刑事スタスキー&ハッチ 第1シリーズ #15 現金輸送車強盗団

●刑事スタスキー&ハッチ 第1シリーズ #15 現金輸送車強盗団

 

あらすじ

 スタハチは朝食をとるために入った店の常連客が来ないため彼のアパートへ行くことに。すると常連客は殺されており、彼は現金輸送車の警備員だったことが判明する。最近他の都市で発生している事件と類似しており、協力者の警備員が人質を取られていると考えたスタハチは捜査を開始するが、現金輸送車が最後の店に行くまでに3時間しかなかった…。

 

ストーリー

 あるアパートの一室。男が忍び込んでくる。部屋の住人ハリーがシャワーを浴びリビングに戻ってくると、男は部屋にあった制服に着替えており、住人を射殺する。制服はエイムス警備会社のものだった。

 別の家。同じ制服を着た男コールが朝食をとっている。妊娠している妻エリーに見送られ彼は仕事に行くために車に乗るとそこに拳銃を構えた男が待っており、妻を殺されたくなければ今日一緒に行動してもらう、今日集金する金と奥さんとを取引したいと話す。コールは妻が妊娠していると話すが、男は仲間が子守をするから安心しろと答える。

 その頃スタハチは、スタスキーの勧める店で朝食を取ろうとしていた。スタスキーがお気に入りの娘エミーがいる店で、星占いでは今日彼女は背の高い二枚目と恋に落ちるということだった。しかしエミーはスタスキーに気づかず、常連客が来るのを待っていた。話を聞くと毎日7時半に来るハリーが今日は14分も遅刻しているとのこと。心配する彼女が警察に連絡しようとしたため、スタスキーは自分たちは警官だと話すと、エミーはハリーは現金輸送車のガードマンだと話し、鍵があるのでハリーの様子を見てきて欲しいと頼む。

 スタハチはハリーの家へ行き、彼の死体を発見する。スタハチはエイムス警備会社へ出向き、社長のエイムスと運行係のエドと会い、ハリーのことを伝える。しかしエドはハリーは2時間前に輸送車に乗って仕事に出かけたと答える。それを聞いたハッチはシンシナティデトロイトで発生している現金輸送車強盗と同じだと気づく。そして今朝エドがコールの顔は見ているが、ハリーの顔は確認してないことを聞き出し、現金輸送車が今日立ち寄る先のリストを出してもらう。今日はスーパーの売上を集金し、午後4時に6番街の銀行へ持って行くことになっていた。スタスキーはハリーの車から犯人の指紋を検出するよう連絡、社長のエイムスは輸送車を止めるよう求めるが、ハッチが犯人は人質を取っていると話す。

 その頃郊外の家に1台の車が乗り付ける。運転していた女性が買い物袋を抱えて家に入って行く。そこにはコールの妻エリーと犯人一味が待っていた。女性はコールの妻と話をし、妻が妊娠していること、以前流産したため慎重になっていることを知り、動揺する。女性は一味の仲間にそのことを話すが、男は顔を見られているので殺すしかないと答える。

 集金1軒目のスーパーに輸送車が到着。犯人は車のそばで待機、コールが集金のため店に入る。事務所にいたのはスタハチだった。彼らはコールから事情を聞く。犯人たちは45分おきに公衆電話で連絡を取り合っているとのことだった。ハッチはコールにそのまま仕事を続けるように言う。デトロイトでは人質と協力者は殺されていた。午後4時まで3時間しかなかった。

 スタハチはコールの家に向かう。スタスキーがセールスマンを装い家を訪ねる。留守だったが隣から少女メグがのぞいていることに気づく。メグに話を聞くと、コールの妻エリーは朝8時半ごろ男女とともに高級車で出かけたとのことだった。スタハチはメグに手配写真を見てエリーを連れ出した男女を確認してもらうことに。署にはエイムス社長も来ており、早く輸送車を取り押さえるように話すが、ハッチは人の命がかかっているんだと激怒する。

