アビス 完全版

●176 アビス 完全版 1993

 アメリカの原子力潜水艦が謎の生命体による影響で沈没する。潜水艦の調査に駆り出されたのは、石油採掘チームだった。チームのリーダーであるバッドはチームを危険な目に合わせることはできないと拒否するが、会社の命令で現地へ向かう。そこにはバッドの元妻大型潜水艇ディープコアの設計者のリンジーや特殊部隊のコフィ大尉がやってきて、一緒に調査に向かう。

 潜水艦を発見し、生存者の救出に向かうが、チームの一人ジャマーは謎の光る物体を見てパニック状態に陥り、昏睡状態に。船外で作業をしていたリンジーも光る物体を目撃するが、誰もそれを信用しなかった。コフィは光る物体はソ連軍だと勘違いし報告、核弾頭を沈没した潜水艦から運び出す。地上では米ソの緊張が極限に達していた。

 海上ではハリケーンが発生、ディープコアを固定していたワイヤが切れ、海上のクレーンが落下、ディープコアは損傷を負い、船内に犠牲者も出る。船は酸素不足、電源不足が懸念された。酸素不足を補うため、リンジーは船外で予備タンクの操作に向かうとそこでまた謎の生命体と接触する。話を聞いたコフィは船外とも連絡が取れず、暴走を始める。核ミサイルを用意する。

 船内に謎の生命体が姿を現す。リンジーは一度見ていたため接触を試みる。しかし初めて相手を見たコフィはさらに暴走、核ミサイルを小型潜水艇に取り付け、敵にぶつけようとし、チーム員を部屋に閉じ込める。なんとか他の特殊部員を説得し、コフィの暴走を止めようとするが、彼は小型潜水艇に乗り込み、核ミサイルを持ち出す。バッドとリンジーはそれを止めようとし潜水艇での格闘となり、コフィの船は海底深くに沈む。バッドとリンジーが乗った船も操作不能となり、脱出もできない。リンジーは自分が溺れ仮死状態となるので、ディープコアに連れて行って蘇生させてくれとバッドに頼む。ディープコアに戻り、なんとかリンジーは息を吹き替えす。

 バッドは小型潜水艇に取り付けてあった核ミサイルの起爆装置を解除するため、一人深海へ潜る。解除には成功するが、酸素が残っておらず絶体絶命だったが、謎の生命体がバッドを救う。謎の生命体はバッドに様々な映像を見せ、彼らの目的を知らしめる…

 

 3時間近い大作。見所は多く、話に引き込まれた。リンジーが息を吹き返すシーンやバッドからの「再登場」のメッセージシーンでは久しぶりに映画を見ていて泣けた。

 それでもやはり3時間は長い。深海での圧力でパニック状態に陥ったコフィ大尉との攻防が長く、本来見せたかったであろうエイリアンとのエピソードが二の次になった感じを受ける。

 しかし時代を考えれば(公開は1988年)、その深海での映像は美しく、のちのターミネーター2のあの敵役の形を作ったのだと思えば仕方ないか。それにしてもこの映画でのエイリアンもそうだが、「コクーン」など1980年代の映画のエイリアンは地球人に優しいというのは本当なんだなぁ。いつから地球を乗っ取ろうと方向転換したんだ(笑

 

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これがオレの麻雀

●これがオレの麻雀 阿佐田哲也

  1980年に行われた第11期麻雀名人戦の予選〜決勝までの阿佐田哲也本人による自戦記。文庫本サイズで約500ページ弱の大作。

 若い頃麻雀が好きで、阿佐田哲也の麻雀関連の本は小説もエッセイもほぼ読み尽くしていたと思っていたが、これは存在すら知らなかった。約40年の前の文章であるので、他で読んだ戦術などが多く新鮮味はあまりなかったが、それでも自戦記であるため内容がリアルである。阿佐田さん本人が書いているように、「Aクラス麻雀」が理論のみだったのに対し、実戦を題材にしたものがどうしても書きたかったようだ。

 ルールが一発裏ドラなしのオーソドックスなもののため、いくのか引くのかの判断、安パイを常に抱えようとする姿勢、捨て牌の切り順などが詳細に解説されている。

 決勝では序盤から阿佐田さんの大リードで進み、そのまま順調に優勝できるか、という流れの中、最終盤でリードしている阿佐田さんを楽させないように他の三人がまさに「東一局五十二本場」のような打ち方をしているのがクライマックスか。

