッドから引き離すための作戦だったことを告白、サブリナは全てを理解し自分のチケットを受け取り去って行く。

 翌日、ライナスはデビッドの政略結婚を取りやめ、エリザベスの父の会社との合併も取りやめ、デビッドをパリに行かせる決心をする。そこへデビッドがやって来て、昨夜サブリナに会ったこと、彼女の気持ちが変わったことに気づいたことを話し、ライナスを殴る。それでもライナスはデビッドにパリに行くように勧める。

 サブリナの乗った船が出航したのを確認して、ライナスが合併話の会議を始まる。ライナスはその場で合併は取るやめると話すつもりだったが、そこへデビッドが現れエリザベスとの結婚と合併話のためのサインをすると言い出す。さらに新聞にライナスとサブリナの結婚話の記事が出ていることを告げる。デビッドがライナスのために仕組んだことだった。デビッドはタグボートを準備してあるので、船に乗りに行けをライナスに話す。ライナスは港へ行きタグボートで船に乗船、サブリナと会う。

 

 有名な作品だが初見。ラブロマンスものの王道の一本って感じ。オードリーの「ローマの休日」の次の作品であり、ボギーとホールデンとの共演、って当時どんだけスゴい話題になったんだろう、と思える。しかもワイルダー監督脚本だし。

 ストーリーは兄弟で同じ女性を好きになるという定番もの。仕事人間だと思っていたライナスが語る昔の女性問題を聞いて惹かれてしまうサブリナは可愛いし(笑 ワイルダーのちょこちょこと見せる笑いのシーンもさすがだし。サブリナを応援する屋敷の召使いの皆の喜ぶ表情も良い。

 ただちょっとだけ長いかな。どこが不要かと言われると思いつかないけど、サブリナがライナスに惹かれていることに気付いてからはもっと展開を加速しても良かったかも。2時間近い映画だが、あと15分ほど短ければ最高だったのに。

 

少林サッカー

●408 少林サッカー 2001

 20年前、黄金の右脚と呼ばれたサッカー選手ファンは同僚のハンから八百長を持ちかけられ断ろうとするが、小切手を受け取ってしまい、試合でPKをミスする。その結果に怒ったファンからボコボコにされ大怪我をしてしまう。

 その後ハンはファンの代わりにサッカー選手としてスタートなり、20年後、ハンは常勝サッカーチーム、デビルの監督となっていた。怪我をしたファンはハンの部下となっておりハンに忠実に仕えていた。ファンはサッカーチームの監督の話を受けるつもりでいたが、ハンからその話はなくなったと言われ、20年前の怪我もハンが仕組んだものだったと言われる。

 絶望したファンは街でシンと出会う。シンは少林寺を世に広める手段を探していた。ファンはシンから手書きの名刺をもらうが、空き缶に入れて捨ててしまう。シンはそれを遠くへ蹴飛ばしてしまう。

 シンは饅頭屋で太極拳の使い手であるムイという女性に会う。彼女は自分の顔にコンプレックスを持っていたが、シンは歌や踊りで彼女を元気付ける。

 シンは少林寺時代の兄弟子の元へ行き歌と踊りで少林寺を広めようと画策する。兄弟子の勤めるクラブでショーを行うが客からブーイングを浴びてしまう。

 ファンは街中で壁にめり込んだ空き缶を発見する。それはシンが蹴飛ばしたものだった。その壁が崩れ、ファンはシンが客たちをサッカーボールで蹴散らす場面に遭遇する。ファンはシンをサッカーに誘い、シンも少林寺を広めるためにサッカーをすることを望む。しかし靴がないことを指摘されたシンはムイの店に行き、靴を返してもらう。その後、シンとファンはシンの兄弟弟子を訪ねサッカーに誘うが断られる。しかし考え直した兄弟弟子たちはシンの元へ集合する。

 ファンは皆にサッカーを教える。徐々に上達する兄弟弟子たち。ファンはシンが喧嘩をした店の客たちとのサッカーの練習試合を組む。しかし客たちは暴力で試合を支配、兄弟弟子たちに屈辱を与える。それを見て皆は覚醒、それぞれの得意技を使い、試合に勝利する。ファンはこのチームでサッカー全国大会に出て優勝しようと話す。

 ファンは皆を連れ全国大会の参加を申し込みに行くが参加をできないと言われてしまう。そこへハンが現れる。ハンは大会委員長で参加チームを決める権限を持っていた。ハンはファンが連れてきた皆を見て笑い、チームの参加を許可する。

 チームは順調に勝ち進み準決勝も勝つ。ファンはハンに呼ばれ、金でチームを譲るように言われるが、ファンは断り優勝を目指すだけと答える。

 決勝戦はハンの率いるデビルチームが相手だった。デビルの選手たちはドーピングで体を強化しており、チームの皆は次々と倒れてしまい最低人数を切ったチームとなってしまうが、そこへムイがゴールキーパーとして現れチームに加わる。彼女は太極拳を使い相手のボールを受け止め、そのままシンへボールをパス、シンは強烈なボールで相手からゴールを奪い優勝する。

 

 上に映画のあらすじを記載したが、これはほぼ意味ないもの(笑 この映画はとにかく観れば良いだけ。細かいことがどうだとなどと言うのは全く不要。サッカーと少林寺というふたつを無理くりくっつけた感がそのまま映画になっている。CG?も20年前のレベルのものだが、それがまたたまらなく良い。あまりにバカバカしいがそれもタマラない。

 唯一の女性ムイが可愛いだとか、ブルースリーのモノマネゴールキーパーが良いだとか、クラブでのショーは不要だとか(笑、マイケルジャクソンのスリラーのパクリだとか、書きたいことはあるがそれもホントにどうでもよくなってしまう一本。