 輸送車が次のスーパーへ。ここでもスタハチはコールを待ち、奥さんが拉致されたこと、ここを出たら犯人に奥さんと電話で話したいと言うこと、最後の集金の前にも奥さんと会話させること、を要求しろと話す。車に戻ったコールは犯人に妻との会話を要求、犯人も認めざるを得なかった。コールはエリーと会話、午後4時にまた電話すると約束し、犯人にもそれを要求する。

 その時ドビー主任からスタハチにメグが犯人の女性を手配写真から見つけたと連絡が入る。スタハチは大道商人を始めたヒョロ松に会いに行き、犯人の女性ベル・ケイトのことを尋ねる。住所はわからなかったが、スイートアリスに話を聞けと言われる。

 スタハチはスイートアリスに会いにバーへ。アリスの話ではベルは最近東部から来た乱暴者の男たちと組んでいたとのこと。そしてベルの住所をチャンドラー通りだと教えてもらう。早速その家へ行くと、待っていたのはマダムイーラムという占い師だった。彼女にベルのことを聞くと、自分が住む前にここに住んでいた女性だとわかる。彼女はベルの引越し先は知らなかったが、引越し業者がエンジェル運送だったことは覚えていた。スタハチは運送会社からベルの住所を聞き出し、ドビー主任に応援を要請、自分たちもそこへ向かう。

 そこは娼館だった。娼婦の話でベルたちは裏のアパートの2階にいると判明。スタハチは犯人がアパートから出てくるところを急襲する。エリーを人質に取られるがスタハチのコンビ技で犯人を逮捕する。ベルは観念し、犯人からの電話に対応する。そして犯人からコールを倉庫に行ったら始末すると言われたことをスタハチに伝える。しかしベルは倉庫の場所を聞かされていなかった。

 スタハチは主任に連絡、輸送車の現在位置を確認する。そのあたりは倉庫が多くある場所だった。スタハチは交差点で輸送車を確認、信号待ちしている輸送車のタイヤを撃ち、犯人を逮捕する。そして倉庫の場所を聞き出し、倉庫で待っていた一味も逮捕する。

 警察署。スタスキーはダイエットを頑張るドビー主任にそんなことは止めるように、そして星占いでは満月の夜に痩せると出ていると話す。二人は部屋から追い出される。ドビー主任は密かに部屋の外にあったチョコ自販機でお菓子を買ったところをスタハチに見つかってしまう。

 

今回の登場人物

犯人一味の一人コンラッド、警備員ハリーの家に侵入

現金輸送車の警備員ハリー

同じく現金輸送車の警備員コールとその妻エリー

 

スタスキーが惚れた女性店員エミー

 

エイムス警備会社の社長エイムス(左)と運行係のエド(右)

 

犯人一味の一人、ベル・ケイト

 

犯人一味と拉致されたコールの妻エリー 右はギブソンとベル

 

コールの家の隣の住人、少女メグ

 

ベルの情報を知るスイートアリス(右)

ベルの住んでいた家にいた占い師マダムイーラム

ベルの家、娼館にいた娼婦

 

今回の捜査

警備員ハリーを射殺する犯人一味の一人

 

コールを脅す犯人一味の一人コンラッド

コールの家を訪れ、コールの射殺死体を発見するスタハチ

 

ハリーとコールが勤めるエイムス警備会社

コールの妻エリーが拉致された家(犯人の一人ベルの娼館の裏のアパート)

現金輸送車が集金に廻った1軒目のスーパー

スーパーの従業員に扮しているスタハチと警備員コール

 

スタさんがコールの家を訪れる、その時隣の家から覗くメグ

 

現金輸送車が集金に廻った2軒目のスーパー 事務所でのスタハチとコール

 

警察で手配写真を見るメグとベルを見つけたことを知らせるドビー主任

 

スイートアリスのいたバー

占い師マダムイーラムのいた家

ベルの家、娼館と裏のアパート(エリーが拉致された場所)