 久しぶりに本物の牌を使った麻雀がしたくなる。そんな一冊。

 

スピード

●175 スピード 1994

 ロスの高層ビルのエレベータジャックが発生する。爆弾によりワイヤーを切り、さらなる爆弾をブレーキ装置を仕掛けることで、犯人は金を要求する。ロス市警のジャックとハリーはビル屋上の重機からワイヤーを通し、エレベータボックスの落下を防ぎつつ、乗客を救出する。二人は犯人がビル内に立てこもっていると推理、荷物用エレベータで犯人と対峙する。ハリーが人質に取られるが、ジャックの機転でハリーを助けるが犯人は取り逃がす。しかし犯人が逃げた直後に大爆発が起こる。二人は警察で表彰される。

 翌日ジャックはコーヒーショップを出たところでバスの爆破を目撃する。側の公衆電話が鳴りジャックが出るとエレベータジャックの犯人からのもので、通勤用のバスに爆弾を仕掛けた、バスの速度が50マイルを切れば爆発すると告げられる。ジャックは爆弾が仕掛けられたバスを追い、乗り込む。

 警官ジャックが乗り込んだことで勘違いした乗客が銃を出す。彼を説得しようとするが乱闘になった際にバスの運転手が撃たれてしまう。乗客の女性アニーが代わりに運転をし、爆発は免れる。ジャックはバスの床下に潜り、爆発物の状況を確認、ハリーに伝える。バスは一般道に降りるが50マイルの速度を維持するために危険な目にあう。警察の指示でバスは建設中の高速道路に入る。

 犯人と電話で会話ができるようになり、ジャックは怪我した運転手を下ろすよう話し犯人は了承する。バスの横につけた車に運転手を渡すが、それを見た老婦人が自分も降りたいと言い出し、隣の車に移ろうとする。それを知った犯人は乗車口の床を爆破、老婦人はバスから転落し死亡する。

 警察の調べで建設中の高速道路の一部が未完成であることがわかる。ジャックはバスのスピードを上げ、15mのバスダイブをし、危険を乗り切る。その後ジャックはバスを空港に乗り入れることで、広い空港内を周回し、速度を落とさずに機器を乗り切ろうとする。

 ジャックはバスを一度降り、バスの床下の爆破物を解除しようと試みる。しかしハリーからの連絡で犯人の名前と住所が判明したことを知り、解除を断念する。ジャックが乗っていた台車のワイヤーが切れてしまい、ジャックは危険に陥るが、なんとかバスに乗り込むことに成功する。しかしその代償にガソリンタンクに穴を開けてしまう。

 犯人の家に潜入したハリーを初めとする警官隊だったが、それは犯人の罠で家は爆発、ハリーも巻き込まれ死亡する。

 ハリーの死亡を犯人からの電話で知ったジャックは、犯人のセリフからバス内部が犯人により監視されていることに気づく。カメラを確認したジャックは、TV局に協力を要請、バス内部の映像を録画しそれを流すことで犯人の目をごまかし、乗客を他の車に移らせる。しかしジャックとアニーを残したところで、他の車に移る手段をなくし、二人はバスから鉄板の上に乗り脱出する。バスは飛行機に突っ込み爆発する。

 バスの爆破を知らない犯人を誘い出すために要求された金を用意し警官隊が見守る。しかし犯人は現れなかった。不審に思ったジャックは金の引き渡し場所のゴミ箱を確認すると箱の底の地面に穴が開いていた。ジャックはそこへ乗り込むが、そこにいたのは犯人と爆弾を身につけられたアニーだった。

 犯人はアニーとともに地下鉄に逃げる。ジャックはそれを追う。地下鉄の屋根の上で格闘となりジャックは犯人を殺す。アニーは犯人により電車内のポールに手錠で囚われていたため脱出できなかった。電車は運転機能を失っていた。ジャックは電車の速度を上げ、暴走させることで衝突を避け、助かることに。

 

 最初の30分弱がエレベータジャック、次の30分が高速道路、次の30分が空港、最後が地下鉄、と次から次へとアクションシーンが続き画面から目を離せない。特に高速道路でのカーアクションは見ている方が冷や汗をかくシーンの連続で、心臓に悪い(笑