 

スタさんを見つけ逃げようとする犯人一味の一人

エリーを人質に取られるが、スタハチのコンビ技が決まる

   

現金輸送車のタイヤを撃つスタさん

 

通行人を装い、タイヤがパンクしていることを告げるハッチ

 

犯人一味が待っていた倉庫街

倉庫にいた犯人一味を捕まえる

 

遅れてやってきたドビー主任と警官たち

 

今回のヒョロ松

 なぜかおもちゃを2000個も売りさばかなくてはいけないヒョロ松、道端でそれをうる大道商人となる

 

 

今回の女性たちにモテるスタハチ

 今回は冒頭からスタさんが女性にアタックするつもり満々で、ハッチを誘いコーヒーショップを訪れる。写真はその店員エミー

 

 スタさんは先週この店を訪れており、彼女が星占いが好きなことを知って、今日は彼女の星が黒髪長身の2枚目との出会いがあると書かれた新聞を持って、この店を訪れたのだが、彼女はスタさんのことを全く覚えていなかった(笑 そして常連客であり彼氏のハリーのことを二人に相談する。

 

 その後の捜査で、犯人の一人の女性ベルを探すスタハチ。スイートアリスがネタを持っていることをヒョロ松から聞いて彼女のいるバーを訪ねる。

 スイートアリスは娼婦だったが、足を洗おうと考えていた。その時にはハッチにアタックするつもりだと話し、ハッチも待っていると答える。

 

 スタハチはスイートアリスに教えられたベルの家へ。しかしそこに待っていたのは占い師マダムイーラムだった。イーラムはスタさんに一目惚れし、彼女の占いでは今日は長身の2枚目と出会うはずだと話し、スタさんの手を握って放さなかった。

 

 

 長身の2枚目と出会うというのは、コーヒーショップでまさにスタさんが言っていたセリフであまりに可笑しい(笑

 

今回のコスプレ

 倉庫で犯人一味を逮捕したスタハチ。現金輸送車に乗って倉庫に乗り込んだのだが、スタハチは警備員の制服を着ていた。それを見たドビー主任との会話。

ド:刑事(デカ)になってよかったな。制服は似合わんぞ

ス:ビシッと決まってるよな

ハ:鏡見てみろよ

 

 

今回のオチ

 事件解決後の警察署、ドビー主任の部屋。主任がダイエットをしているのをスタさんは無駄だと話し、星占いで満月の夜ならダイエットが成功するとアドバイスする。二人を追い出した後、ドビー主任はそれならダイエットは辞めるかと食べていたものを捨て、廊下のチョコバー自販機でチョコを購入するが、ブザーが鳴りスタハチが出てくる。スタハチは主任がダイエットを続けるかどうかで、10ドルの賭けをしていたのだった。

 

 



今回のまとめ

 現金輸送車をジャックするというのは新鮮なアイデア。既に集金を終えた輸送車を盗む、というのはありがちなパターンだが、(人質を取り)輸送車をジャックし集金をして行く、というのは聞いたことがない。実際にあった事件なのだろうか?

 偶然にもそのことを突き止めたスタハチが人質を助け出そうとするストーリー。犯人の手がかりが、隣の少女メグ→ヒョロ松→スイートアリス→占い師イーラム、とヒョロ松を除き全員女性なのが面白い。冒頭のコーヒーショップの件から、スタさんの女難の相が出ていそうな話。

 ラストのオチで使われた、ドビー主任のダイエットは、11話の「しのびよる殺人者のかげ」でも触れられていた。あの話は主任が主人公とも言える話だったが、あの時もダイエット中にも関わらずチョコバーを買っているところをスタハチに見つかってしまう話だった。

 ラストのオチが本編と関係ないパターンも13話と同じ展開。コールやエリーが無事だった姿を見たい気もするが、スタハチと主任のやり取りも楽しく、こんなオチも大歓迎といったところ。

 

今回の驚き!