 ハリーが爆弾処理について長けていたり、犯人の正体がわかる過程がちょっと早かったり、とツッコミどころがないわけではないが、アクションシーンの連続がそれを許容している。

 空港でやっとバス乗客とジャック、アニーが助かったところで、あとは犯人を追い詰めるだけだと思っていたら、最後にまたアクションシーンがあり、ストーリー展開も上手かった。これは大ヒットするよなぁ。キアヌ・リーブスはこの映画でメジャーになったのね。マトリックス前なんだ。続編があるみたいだけど、キアヌは出ていないとのこと。ちょっと残念。

 

舞踏会の手帖

●174 舞踏会の手帖 1937

 クリスティーヌは若くして未亡人となる。子供もなく友人もいない彼女は孤独を感じる。夫の遺品を整理している際、自分が16歳で初めて舞踏会に行った時に一緒に踊り愛を囁いてくれた男の名前が書いてある手帖を見つける。夫の秘書から旅を勧められた彼女は手帖にある男たちの元を訪ねる決意をする。秘書に過去の私を探しに行くと告げて。

 一人目ジョルジュ。彼の家を訪ねたクリスティーヌはお手伝いに彼は死んだと聞かされるが、彼の母は彼が生きているように振る舞う。奇妙に感じる彼女を母親はクリスティーヌの娘と勘違いし会話をする。ジョルジュの部屋に通されるが、そこは20年前のまま時が止まった部屋だった。母親は息子がクリスティーヌの婚約を聞き絶望し、20年前のクリスマスの時期に息子が自殺したと話し彼女を追い出す。

 二人目ピエール。彼はナイトクラブの支配人で今はジョーを呼ばれていた。従業員たちと客の持ち物を盗む算段をしていた。クリスティーヌは従業員に詩の一節を彼に伝えるように頼む。ジョーは彼女と話をするが、彼女が金がなく困っていると勘違いし、店で働けるように手配しようとする。彼女は誤解をとき、二人は会話をする。彼は弁護士だったが罪を犯し刑務所に入った後、今の店を始めていた。二人は昔話をする。そこへ警察が来て、ピエールを逮捕する。

 三人目アラン。彼は神父となり聖歌隊の指導をしていた。彼は作曲家で彼女に向けた曲を作り当時披露したが、誰も気に留めなかったことで全てを諦めた。その曲を気に入った息子がいたがすぐに亡くなっていた。その代わりに少年たちの面倒を見ていた。

 四人目エリック。彼は山で山岳ガイドをしていた。彼は30歳までの人生を反省し今は山で生活をしていた。彼はクリスティーヌは昔は手の届かない女だったが今はありのままに話ができると話す。彼女は彼の山小屋で一夜を過ごすことを提案し彼も受け入れる。二人は小屋で愛を語る。しかし救助要請が入り、彼は出て行く。彼女は手紙を残し山を去る。

 五人目フランソワ。彼は町長になっていてその日が女中との結婚式だった。クリスティーヌは二人の結婚式と披露宴に出ることに。彼には養子がいたが、仕事で式には来られないということだった。しかし披露宴にその養子が現れる。彼は盗みを何度も犯すような男だった。彼は結婚のお祝いに来たと話すが、最後には金をせびり、断られるとフランソワを脅す。激怒した彼は息子を無知で叩き大騒ぎとなる。

 六人目ティエリー。彼は造船所で働く闇医者だった。彼は左目を失っており失意の20年を過ごしていた。しかし現状を変えるべく立ち上がろうとしていた。クリスティーヌは彼を支援しようとする。彼は喜び彼女を食事に誘う。しかしその場で彼は発作が起こりおかしくなってしまう。クリスティーヌはティエリーの妻に追い出されてしまう。彼は拳銃を取り出し妻を撃ってしまう。

 七人目ファビアン。彼は理容師をしていた。彼の店に行き、得意の手品の種明かしをすることでクリスティーヌと気づく。二人は舞踏会の話をし、他の男たちの消息を話し合う。彼はクリスティーヌを舞踏会に誘う。二人は会に行く。そこでクリスティーヌが見たものは彼女の記憶とは程遠いものだった。彼女は彼に「灰色のワルツ」を演奏するように頼む。彼が離れた際彼女の横に若い女性がやってくる。二人は束の間の会話をする。若い彼女は16歳、初めての舞踏会に興奮していた。クリスティーヌはファビアンと踊りながら16歳の舞踏会を思い出していた。