 今回の犯人一味、女性ベルは重要な役割があったためか、劇中で名前が判明するが、男性3名?は名前が呼ばれなかったため、例によって最後の字幕で俳優名から役名を突き止めていった。

 するとベルの俳優名に「Special Guest Star」の文字が。何かと思って俳優名「Jean Hagen」を調べたところビックリ!この女優さん、あの「雨に唄えば」の変声のリナ役の女優さん。wikiに寄れば、10年ほど俳優業を休んでいたがこのスタハチで復帰したとのこと。しかもこの作品の翌年に亡くなっている。二度ビックリ!

 

 

レナードの朝

●493 レナードの朝 1990

 少年たちが遊んでいた。一人の少年レナードはベンチに自分の名前を切り刻む。しかしレナードは右手に違和感を覚える。学校で文字を書いていた時、右腕が効かなくなっていることに気づく。

 1969年、セイヤー医師がブロンクスの病院に仕事を求めやってくる。彼は研究専門だったが、求められていたのは臨床医だった。しかし人手不足の病院は彼を採用する。

 病院は慢性障害を持つ患者ばかりで、動きもせず反応もしなかった。セイヤーはルーシーという女性患者の担当となるが、ある時彼女が反射の動きを見せる。セイヤーは彼女が意思を持っていることに気づき試行錯誤を始める。

 セイヤーは患者の一人レナードにも注目する。そして彼と相対している間に、彼らが過去脳炎を患ったことを知る。セイヤーは他の患者たちも意思を持っていることに気づく。彼はレナードにパーキンソン病の新たな治療薬を使用することに。最初は効果がなかったが、薬の量を増やすことでレナードが劇的に回復する。セイヤーはレナードを街に連れていく。30年眠り続けていたレナードは外の世界を喜ぶ。

 レナードは他の患者すべてに新薬を与えることを上司に相談するが、高額のため上司は却下する。レナードが寄付を募るように話すと同僚たちが上司の前に小切手を置いていく。レナードは支援者にスピーチをし、寄付を集めることに成功する。

 新薬を他の患者に与えた結果、皆も劇的に回復をする。患者の家族たちも喜ぶ。セイヤーたちは患者たちを街へ連れていくが、レナードは病院に残ると言い出す。彼は入院している父の見舞いに来ていたポーラが気になっていた。彼はポーラと話すことに。

 患者たちは長い眠りから目が覚め、現実を知ることになる。ある日セイヤーは一人で外出し散歩がしたいとセイヤーに相談、他の医師にも訴えるが、医師たちは責任が取れないことを理由に外出を認めなかった。レナードは認められなかったことに怒り始め、他の患者たちを巻き込み医師たちを訴え始める。しかしレナードは症状が悪化し始めてしまう。セイヤーとレナードは口論となり、レナードは彼を突き飛ばしてしまう。

 その夜セイヤーは娯楽室で動けなくなっているレナードを見つけ、共に治療をしようと話す。しかしレナードの症状は悪化していき、彼の母親が投薬の中止を求める。他の患者たちも徐々に元の姿に戻っていってしまう。セイヤーはレナードに対し行ったこと、一時的にしか回復できなかったことに対し後悔する。

 セイヤーはレナードの言葉を思い出し、看護師のエレノアをコーヒに誘う。

 

 有名な作品だが今回が初見。難病治療に取り組む話だが、実話であることに驚く。

 とにかくデニーロが圧巻。最初の全く動きを見せない症状、そして回復、後半の病状が悪化していく様など、レナードの症状の変化を見事に見せてくれる。特に後半の様子は本当の患者さんを見ているようで痛々しかった。それでもセイヤーにビデオを撮り続けるように叫ぶシーンは涙もの。

 医師のロビンウィリアムズも見事。「グッド・ウィル・ハンティング」での精神科医役も見事だったが、本作での医師役も全く遜色ない。弱さも持った医師役がこれほど見事に似合う俳優さんもいないのではないか。

 ストーリーのクライマックスはやはりレナードとポーラとダンスシーン。回復したレナードが母親と対面するシーンでも泣いてしまったが、このダンスシーンはそれを上回る。ハッピーエンドの映画ではないだけに、このシーンがあったことで救われる気がする。

 さすが名作。さすがデニーロとロビンウィリアムズ。

 

黄色い実 吉永南央

●黄色い実 吉永南央

 「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ第7作。コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の76歳の女主人、杉浦草が主人公。彼女の周りで起きる問題を彼女が解決していく短編集。「小春日和」「颪の夜」「宿り木」「帽子と嵐」「黄色い実」の5編。

 

 草が店の常連から古民家を買うことを勧められる。全くその気のない草だったが、その家を見に行くことに。そこで男性一ノ瀬と知り合う。さらに草は常連の紹介で地元の名士である大学教授の妻が店を訪ねてきて、息子元の就職先を探すため力を貸して欲しいと言われる。ある時店に地元で有名な元アイドル、オリエこと平織里江が訪ねて来る。草は常連客の仕事の話から佐野元を勧め、彼は就職することに。

 店の久実が一ノ瀬と仲良くなる中、オリエが小蔵屋の駐車場で暴行されてしまう。しかも犯人は佐野元だった。証拠もなくオリエの噂だけが一人歩きしていく。草は駐車場であるものを発見、さらに久実の車の中からもあるものを見つけてしまい、久実までもが暴行にあった可能性を知ってしまう。

 犯人が捕まらない中、草は何をすべきかを考える…

 

 シリーズ7作目にして最も読むのがツラい一冊になってしまった。しかし1日1章と決めていたマイルールを破り、後半は一気に読んでしまった。

 途中、草が発見したものにより悲惨な出来事が想像されてしまうが、まさかこの著者がシリーズレギュラーで草の右腕とも言える久実にそんな試練は与えないだろう、草さんの勘違いだろうと思って読み進めたが、ストーリーは辛い方向に進んでしまう。

 終盤、いつもとは違う草の強い態度に違和感を覚えたが、最終章を読み、草の態度の本当の意味がわかり考えさせられてしまった。このシリーズではおそらく初となる、著者による巻末の付記がその思いを強くさせてくれた。女性の著者だからこそ、書かなくてはいけないテーマだったのだろう。

 思わず1章を読み直したが、冒頭からキチンと佐野の妻百合子の異常な様子が描かれており、著者の上手さを改めて感じてしまった。

 ラストは久実の将来を左右する話も出てきたが、それに対する久実の言葉に思わず涙ぐんでしまった。

 やはりこのシリーズは良い。本当に。

 

 

 

ちどり亭にようこそ 〜京都の小さなお弁当屋さん〜 十三湊

●ちどり亭にようこそ 〜京都の小さなお弁当屋さん〜 十三湊

 京都の仕出し弁当屋「ちどり亭」を舞台にした短編集。店主花柚さんは20代半ば、毎週お見合いをしている。花柚さんに酔いつぶれた際に助けられた大学生彗太は店を手伝うことに。なぜか店に入り浸っている花柚さんの従兄弟美津彦さん、同じ大学に通うバイト仲間の菜月、花柚さんの昔の許嫁永谷総一郎、などが繰り広げる弁当屋での出来事の数々。以下の5編からなる。

 

「桜始開、花見といつかのオムライス」

 彗太は菜月に惚れていたが、菜月は同じサークルの先輩久我さんに恋していた。しかし彗太は久我が同じサークルの彩子と付き合っていると見抜いていた。

 謎は「彗太はなぜ久我が彩子と付き合っていると見抜いたのか」

 

「玄鳥至、「黄色い麻薬」とお礼状」

 総一郎がちどり亭に仕事絡みの弁当の発注にやってくる。仕事で書道家泰山に頼みごとをするためだった。花柚は泰山のことを調べ、彼の妻の好物が「黄色い麻薬」であることを突き止め、弁当にそれを入れようとする…