 クリスティーヌは家に戻り、秘書と話をする。秘書は彼女の話を聞き、これで過去が断ち切れ再出発だと話す。そして唯一住所がわかっていなかったジェラールの住所がわかったと話す。彼女の家の湖を挟んだ向かい側に住んでいた。彼女はジェラールの家を訪れる。そこにいたのは16歳の時に見たままのハンサムな少年だった。話をすると彼はジェラールの息子で、ジェラールは亡くなったとのことだった。クリスティーヌは彼を養子とし、初めての舞踏会に連れて行くのだった…

 

 何の予備知識もなく観たが、一人目の家を訪ねた直後から見事に引き込まれた。信じられないという表情のお手伝いさんの後に出て来た母親の不気味なこと。時が止まった息子の部屋の異常さ。そしてだんだんと狂って行く母親。

 二人目以降はどうなるのかと思っていると、一人一人が違う人生を歩んでいたことがわかる。皆クリスティーヌに夢中だったことは本当だが、それも20年前の話。彼女の思い出が少しずつ壊されていくのもよくわかった。そして六人目のティエリーの絶望感。もはやクリスティーヌの思い出の話ではなく、男たちの歩んだ20年の人生にテーマは変わっている。ティエリーの家でのカメラの不安定なこと。話の展開を暗示している。

 そして七人目。やっと平和な家庭を築いている男。下手な手品もホッとさせる。そして20年ぶりの舞踏会でクリスティーヌは気づく。そこにあの時の自分と同じような16歳の少女。

 完璧な脚本。最後のジェラールのエピソードは蛇足のような感じもするが、思い出が壊れたクリスティーヌにやっと見えた明るい未来、ということなんだろうと思う。

 ここ何本か古い映画で驚かされてばかり。この時代の映画ももっと観なくちゃダメでだと改めて思う。 

 

隣の女 男どき女どき 向田邦子全集 第三巻

●隣の女 男どき女どき 向田邦子全集 第三巻

 短編集。エピソードの組み合わせが意外である前半とエピソードそのものがあまりにドラマである後半。読み終えた後に何かが心で引っかかる。今回はそれを解説の諸田玲子さんが一言で言い表してくれていた。うしろめたさ。ここまで読んだ向田さんの小説では、登場人物が読者や他の登場人物には隠していた思いを突然表に出すことの怖さ、驚きがポイントだと思っていたが、今回の小説はうしろめたさがキーワードであると。まさにその通りだった。以下覚え書きとして。

 

隣の女 登山とセックス

幸福 腋臭と機械油

胡桃の部屋 桃太郎の歌と不倫

下駄 出前持と腹違いの弟

春が来た 年老いた母と痴漢

鮒 ワン!

ビリケン 果物屋の視線

三角波 結婚相手の部下

嘘つき卵 偽卵

 

鬼平犯科帳 第4シリーズ #15 女密偵・女賊

 第4シリーズ #15 女密偵・女賊

https://www.fujitv.co.jp/onihei/photo/s4-15.jpg

 おまさが口合い人佐沼の久七と定期のつなぎをつける。口合い人とは盗賊同士を引きあわせる仕事だった。久七はおまさの父、鶴(たづがね)の忠助の仲間だった盗賊だったが、鬼平密偵として働いていた。

 久七から押切の駒太郎という錠前外しの話を聞く。彼が顔を見せ、八王子の清水屋で仕事をしたばかりとのことだった。おまさはあとをつけたか聞くが、久七は歳でそれは無理と話す。久七の所を後にしたおまさは粂八に、久七は駒太郎が可愛くて見逃したのだと話す。久七の扱いをどうしたら良いか相談していたのだった。

 二人が話しているのを茶店から見ていた女に粂八が気づく。おまさはその女は昔一緒に組んで仕事をしたことがあるお糸だと話す。おまさはお糸に声をかける。お糸は仕事をしたばかりだと話すので、おまさは今日は一緒にゆっくりしようと誘うが…。おまさは鬼平に報告をする。お糸は待ち人を待っていると話していた。鬼平村松を呼んで明日料理で人を癒して欲しいと頼む。