 謎は「『黄色い麻薬』とは何か」

 

「虹始見、飾り切りと青菜のおひたし」

 ちどり亭に小学2年生のゆうやが出入りするようになる。元気な男の子だったが、花柚は彼に食べ物を与えないように注意する。やがてゆうやが遠足に持って行く弁当の話をし始めるが。

 謎は「ゆうやに食べ物を与えない理由は何か」

 

「牡丹華、だし巻き卵と献立帖」

 花柚の料理の師匠藤沢吉野が病床に。その師匠からお見舞いに何か食べ物を作ってきて欲しいと要望される。花柚は高齢者向けの料理を作って持っていくが、師匠はあまり口にしなかった。残念がる花柚に彗太はあるアドバイスをするが。

 謎は「なぜ師匠は花柚の作った弁当をあまり食べなかったのか」

 

「紅花栄、練習帖と最後のお弁当」

 総一郎がちどり亭に弁当の発注に来る。発注書に「結婚」という理由が書かれていた。美津彦から総一郎の見合いが決まったと聞いた花柚は、彼のために作る最後の弁当だと気合を入れて作るが。

 謎はなし。

 

 初めて読むシリーズ。ミステリ短編のつもりで読み始めたが、どうやらそっち系の話ではなく、人情ものと言ったところ。これまでこのブログで読んできたものの中では、「おけら長屋」シリーズに近い。

 弁当が主役の料理となるストーリーなので、弁当について様々なことが語られる。弁当に対する考えも改めて知らされたという感じ。

 もう一つ、ストーリーのメインとなるのが、主人公花柚と昔の許嫁総一郎の物語。子供の頃から許嫁であった二人だったが、花柚の兄が失踪したため、花柚が家を継ぐことになり、婚約は解消されてしまった。それでも二人は相手を想う。最終章でその想いが爆発する。花柚が涙ながらに最後の弁当を作るシーンは泣けてきてしまった。

 花柚総一郎の恋がメインならが、サブとなるのが彗太と菜月の恋。第1章で菜月は先輩に失恋してしまう。彗太は彼女のために料理を作って慰める。これも良いシーンなのだが、これが最終章への伏線になっているのがニクい。

 ミステリ要素は少ないが、人情ものとしてのレベルは高い。「おけら長屋」が江戸の貧乏長屋が舞台なのに対し、本作は京都の歴史ある旧家の跡取りたちの話。全く正反対なのも面白い。

 シリーズ化されているようなのでぜひ続きも読んでみたい。

 

折れた矢

●492 折れた矢 1950

 1870年アリゾナ、サムは大佐に呼ばれツーソンへ向かっていた。途中行き倒れになりそうなアパッチの若者を見かけ、助ける。若者は回復しサムに別れを告げるが、その時アパッチたちが襲ってくる。若者のおかげで命は助かったサムだったが、そこへ白人の駅馬車隊が通りかかり、アパッチは彼らを襲う。白人たちはアパッチ狩りをしていたのだった。サムはアパッチによる壮絶な刑を見ることに。

 サムは解放されツーソンへ。そこで大佐からアパッチ族の偵察をするよう求められるがサムは断る。同席していた人々からサムは非難されるが、彼は戦いにはうんざりしていた。サムはツーソンの街の郵便がアパッチのため何週間も不通となっていることに着目、先住民でありながらツーソンの街で暮らすフアンにアパッチのの言語や文化を習い、アパッチ族の族長コチーズと話し合いをしようとする。

 サムは周りが止めるのも聞かず、一人アパッチの村へ。そこでコチーズと郵便配達員だけは襲わないように要求する。コチーズはサムを村に泊める。夜サムは儀式で「生命の娘」となる少女ソンシアレイと出会い彼女に惹かれる。翌日コチーズはサムの提案を受け入れる。サムは街に帰り話し合いの結果を皆に伝えるが、信じない人間がおり、5日間無事に郵便が届くかどうかで300ドルの賭けを持ちかけられる。サムはそれを受ける。