 翌日おまさは粂八と茶店の様子を探る。お糸はまだ人を待っていた。おまさは声を掛け二日も待たせる男は酷いと話すが、お糸はあの人はきっと来ると言い張る。泣き出したお糸におまさは本所笹やへ誘う。その店は鬼平の昔馴染み小熊ばあさんがやっている店で盗賊改方の連絡場所だった。店では村松が料理を作っていた。

 八王子の清水屋押し込みの調べが来る。鬼平は粂八を呼ぶ。

 おまさはお糸から話を聞く。お糸が待っていたのは、押切の駒太郎だった。駒太郎と最後に会った時に彼はいそぎ働きに嫌気がさしていて結婚の約束をし茶店で待っていた。お糸はお頭に止められたのかもと言い、おまさはお頭の名を聞く。鳥浜の岩吉というお頭だった。おまさは久七なら駒太郎の居場所を知っているかもと思い、出かけようとするが、そこには粂八が待っており、鬼平からの呼び出しだと告げる。

 粂八とおまさは鬼平のところへ行く。駒太郎が清水屋で仕事をしたと言ったことを確認し、鬼平は清水屋では800両が盗まれ、下女と小僧が殺害されたと話す。おまさはお糸から聞いた話をする。

 賭場でかまいたちと呼ばれる浪人が負け、すぐ戻って来ると言い席を立つ。かまいたちは盗賊の家に親分を訪ねて行くが、居留守を使われる。逃げようとする親分たちをかまいたちは見つける。かまいたちは金の無心に何度も来ていた。親分はかまいたちを追い出そうとするが、かまいたちは金目当てで離れるつもりはなかった。

 鬼平は久七の家に行く。久七に駒太郎との関係を聞く。久七は駒太郎の父に命を二度救ってもらっていると話す。駒太郎は非道を嫌っていると言うが、鬼平は清水屋でのことを教え、駒太郎のことを教えるように話す。そして盗人宿が判明する。

 お糸は笹やで盗賊改めに捕まる。おまさは心の中で謝る。粂八がおまさに声を掛け茶店に寄る。粂八は長谷川様を信じるしかないと話すが、おまさは一途の女心を踏みにじったと涙する。

 鬼平たちは盗人宿で鳥浜の岩吉一味を捕まえる。岩吉は取り調べで全てを話す。駒太郎はすでに死んでいる、やったのはかまいたちで、毎晩中間部屋の賭場にいる、と話す。最後にどうして仕事がバレたのかと鬼平に尋ねる。鬼平は、盗賊とそうでない女二人の気持ちがお前に縄を掛けさせた、と答える。

 鬼平かまいたちこと堀七兵衛を見つけ出し斬る。その場にお糸も来ていた。鬼平はお糸に声を掛けその場を去る。

 鬼平はおまさを宅に呼ぶ。今日からお前に手下をつけると話す。そこにいたのはお糸だった。

 

 おまさの昔馴染みが出て来るのは、最近やったばかり(「第4シリーズ #11 掻掘(かいぼり)のおけい」)。しかし今回は、お糸を売るのを迷い粂八に相談するシーンやお糸が捕まった後心の中で謝るシーンがしっかりと描かれ、おまさの苦悩が共感できた。そのことがあったからこそのラストの大団円となる。それでもやっぱりお糸はこの後密偵として出て来ることはないだろうが(笑

 同じように?お熊ばあさんが出て来るが、こちらはしっかりと前振りの話があった(第1シリーズ #13 笹やのお熊」)。密偵となる約束がキチンと果たされたようだ。ただし第1シリーズとは女優さんが代わっている。前の登場から4年後の作品だが、何か都合が悪かったのか?それともこの後もちょいちょい出て来るようなので交替したのか。

 それにしても冒頭で斬られたのが駒太郎だったとは。なかなか味な演出をする。

 

[rakuten:book:11610868:detail]

ギターを持った渡り鳥

●173 ギターを持った渡り鳥 1959

 函館の酒場で外国人にからまれていた流しを助けた滝は店のママの紹介で秋津と出会う。自分の配下で働かないか打診されるが滝は断る。翌日滝は海で由紀と出会う。彼女は父親に滝を引き合わせるが、父親は秋津だった。由紀は秋津の娘だった。