 郵便配達員は4人目まで無事に帰ってくる。その時大佐の幌馬車隊がアパッチに襲われ大佐は死亡してしまう。酒場でその話が持ちきりの時に5人目の配達員が戻ってきたと知らせが入る。皆はサムはコチーズと繋がっていると話し、サムを縛り首にしようとする。将軍が止めに入り、サムにコチーズに会いたいと話す。将軍は和平を結ぶつもりでいた。

 サムは一人アパッチの村へ。コチーズは留守だったためソンシアレイと再会、愛を確かめ合う。コチーズが戻りサムは将軍の話を伝える。コチーズからソンシアレイは求婚されているという話を聞くが、サムは彼女と結婚したいと伝える。コチーズはサムを認め、ソンシアレイの両親を説得する。

 サムは将軍とともに村へ。コチーズは族長たちを集め和平の話をする。一部の者たちが反対するがコチーズは和平をすることに。反対したものは村を出て行く。リーダーはジェロニモと名乗る。コチーズは将軍に和平の前に30日間の試用期間を設けると提案。

 ツーソンの街から5年ぶりに馬車が出る。しかしその馬車がジェロニモたちに襲われる。サムはコチーズに連絡、アパッチがジェロニモを追い払う。

 サムはソンシアレイと結婚の儀式を行う。サムはアパッチの村で過ごすが、そこへ白人が連れられてくる。彼は馬が盗まれたためアパッチのいる地域へ来たと話す。サムは彼がアパッチ嫌いで有名な男の息子だとコチーズに話し、馬が盗まれたという場所へ一緒に行くことに。しかしそこで待っていたのは、アパッチを嫌う男たちだった。

 サムたちは襲撃され、ソンシアレイは死んでしまう。コチーズがなんとか彼らを追い払うが、サムは裏切った者たちに激怒する。しかしコチーズは和平は簡単ではない、と彼を諭す。

 将軍たちは裏切った者たちを捕まえたことをサムたちに報告する。サムはソンシアレウの死が和平に繋がったのだと納得し去って行く。

 

 タイトルも知らなかった映画だったが、驚きの一本。1950年製作だが、先住民側にたった視点でストーリーが描かれている。主人公が戦いに疲れ、白人と先住民との間を取り持とうとするのだが、主人公と先住民の異文化交流という面も見える。後に様々な映画がこの交流を描くことになるが、この映画が初めてぐらいなのではないだろうか。

 途中、先住民の娘との愛が描かれ、そっち方向に話が展開するのかと思いきや、悲しいラストが待っている。しかし怒りに震える主人公を諭すのが族長だというのが良い。初期の西部劇では徹底的に悪として描かれた先住民だが、本作は1950年にしては先住民をリスペクトして描いている点が非常に新鮮。

 

 「シェナンドー河」でも書いたが、ジェームズ・ステュアートが「アメリカの良心」と呼ばれる理由がこの映画でもわかった気がする。

 

 

 

ホット・ロック

●491 ホット・ロック 1971

 ドートマンダーが刑務所から出所する。義弟のケルプが迎えにきていた。ケルプは早速ドートマンダーに盗みの仕事に誘う。獲物はブルックリン博物館に展示中の宝石「サハリの石」だった。中央バタウィの大使アムーサ博士から、その宝石は自国のものだと彼は主張し取り戻して欲しいと依頼される。

 ドートマンダーは鍵師ケルプ以外に、運転のプロのマーチ、爆破のプロのアランを仲間にし、盗みを実行する。マーチとアランが博物館外で偽の事故を起こし、警備員の目を引きつけている間にケルプが宝石のケースの鍵を開け宝石を盗むことに。ケースは開いたが、最後でしくじってしまい、宝石を持っていたアランが捕まってしまう。