 店で流しをしていた滝は地元の流しにからまれる。止めに入ったのは秋津だった。改めて仕事を手伝うよう依頼され滝は受け入れる。秋津は金貸しでそれをカタにした土地の立ち退きも行なっていた。チンピラがしくじった件を手助けするよう依頼され滝は出向く。その仕事に成功した滝に秋津はもう1件依頼をする。函館の観光ルートに沿った場所にアミューズメント施設を作るつもりで、予定地である丸庄を立ち退かせる仕事だった。

 滝は丸庄へ向かい借金の催促をする。払えないという主人に約束通り船をもらうと話すと丸庄の奥さんが兄さんのことだからと駆けつける。滝は丸庄の主人庄司の妻が秋津の妹だと知る。滝は秋津に事情を尋ねる。秋津は妹の結婚に反対しており、その旦那も気に入っていなかったため仕組んだことだった。

 由紀が滝を誘いデートをする。滝のことを知りたがる由紀は滝に昔恋人がいたこと、その女性が亡くなったことを知る。その夜滝と由紀がデートしていた店に秋津の部下馬場が来て店員を脅す。滝はそれを止める。滝は秋津に呼び出され、由紀と会うことを禁じられる。その場で神戸の田口組から来たジョージと出会う。ジョージは滝とどこかで会ったかと聞くが滝は知らないと答える。

 ジョージは秋津に麻薬の取引に船が必要なので貸して欲しいとお願いする。秋津は丸庄から得た船を提供する。船には滝も同行する。船上で拳銃遊びをしていたジョージが滝を挑発する。滝が拳銃を撃つとジョージは滝は神戸の刑事だと思い出す。二人は決闘をしようとするが、そこへ巡視艇が来る。船内監視の際に滝はジョージの危機を救う。麻薬の取引も中止となり、二人の決闘は休戦となる。

 丸庄の庄司は船を取られたことを恨み秋津のところへ行こうとするが、妻と部下に嗜まれる。その夜酒を飲んだ庄司は秋津のところへ向かうが、馬場に殺される。

 翌日水死体となった庄司が発見される。それを見た滝に沼田が声をかける。沼田は神戸時代の警察の上司だった。沼田はジョージを追って函館に来たことを滝に告げる。

 庄司の葬式が行われる。庄司の部下だった安川に滝は喧嘩を売られる。黙って殴られる滝だったが、由紀が来て安川は逃げる。由紀は自分の父が何をしているのか聞くが滝は答えなかった。

 麻薬の取引が再度行われる。ジョージと滝が船で向かう。秋津は殺し屋に二人を始末するよう命じる。取引が終わり、ジョージと滝は決闘を行おうとするが、殺し屋が滝を撃ち、ジョージは殺し屋を撃つ。殺し屋は秋津のいる店に入って来て絶命する。その後へ滝が現れる。秋津のことを追い詰めるが、拳銃で反撃される。そこへ秋津の妹が来て射殺される。滝は絶体絶命のピンチを迎えるが、ジョージが秋津を殺す。

 二人は改めて決闘を行うが、滝がジョージの拳銃を撃つ。そこへ警察が入って来てジョージは逮捕される。滝は沼田と話し、死んだ女の墓参りで佐渡へ行くと話す。船の見送りに由紀たちも来る。滝は由紀に秋津のことを詫びる。二人は再会の約束をするが…

 

 宍戸錠さんが亡くなったことでの追悼放送。

 まさに昭和の娯楽映画。難しいことは考えず楽しめる。カッコ良いヒーロー、それに惹かれるマドンナ、許せない悪者、悪者により悲劇を迎える被害者。全て揃っている。そこに、主人公の敵なのになぜか憎めない殺し屋ジョージ、とくれば、宍戸錠さんの役所はおいしいし、人気が出るのもわかる。

 約60年前の映画ということで、金子信雄浅丘ルリ子も顔を見ても誰だかわからなかった。小林旭も知っている顔と違うし(笑 野呂圭介さんなんかも出ていて、どっきりカメラを思い出した。そうか、どっきりカメラに宍戸錠さんが出ていたのはこの人とセットだったのか。

 もう少し同じシリーズを見たい気もするが、別の話なのに同じ俳優さんが出ているみたいで、ちょっと引くかな(笑