 アランは宝石を飲み込むことでなんとか隠す。アムーサ博士とともにアランの奪還計画を立てる。アランの弁護士には彼の父親グリーンバーグがつくことに。グリーンバーグにアランと面会させ、ドートマンダーたちはアランが収容されている刑務所へ侵入、見事にアランを奪還することに成功する。

 しかしアランは盗んだ宝石を警察の拘置所に隠してしまっていた。ドートマンダーたちはヘリを入手し、警察の屋上から拘置所へ侵入する。しかしアランが隠した場所に宝石はなかった。ドートマンダーはアランから宝石を隠したことを父グリーンバーグに話したと聞き、彼を拘束。宝石のありかを聞き出す。

 グリーンバーグは宝石を自分の貸金庫に保管していた。貸金庫には本人が出向かなければならず、宝石を取り戻す方法はないかと思われた。アムーサ博士はドートマンダーたちとの契約を破棄、グリーンバーグと組むことを宣言する。しかしドートマンダーは催眠術師のミアズモを使い、貸金庫の職員を催眠状態にすることに成功。自分の貸金庫利用のために入ったところで、職員を使い宝石をゲットする。アムーサ博士たちが銀行に来る前に、ドートマンダーは見事に宝石を奪って逃げていくのだった。

 

 盗みをテーマにした映画は何本か見ているが、本作は50年前の作品。警備する側も盗む側も、あまりにアナログ。冒頭の博物館に侵入する偽装事故シーンはまだしも、刑務所に簡単に侵入できたり、警察の屋上に兵で乗りつけたり、と無茶苦茶だった(笑

 同時期製作の「ルパン三世」1stシリーズの警備や警察がずさんだったのは、時代だったのかしら。まぁ本作はコメディだし。

 冒頭、刑務所から出所したばかりの主人公に早々と盗みの仕事を持ちかけたので、宝石泥棒がメインになるのかと思いきや、最初の30分で宝石泥棒は成功、今後の展開はどうするのかと思ったら、宝石をなかなか手に入れることができないドタバタに。

 ラスト、手の出せない貸金庫からの盗みをどうするのかと思っていたら、伏線もなくいきなり催眠術師の登場。これが許されるなら…という展開だったが、「ルパン三世」1stでも、最終回で宮崎駿が後に「これだけはやっちゃいけない」と語った、五右衛門斬鉄剣による金庫切りがあったのと同じじゃない、と感じてしまった(笑

 でもまぁ、「スティング」で売れる前のレッドフォードを見れたし、クインシージョーンズが映画音楽を手がけていることも知れたし、良かったとしましょう。

 

 

猫語の教科書 ポール・ギャリコ

●猫語の教科書 ポール・ギャリコ

 編集者の元に届いた暗号のようなの原稿。ポール・ギャリコは解読し、それが猫による猫のためのマニュアル本だと知る。彼による翻訳文。

 内容は、雌猫によりすべての猫のために書かれた「人間のしつけ方」や「人間の家の乗っ取り方」が19章に渡り描かれている。

 

 先日読んだ「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ 里見蘭」の中で扱われていた一冊。早速読んでみた。

 猫がいかに人間の家を乗っ取るか、そして家の人間たちを支配していくか、が猫目線で書かれていて、本当に面白い。近所のノラ猫を最近よく見かけるので、ちょっと遊んだりするが、本作の中の「声を出さないニューオ」を時々されるとエサでも買ってきてあげたくなってしまう。あれが猫の狙いだったとは(笑

 人間支配の方法論もさることながら、雌猫目線による人間〜男性、女性、子供、独身者〜の分析も鋭い。人間は猫よりも弱く愚かで、そして孤独であるらしい(笑 著者が男性のためだろうが、雌猫目線の人間の女性に対する分析は痛烈。もちろん男性に対してもそうであるが。

 著者のギャリコはあの「ポセイドンアドベンチャー」の原作者だと初めて知った。あんなパニック作品を書く一方で、こんな面白い作品も書けるとは。しかも本作が書かれたのは1964年。60年近く前から、人間は猫に乗っ取られていたのね(笑